中国は、世界貿易機関(WTO)の交渉で途上国に与えられた特別待遇を今後追求しないと宣言した。米国はこのかん、世界第2位の経済大国である中国は途上国の地位を放棄すべきだと主張してきたが、米中貿易交渉などのために中国がこれを一部受け入れたものとみられる。
中国官営の新華社通信は24日付で、中国の李強国務院首相が前日の23日(現地時間)、米ニューヨークで開かれたグローバル開発構想(GDI)の高官級会議で、「今後はWTOのすべての交渉で新たな特別かつ差等化された待遇を追求しない」と述べたと報道した。WTOのオコンジョ・イウェアラ事務局長はソーシャルメディア「X」への投稿で「数年間にわたり行われた努力が実った」とし、「中国のリーダーシップに拍手を送る」と綴った。
WTOは途上国に特別待遇(SDT)を提供している。ルール履行猶予と貿易自由化義務の緩和、技術・財政支援、農業や食糧安保などの分野に対する保護措置などを含む。このような特別待遇のおかげで、中国は相手国により高い関税を課すことができ、産業補助金の使用がより自由だった。途上国の地位には公式の基準はなく、加盟国が宣言すれば、その地位を得て特別待遇を受けられる。韓国は1995年、WTOに加盟する際に途上国と宣言したが、米国などの圧力を受け、2019年10月にその地位を放棄した。
中国は2001年にWTOに加盟し、世界貿易秩序に本格的に組み込まれ、24年間にわたり途上国の地位を享受してきた。現在、中国経済はWTOへの加盟当時の10倍以上になり、このためWTO体制の最大の恩恵者は中国という評価もある。
中国の今回の決定は、米中貿易交渉を進展させるための努力の一つと言える。米国は、途上国の地位による特別待遇が一部の国家に不公正な利益を与えるとみて、特に国内総生産(GDP)基準で2010年に世界2位の経済大国に跳躍した中国がこれを放棄しない限り、WTOの改革は不可能だと主張した。ドナルド・トランプ大統領は1期目の2019年にも「米国は中国の途上国としての地位を認めたことがなく、現在のほとんどすべての経済指標が中国の(途上国という)主張を否定している」と述べた。
中国は特別待遇の放棄宣言で、トランプ政権の世界貿易秩序の揺さぶりに対する批判という効果も得られるものとみられる。第1次トランプ政権時代、米国はWTOの紛争解決機構であるパネルが紛争解決に役立たないとして、上級委員の選任を拒否した。これにより、現在WTOのパネルの機能は事実上停止状態にある。今月1日、中国の習近平国家主席は上海協力機構(SCO)首脳会議の際に「WTOを軸とする多国間貿易体制を守らなければならない」とし、米国の保護主義を遠まわしに批判した。
ただし中国は、特別待遇を追求しないという決定が「途上国の地位」の正式な放棄を意味するものではないと説明した。ロイター通信によると、李成鋼商務部国際貿易交渉代表兼次官はこの日の記者懇談会で、「WTOで(中国は自国を)依然として途上国とみなすが、その地位によって得られる恩恵(特別待遇)は要求しない」と述べた。
専門家らは、中国のWTOにおける途上国特別待遇の放棄宣言が、韓国産業に直ちに及ぼす影響は大きくないとしながらも、今後の状況によっては負担要因になりうると説明した。
産業研究院の経済安保・通商戦略研究室のキョン・ヒグォン研究委員は「中国が米国との関税問題を解決しようとするなら、短期的には韓国の市場での中国による供給過剰が緩和されうる」とする一方、「これは象徴的な意味にすぎず、直ちに米国の高率関税が急速に下がる確率は少ないため、過剰供給問題はかなりの期間続く可能性がある」と語った。さらに「米国が中国に課した関税が下がれば、韓国の輸出品の価格競争力は一層弱くなる可能性がある」と述べた。
明知大学のキム・テファン教授(国際通商学)は、「中国の今回の宣言は、米国を狙って『交渉する準備ができた』というシグナルを送ったものと言える」とし、「米国が同盟かどうかに関係なく関税の圧迫を続けている状況で、中央アジアなどに及ぼす影響力を高める狙いがあるものとみられる。これは韓国にとって決して肯定的な状況ではない」と語った。
韓国貿易協会のハン・アルム首席研究員は「韓国は中国と自由貿易協定(FTA)を結んだ状態であり、関税障壁は(従来と)大きく変わることはないだろう」とし、「もう少し状況を見守る必要がある」と語った。