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[社説]セウォル号遺族の傷を癒すどころか深めてしまう政府

登録:2015-04-17 08:05 修正:2015-04-18 07:08
朴槿恵大統領が16日午後、全羅南道珍島郡彭木港の防波堤で対国民発表文を朗読している。朴大統領は発表文で「必要な手続きを速かに進め可能な早い時期に船体引き揚げをする」と明らかにした //ハンギョレ新聞社

 16日はセウォル号の惨事が起きてちょうど1年になる日だ。あれから1年、3年、あるいは10年の歳月を経て、同じその日を追悼する理由は、その日に合わせ事件の意味を改めて記憶するためだ。苦痛を伴う事件の場合、その原因と責任を明らかにして再発防止のための意思を確かめることこそが求められる。その日に合わせて行事を行うのは、記憶の共感を作り出すための最小限の社会的努力と言える。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領はこの日午前、全羅南道珍島郡の彭木(ペンモク)港に立ち寄った。しかし献花や焼香もできないまま防波堤の中間に立って対国民発表文を読むことしかできなかった。大統領の日程に相応しい追悼行事はなにも用意されなかった。犠牲者遺族との出会いを含む、まともな行事を大統領府は初めから準備していなかったのだ。外国訪問のための午後の出国日程を固めておいた状態で、セウォル号の悲劇を冷遇している批判を受けまいと体面だけ整えようとした印象は拭い去れない。

李完九首相がセウォル号事故1周年を迎えた16日午前、京畿道・安山のセウォル号合同焼香所を参拝しようとするとチョン・ミョンソン委員長など遺族代表に遮られて引き返す前に挨拶している 安山/イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 この日の朝、李完九(イ・ワング)首相は京畿道・安山(アンサン)の政府合同焼香所を訪ねたものの、犠牲者遺族たちに行く手を遮られた。首相は国務委員を代表して行動するので、その日程の意味は決して軽くない。だが、首相側は遺族たちに予め日程を知らせることもなく、現場でさしたるメッセージを出すこともなかった。その代り政府は、国民安全処主管で警官、軍人、消防署員、公務員を動員して「国民安全確約大会」という広報的な行事を敢行させた。関連した展示会にセウォル号惨事の写真は一枚もなく、代わりにライフジャケットや潜水服、潜水ヘルメットなどが並べられていたという。政府の行動にはセウォル号1周年を記憶する真剣さがまったく見いだせない。体面繕いと責任回避、ちっぽけな広報にしか関心がないのが、ありのままに表れた。

金武星セヌリ党代表が4・29補欠選の公式選挙運動初日の16日午前、京畿道城南市の老人福祉会館を訪ねると城南平和連帯会員らが金代表に抗議し李首相に現金を渡したドリンク剤の箱を振りかざしている 城南/イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 犠牲者遺族たちはこの日午後に定めた合同追悼式を取りやめた。政府にセウォル号特別法施行令の撤回と船体引き揚げ宣言を要求し、それが受け入れられなかったため下した決定だ。遺族たちが亡くなった人たちの霊を慰めるための1周年追慕行事さえまともに開けなかったというのだから、実に残念なことだ。果たして私たちの社会は参事の教訓を得ているのか自問せざるをえない。

16日、全羅南道珍島郡彭木港で各機関団体長や住民などが参加する中で追慕祭が開かれたが、遺族がセウォル号特別法施行令廃棄などを求め参加せず、空席が広がっている //ハンギョレ新聞社

 セウォル号1年を迎え事件の真実を糾明し、安全な社会を作るための覚悟を決めるのは残された者の責務だ。そのための社会的努力としての誠意ある追悼行事は必要不可欠のものだった。政府はセウォル号の傷を癒すどころか記憶することさえ嫌がっているようだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-04-16 18:39

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/687171.html 訳Y.B

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