統合進歩党解散は朴槿恵(パク・クネ)大統領の“作品”だ。悲劇的ドラマを実行したのは憲法裁判所であるが、これを総監督して演出したのはまさに朴大統領である。就任以後特別な業績もなかった彼女が大統領当選2周年に合わせてあげた“最大の業績”はまさに進歩党解散という「民主主義の一大後退」であった。
朴大統領は憲法裁判所の決定について「自由民主主義を確固として守った歴史的決定」と評価した。「自由民主主義」という用語についての学問的な議論はさておいても今回の決定にはいかなる「自由」も「民主主義」も見出せない。むしろ個人の自由と権利は侵害され、表現と結社の自由は無惨にくじかれ、国民の選択権に基づいた代議民主主義は徹底的に否定されてしまった。朴大統領は自分の作品を自賛したいのならいっそ「反共民主主義の勝利」という言葉に変えたほうがましだ。
実際、朴大統領が進歩党の解散を後押しした目的はもともと民主主義の保護や憲法的価値を守ることとはかけ離れていた。進歩党が我々韓国社会の大きな脅威にはなれないことはよく世間に知られていることだ。それでなくても下降するばかりの進歩党は、いわゆる「イ・ソクキ内乱陰謀事件」ですでに政治的に臨終を告げられた状態である。それなのに朴大統領があえて進歩党を空中分解させるという剣を抜いた理由は何だろうか。それは進歩党に対する個人的な嫌悪感と政治報復の一念以外には理解できない。
思い返される大統領選の討論会
今回の憲法裁判所の決定によって多くの人が2012年12月4日の大統領候補テレビ討論会を思い出したろう。「朴候補を落とすために出てきた」と公言し、朴大統領を辛らつに攻撃したイ・ジョンヒ進歩党候補、そして彼女をにらみつけた朴大統領の怒りに充ちた目つきが思い起こされる。朴大統領はちょうど国家情報院が暴いたイ・ソクキ事件に乗じて法務部を動員して政党解散審判請求を強行した。与党寄りの保守派ばかりの憲法裁判所は当然自分の意に従うという確信があったのだろう。憲法裁判所はその期待を裏切らなかった。
「チンド犬は一度噛み付いたら肉を完全に食いちぎるまで放さない」という本人の弁のように、朴大統領は自分の気分を害した者を最後までかみちぎって息の根を止める恐ろしい面をまざまざと見せつけた。
しかし朴大統領はそのことによって国家の最高指導者が備えているべき資質と徳性のなさもまた表した。包容力と寛容、一方に偏らないバランス感覚、政治的少数者に対する配慮、過去を振り返らずに前進する未来指向の考え方などは、何度改めて見ても見当たらない。何よりも我々の社会の最も喫緊の課題である和解と統合に対する国民の願いは完全に投げ捨てられた。政敵に対する血が昇った敵がい心と愚かな復讐心をたぎらせているだけ。そしてその敵がい心が招く我々の社会の後遺症は実に深刻だ。
強まる国内の摩擦と国際的批判世論
今回の事件でまず我々の社会は深刻な分裂とあつれきが拭いがたいしこりとなった。憲法裁判所の決定の“賛成派”と“反対派”の対立と摩擦は、今後長く妥協点を探い出しにくい平行線として残るだろう。さらには憲法裁判所の裁判官のうち唯一反対意見を出したキム・イス裁判官に対して一部の極右勢力は「カボジョン(全羅道出身の悪口)」などの口にもしにくい卑劣なことまで言い出している。極右勢力の心無い言動は実に嘆かわしいが、彼らのせいにする前にこのような状況を招いた根本的な責任はまさに朴大統領にある。
“秘線(隠密側近)”勢力の国政介入疑惑などでただでさえ国際社会の笑いものになっている韓国は今回の事件でイメージがなお一層落ちた。国際アムネスティやヒューマンライツウォッチは「21世紀の民主主義国家の大統領が行うとは誰も予想できなかった」などと、いっせいに厳しい批判をしている。その上世界の憲法裁判所のベニス委員会が進歩党の政党解散審判決定文の提出を求めてくることによって憲法裁判所の決定は国際的な判定の場にまで上げられている。国際社会のこのような批判に朴大統領は父親(朴正熙元大統領)が語ったように「韓国的民主主義の特殊性」とでも言うのだろうか。どうして韓国が国際社会で後ろ指を差される立場になったのか恥ずかしくもどかしいばかりだ。
朴大統領は今回の決定で秘線勢力の国政介入疑惑など“政治的悪材料”を葬ったとして会心の笑みを浮かべているのかも知れない。下降した支持率を保守勢力の再結集で挽回できるという計算もしたのだろう。現政権が公安統治の手綱を今後締めるという兆しもあちこちに現れている。しかしだからと言って朴大統領の国政運営の失敗がごまかされ、新しい出発ができるだろうか。そのような可能性は極めて少なく思える。無理は無理を呼んで結局なお一層抜け出しがたい泥沼に陥るだけだ。朴大統領の将来に一つはっきりしていることがある。まさに父親に続いて“民主主義後退を道案内した大統領”として歴史に永遠に刻まれることだ。
韓国語原文入力：2014/12/21 18:07
