韓国が米国の関税政策など通商環境の変化にうまく対応するためには、既存のFTAの改善を急ぎ、包括的・漸進的にCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への加盟の論議に着手すべきという主張が提起された。
韓国貿易協会(KITA)国際貿易通商研究院が24日に発刊した報告書「攻撃を受ける自由貿易、主要国のFTA論議の動向と示唆点」によると、米国の広範囲な関税措置で通商環境の不確実性が拡大したことで主要国は、新規FTA締結および中断された交渉の再開▽既存のFTA改善▽複数国間の貿易協定加盟などで二国間・地域間協力を加速化していることが分かった。
代表的なものとして、欧州連合(EU)はトランプ大統領の当選以降、長期間進展がなかった南米南部共同市場(メルコスール)とのFTA交渉を25年ぶりに、インドネシアとのFTA交渉を10年ぶりに妥結した。英国もインドとのFTA交渉に着手して3年ぶりの5月に交渉妥結に成功した。
報告書は、米国の関税戦争による通商環境の変化に対応するため、韓国もFTA推進戦略を一層強化しなければならないと提言した。
韓国は先月基準で計59カ国とFTAを締結し、9カ国とは交渉を完了した状態だ。この5年間(2020~2024年)にFTA締結国に対する輸出は年平均5.1%増加したと集計された。これは輸出全体の増加率(4.7%)とFTA非締結国に対する輸出増加率(3.7%)を上回る割合だ。報告書は、韓国が交渉を完了した湾岸協力会議(GCC)、アラブ首長国連邦(UAE)、グアテマラ、エクアドルの4カ国とのFTAを発効した場合、全世界の国内総生産(GDP)に占めるFTA締結国のGDPの割合が2.2ポイント増加する見通しだと分析した。
また、輸出増大、サプライチェーン安定のために、すでに締結したFTAに比べて自由化の水準が高いCPTPP加盟も早急に推進しなければならないと提案した。CPTPPは米国が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から脱退した後、アジア・太平洋の11カ国が結成し2018年にスタートした多者間FTAだ。貿易規模は2020年基準で5兆2千億ドルに達する。これらの国々に対する韓国の輸出規模は2023年基準で1604億ドルで、総輸出の25.4%だ。これに先立ち、韓国政府は、2022年にCPTPP加盟推進計画を議決したが、農漁業者の反対と日本産の水産物輸入に対する憂慮、インフレ抑制法(IRA)など新しい通商懸案への対応が優先視され、加盟申請を保留した。CPTPPを主導していた日本も、韓国の加盟に否定的な気流だった。
韓国貿易協会のカン・グミュン首席研究員は、「CPTPP当事国の多数とすでにFTAを締結しているが、市場アプローチの改善を通じた輸出機会の拡大、安定的なサプライチェーン構築、生産コスト節減の側面でCPTPPが有利だ」として「成熟期に入った韓国のFTA政策と経験を生かし、韓国国内の脆弱産業の保護のための補完対策を設けながらCPTPP加盟の論議を再開すべきだ」と強調した。