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[コラム] 分断体制に寄生する朴槿恵政権

登録:2014-12-25 19:39 修正:2014-12-26 06:15

 統合進歩党を解散した憲法裁判所の法理がどれほど無理なものかは、あえて長々と説明する必要を感じない。 統合進歩党に反対することと、この党を解散することとは次元が全く異なる問題だ。 ところが憲法裁判所裁判官8人は、統合進歩党に対する反対世論と自分たちの公安的所信をそのまま統合進歩党解散に連結した。 彼らの主張がどれほど反民主的で非論理的なのかは、唯一少数意見を出したキム・イス裁判官の論旨に照らしてみればすぐにわかる。

 解散決定が8対1という圧倒的票差でなされたことに対して“社会的合意”が反映された結果という指摘もあるが、朴正煕独裁の道を開いた維新憲法も投票率91.9%、賛成率91.5%で通過した。 当時、朴正煕政権は“維新の歴史的正当性”が国民の承認を受けたと大々的に宣伝した。 独裁はいつも合法の仮面をかぶって国民の理性的判断をマヒさせ、煮立つ抵抗を無力化してこっそりと我々の日常を縛る。

 憲法裁判所の決定以後、最も憂慮されるのは韓国社会の深刻な分裂と理念の葛藤だ。 憲法裁判所は「統合進歩党解散決定が韓国社会の消耗的な理念論争を終息させることを願う」と述べたが、それは反対に理念の葛藤を助長する結果として現れている。 そのような動きはすでに始まっている。 保守団体は憲法裁判所の決定が下されるとイ・ジョンヒ前代表を含め統合進歩党党員全体を国家保安法違反の疑いで検察に告発した。 検察も待っていたとばかりに進歩勢力に対する公安追い込みに乗り出した。 抵抗も強まざるをえない。

 南北分断の局面でこのように理念上の葛藤が浮上すれば、接点を探すことは難しくなる。 「6・25」という血なまぐさいにおいのする戦争を体験した状況で、理念の葛藤はすなわち“戦争状態”を意味する。 戦争状態では敵と同志がいるだけで、中間地帯は容認されない。 自分と異なる理念を持つ集団は排除と抹殺の対象であり、妥協や包容の対象ではない。

 今回の憲法裁判所の決定法理はこのような戦争論理に立脚している。 憲法裁判所が統合進歩党解散と共に、同党所属国会議員を国会から追い出し、政府・与党が統合進歩党員たちの被選挙権まで剥奪しようとしているのも、このような戦争論理の延長線上にある。こうした論理が社会を支配すれば、多様性と包容性を前提とする民主主義は拠って立つ場所を失うことになる。 統合進歩党の解散を進歩勢力に対する弾圧はおろか民主主義自体に対する威嚇と見るのはこのためだ。

 進歩勢力が統合進歩党式の“従北進歩”を清算し、“純粋進歩”として出直せば良いのではないかと言うが、むなしい言葉の遊びに過ぎない。 まず従北という概念自体が極めて包括的だ。 そしてどんな個人や政治勢力が従北なのか、あるいはそうでないのかを、誰の判断に任せるというのか。 今、刀の柄を握った側は合法的公権力を掌握した保守・冷戦政権だ。 排除と抹殺の論理で武装した彼らは、自分たちの基準から少しでも外れれば“従北宿主”や“類似統合進歩党”として追い詰め、びしびしと従北の刃を振り回すだろう。 彼らの定規を満足させる“純粋進歩”は存在しない。

チョン・ソック編集人//ハンギョレ新聞社

 南北和解と平和が進歩勢力の成長や民主主義の発展と不可分の関係にあるのはこのためだ。 分断状況を固定変数として置き、北朝鮮を“悪の化身”と想定する限り、理念葛藤は避けられず、韓国の民主主義は窒息せざるをえない。 朴正煕維新独裁時代がそんな状況だった。 政治的危機に処するたびに、北朝鮮の威嚇を強調し安保を口実に政府に批判的な個人や団体をアカとして追い立てることにより自分たちの政治生命を維持した。 朴槿恵大統領もまさにそのような道を行こうとしている。

 分断体制に寄生して既得権を維持する保守・冷戦勢力が勢力を伸ばす限り、民主主義の進展は期待し難い。 そのために進歩の再構成より先に関心を傾けなければならないことは、南北間の政治・軍事的緊張状態を緩和し、理念葛藤を助長する“冷戦宿主”を根絶することだ。 韓国の民主主義の将来は分断体制をどのように解消するかにかかっているといっても過言ではない。

チョン・ソック編集人 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/670607.html 韓国語原文入力:2014/12/24 18:36
訳J.S(1895字)

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