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[コラム] 文在寅の「天安艦爆沈」発言は遺憾

登録:2015-03-30 21:02 修正:2015-03-31 04:54

 文在寅(ムン・ジェイン)新政治民主連合代表が、天安(チョナン)艦の沈没原因を「北朝鮮潜水艇による打撃」と明瞭且つ具体的に発言した。 その理由を察することは難しくない。 相次ぐ保守勢力の“従北”攻勢のくびきから抜け出し、“安保政党”になるという意志を示したのだろう。 だが、文代表の発言が果たして適切だったかは疑問だ。

 まず文代表は従北攻勢の属性を見逃した。 韓国社会での従北攻勢は事実に基づくというより、保守既得権勢力が組立てた“フレーム”により行われているのが現実だ。 ところが、文代表は従北攻勢の代表的素材である「天安艦爆沈」を公式に認めることによって、結果的に保守勢力のフレームに従ったものではなく“事実”に基づいたことを認めた格好になった。

 今後、新政治民主連合は“従北勢力”ではないことを証明せよとの保守勢力の相次ぐ要求に直面することになるだろう。 天安艦爆沈を認めたからと「野党も安保政党になったので、我々のパートナー」と評価すると期待したとすれば余りに純真だ。 文代表の発言以後、金武星(キム・ムソン)セヌリ党代表は「今になってこれ(北朝鮮の仕業)を認めると言うなら、過去5年間にわたり間違って主張したことに対して責任は負わなければならないのではないか」と圧迫した。 今後、さらに多様な形の“思想検証”が続くだろう。

 文代表はまた南北関係で天安艦事件が持つ意味を過度に軽く見たのではないかと思われる。 天安艦事件以後に取られた2010年の5・24措置により南北関係は事実上破綻した。 天安艦爆沈を認めろという韓国政府の要求と、天安艦爆沈は南側のねつ造劇という北朝鮮の主張がするどく対抗し打開策を見いだせずにいる。 南北政府共にどちらか一方が白旗を揚げない限りは接点を探すのが難しい局面だ。

 このような状況で仲裁者としての野党の役割はいつにも増して重要だ。南北和解を本当に望む野党ならば、そのような時代的責務を無視してはならない。 ところが文代表が政府の発表に100%同調したことによって、南北関係改善に活用する野党の重要なテコの一つを失った。 もう野党も政府と歩調を合わせて天安艦爆沈を謝れと北朝鮮に要求する他はなくなった。 そうしなかったり謝罪要求の強度が低ければ、天安艦爆沈認定の真正性まで疑われることになるだろう。 そうなれば“安保政党”を夢見た野党は、実利も名分も全て失うことになる。 南北関係の改善もより一層難しくなることが明らかだ。

 さらに重要なことは、天安艦沈没原因を巡る論議の本質が科学的次元の論争だという点だ。 政府合同調査団は調査結果を“科学的結論”と言っているが、国内外の一部関連学者らはこれを科学的に誤った結論だと批判している。

 これは天安艦の沈没原因が北朝鮮潜水艇の魚雷による襲撃か否かを問い詰める以前の問題だ。 政府は2010年5月20日に民官合同調査団の中間調査結果を発表し、天安艦沈没が“水中爆発”によるものであり、船体の変形状態から見る時「非接触爆発の可能性が高い」とした。 だが、国内外の一部科学者は調査団の天安艦吸着物の分析データなどに誤りがあるとし、「非接触水中爆発の可能性」に疑問を提起している。 その他にも提起されている科学的疑問はおびただしい。 天安艦の真実探しは現在も進行中だ。

 それにもかかわらず文代表はこのような科学的論争を国家安保という政治的論争に変えてしまった。そうすることである程度の政治的利益は得られるかも知れないが、天安艦の真実が明らかになることを結果的に遮断する格好になってしまった。 文代表が“天安艦の真実”を明らかにするために孤軍奮闘している多くの人々から激しい批判を浴びているのはこのためだ。

チョン・ソック編集人//ハンギョレ新聞社

 真実は権力の強圧や政治的妥協によって作られるものではない。 常識的で合理的な疑問に対する激しい科学的論争を通じて疑問が一つひとつ解消される時、はじめてその実体が明らかになる。 そのようにして確認された真実のみが説得力を持つ。 国家運営に責任を負うという政治指導者ならば、真実を正す過程がいくら困難で険しくとも正面から立ち向かわなければならない。文代表はあまりに容易な道を行こうとしているようだ。

チョン・ソック編集人 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/684607.html 韓国語原文入力:2015/03/30 18:58
訳J.S(1918字)

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