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[社説]芸能番組で風刺もできない世の中を憂慮する

登録:2015-07-04 09:08 修正:2015-07-04 12:46
先月13日放映された「無限挑戦」でユ・ジェソクがMERS予防法で「ラクダのような動物との接触を避けてください」と言うと、パク・ミョンスが「どこにラクダがいるんだ?」と政府のお粗末な対策を風刺した=「無限挑戦」キャプチャー//ハンギョレ新聞社

 放送通信審議委員会(放審委)が政府の中東呼吸器症候群(MERS)への不十分な対応を風刺した芸能番組を相次いで懲戒し、物議をかもしている。ただでさえ表現の自由が脅かされる深刻な問題が多発してきた。権力を風刺する内容の印刷物をばら撒いた市民が逮捕されたり、画家の展示会参加が阻まれるなどの事件が頻繁に起こった。軽く笑い飛ばす芸能番組まで自由に作れなくなるという、本当にコメディのような状況になっている。

 6月13日、MBC(文化放送)のバラエティ番組「無限挑戦」で、進行役のユ・ジェソクは「MERS予防法ではラクダ、ヤギ、コウモリのような動物との接触を避け、ラクダの肉や生ミルクを食べたり飲んだりしないようにしてください」と疾病管理本部が提示した対策の一節を読み上げた。これに対し放審委は、ユ・ジェソクが「中東地域」のラクダであることを告知しなかったとして、情報提供が不正確だったことを懲戒理由に挙げた。その番組を観ると、パク・ミョンスが「どこにラクダがいるんだ?」とすぐ突っ込んでいた。ラクダに気をつけようにも、私たちの周辺にラクダなんかいないという言葉から、政府の予防対策が幼い子供でも分かる非現実的なものあることを風刺したことが伝わる。芸能番組を審議する際に「重要情報を脱落させた」とニュース記事を審議する基準を当てはめるのだから話にならない。

 それ以前のKBS(韓国放送)のギャグコンサート「ミンサン討論」に対する懲戒も同じだ。朴槿恵(パク・クネ)政権の粗末なMERS対策を風刺したことを巡り、放審委は「視聴者により不快感を感じる素地がある」「特定人の人格権などを侵害する憂慮もある」と懲戒理由を挙げた。大統領府や関連政府機関の少数の人たちを除き、いったい誰がミンサン討論を観て不快感を感じるというのか。大統領府などが感じる不快感を視聴者の不満に変質させたのもやりすぎだ。この番組ではムン・ヒョンピョ保健福祉部長官の「ムン」も話されなかった。特定されることもない特定の人の人格権侵害に言及するのも、実に滑稽なことである。

 放審委のこうした措置でコメディや芸能番組の素材が制約されてしまうなら、権威主義政権の時代のように、レベルの低い体を使ったギャグや単純な言葉遊びが横行することになるのは容易に想像できる。

 さらに心配になるのは、放審委の制裁が国民が軽く笑って楽しめる小さい幸福を奪うだけに終わらず、民主主義の根幹である言論の自由を傷つけていることだ。芸能番組の風刺さえ容認しない世の中を思うと、「私をコメディの素材にしたってかまわない」と言った盧泰愚(ノ・テウ)元大統領の時代のほうがましだったという話が、決して不自然に聞こえない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-03 18:34

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/698776.html 訳Y.B

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