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[コラム] 彼らの‘国家’安保

登録:2014-10-28 19:55 修正:2014-10-29 06:47
キム・ドンチュン聖公会大学社会科学部教授//ハンギョレ新聞社

 朴槿恵(パク・クネ)政権が米国から戦時作戦統制権の移管を無期延期した。 事実上放棄したと見ても良いだろう。 いつ、どんな条件で移管するかが明示されなかったし、韓国側は移管のために何を準備するのか、その計画もないためだ。 北朝鮮の核ミサイル使用可能性により安保危機が高まったので、戦争抑制のために必要だという。 それでは韓国軍が作戦権を持っていれば、北が小型核やミサイルで攻撃を敢行するが、米軍が作戦権を持っていれば怖がって攻撃しないという話か? 全く納得できない。 ハン・ミング国防部長官は、これが軍事主権の放棄ではなく効率性の問題だと強弁している。 効率性が問題ならば、最初から韓国軍を米軍に直接編入させる方が良いではないか?

 セヌリ党ハン・ギホ議員が「戦作権転換で政局が安定すれば経済も安定する」とこの政権の本音を表わした。北朝鮮ではなく国内の批判勢力を‘安保’威嚇勢力と見ているという話だ。 それで彼らは前回の大統領選挙で野党候補を事実上‘北朝鮮’と見なし、国家情報院と国防部を動員したではないか? 北朝鮮より数十倍の国防費を多く支出している経済大国韓国が、停戦60年が過ぎても自らの安保に責任を負う自信がないという、この到底理解できない弁解、そしていつどんな条件で自ら国防の責任を負えるのかについて何の説明もない理由もまさにここにある。

 すなわち、この政権の不安は決して客観的な軍事的考慮から出たわけではない。 そうであるなら、たとえ韓国が将来に国防費を10倍多く支出しても作戦権の移管はできないだろうし、10年の歳月が流れても状況は変わりはしない。 結局、現保守勢力の態度に全ての原因がある。特に権力の創出と維持過程で大きな弱点を持っていて、国民を説得できず国内からの激しい抵抗を避けられない政権は、内外の威嚇を過大包装し、常に外勢に依存しようとする傾向を持つ。このような政権は常に米国の甘い‘顧客’だ。

 戦時に軍事主権を持つことができなければ、政権の安保は保障されるかも知れないが国家は民の生命に責任を負うことはできない。 朝鮮王朝と老論(ノロン)勢力は、政権安保を図ろうと東学軍鎮圧のために清国を呼び入れたし、結局清との覇権競争のために朝鮮半島に進駐した日本軍は数十万人の農民、義兵を凄惨に虐殺した。 6・25勃発直後、作戦権を米軍に渡した李承晩は、数千・数万人の韓国住民が味方である筈の米軍による銃撃と爆撃の犠牲になっても、米国に対して何も言えなかった。そして、その代価として権力を保証された。 従って権力が‘国家安保’の名で‘政権安保’に固執すれば、国民は捨てられた存在となる。

 今はどうだろうか? 米国は昔から東アジアで中国・ロシアを狙ってきたので、韓国が米国のミサイル防御(MD)システムに入れば、韓国は最大貿易相手国である中国との摩擦を避けられなくなる。そして、経済的利益の源泉として安保にアプローチする米国が莫大な金額の武器購入と駐留費分担を要求すれば、言質を押さえられた韓国は米国の無理な要求まで聞き入れる他はなく、南北対話や経済交流さえことごとく妨害を受けるだろう。 北朝鮮・中国との緊張から発生する経済損失は、米国ではなく‘私たちが’負担しなければならない。 統一どころか、この地が戦場にならなければ幸いだ。

 クーデターで執権した朝鮮王朝の仁祖と西人勢力は、‘政権安保’の不安のために反対勢力を査察し残酷に弾圧すると同時に、明国に対する事大主義により一層執着し、明国のあらゆる要求に言いなりとなって国の経済を破綻させた。 しかし、まさにその政権不安を覆うための、その時代錯誤的な外交路線のために、新たな覇権国である清国の報復を受け、数十万人の庶民を犠牲にした。 国民に主権がなかった時期の歴史が、今日この‘国民’主権の時代に繰り返されている。 この政権が本当に国家経済を心配するならば、軍事主権を還収して中国・北朝鮮との良い関係を維持しなければならない。

金東椿(キム・ドンチュン)聖公会大学社会科学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/661800.html 韓国語原文入力:2014/10/28 18:49
訳J.S(1765字)

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