中国元ショックの影響が収まらない。今年下半期、米国の金利引き上げも韓国経済に深刻な影響を与えると憂慮される。 高齢化、人口減少、低成長、家計負債など、韓国内の問題も深刻だ。韓国経済のリスク要因が韓国内外に山積している。しかし、その中で最大のリスクは他でもない“大統領のリスク”だ。 いくらリスクが大きくとも国民が一致協力して対処するならば克服できないことなどあるだろうか。 しかし国民の意志をまとめるのに大統領がむしろ障害物になるなら問題は深刻化する。 大統領が方向感覚まで喪失しているならば、結果は災難になる。
一度も行ったことのない険しい山道を、どこへ行くのか目的地もよく分からずに、それも闇夜に後向きで前に無条件に走る。さらには運転手の気の向くまま方向もジグザグに猛スピードで疾走する。 今、朴槿惠(パク・クネ)大統領がハンドルを握っている韓国経済の姿だ。 もう少しで崖っぷちなのに、なぜ我執ばかりそんなにも強いのか。周辺には大統領の機嫌ばかり伺うことに汲々とした者しかいない。これが今の韓国経済が抱いている最大リスク要因、名付けて「朴槿惠リスク」だ。
朴大統領は韓国の国民、企業、国会を羊でも追い回すように自分の思い通りに連れ歩こうとしている。朴正煕(パク・チョンヒ)式命令経済、財閥総師による帝王的経営方式で韓国経済を牽引しようとしている。 経営能力が足りない財閥2世の無謀な独断的経営を見ているようだ。 財閥グループのみに“オーナーリスク”があるわけではない。 今、韓国の国家経済も“オーナーリスク”に苦しめられている。 大統領があたかも国家の主人にでもなったかのように、国民を無視して専横を日常的に行う国家経営の危険性がまさにそれだ。 それが韓国の経済が抱いている「朴槿惠リスク」の本質だ。
国民に対して「尊敬」という表現をほとんど使わなかった朴大統領が8月6日の談話文では、何が差し迫っていたのか「尊敬する国民の皆様」という表現を何と7回も使ったのは異例なことだが、それでもその談話文で大統領から本当に「尊敬を受けた」と感じた国民は果たして何人いるだろうか? それは単に、これまでの失政に対する謝罪に替える形式的で卑怯な要式行為に過ぎなかった。 長官たち、大統領府の部下職員にした口癖と同じく“尊敬する”国民にも「一方的指示事項」を命令した大統領の談話文であり、国民に対する尊敬心は見られなかった。 国民を侍従と見る態度が見えただけだ。
国民を召使いや部下扱いする大統領から、真に国民のためにする政策が出てくることは皆無だ。 そんな大統領が国民の話に耳を傾けるわけもない。 談話文の内容を見れば、とうに流行が過ぎた古いレコードから出てくる歌のようなものばかりだった。 朴大統領が万病に効く薬と考えるいわゆる4大改革とサービス産業育成がその核心内容だが、ここで詳しい評価は省略するが、そこには多くの虚構と欺瞞、さらには毒素条項も含まれているという点だけは指摘せざるをえない。
ところで、さらに深刻な問題はその根底に敷かれている国家経済運営の基本パラダイムが、不動産、規制緩和、財閥の3要素を抜け出しえないという点だ。 朴大統領が政権の命運を賭けて掲げた創造経済も、その内容を覗いて見ればこの3要素を基本骨格として構成したに過ぎない。 非常に古臭いパラダイムで、新しく斬新な経済の花を咲かせるという“創造的虚構性”に他ならない。 創造経済は長く見ても今後1年でその寿命が終わる政治スローガンの運命を持って生まれた。
朴大統領が真に韓国経済の再跳躍を成し遂げたいなら、「朴槿惠リスク」から先ず克服しなければならない。「朴槿惠」を捨てて国民の声に耳を傾けなければならない。 市場に行って盲目的な支持者たちと抱擁したりする政治ショーもやめなければならない。 青年・中壮年・老年、支持層・批判層にすべて会って対話し、苦言も聴かなければならない。「国民との対話」を卑怯に避けてはならない。 国民を説得できなければ、大統領が国民に説得されなければならない。 それだけが解決法だ。