台湾を狙って前例のない激しい軍事演習を行っている中国が、台湾の海岸線に非常に近い場所で撮ったものとみられる写真を公開した。
中国官営「新華社通信」が5日に公開したこの写真は、中国人民解放軍東部戦区が台湾周辺海域で実戦訓練を行っている最中に撮ったもので、中国の軍艦に乗った兵士が望遠鏡で台湾側を眺める姿が写っている。この写真には、遠く台湾海軍の駆逐艦「蘭陽」と台湾の海岸線、そして山の輪郭が鮮明に写っている。
香港メディア「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、「蘭陽」の背後の地形を分析し、東部海岸の花蓮の和平火力発電所の近くと見られると分析した。花蓮は台湾東部の海岸都市だ。中国海軍の軍艦は台湾をぐるりと回って台湾の東の海から台湾を眺めているものと推定される。新華社通信や中国東部戦区は、中国の戦艦がどこにあったのか、写真に撮られた台湾の場所がどこなのかは明らかにしていない。
中国はナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を機に、4日から台湾を相手に強力な軍事演習を実施すると同時に、中国国民と台湾人に向けた心理戦も繰り広げている。この写真のほかにも、中国軍は最近、ミサイルと長距離砲を発射する場面を撮った写真と動画を公開した。
中国はまた、台湾に対する大規模なサイバー攻撃を行ったものと推定される。台湾行政院のオードリー・タンIT担当政務委員(閣僚)はペロシ議長が到着した翌日の3日、記者会見を開き「前日の2日だけで台湾の公共機関に対するサイバー攻撃が過去最多の時より23倍も多かった」と明らかにした。
一方、中国が5日、ペロシ議長の台湾訪問に対する報復として、これまで進めてきた軍事と気候関連8分野の対話の取り消しまたは暫定中止の方針を発表したことに対し、米国は「無責任だ」と非難した。
アントニー・ブリンケン米国務長官は6日の記者会見で、台湾をめぐる中国の軍事演習を非難し、「北京は他の種類の無責任な措置(irresponsible step)を取った。彼らは米中両国が共に協力してきた8つの異なる分野に対する対話を中止した」と述べた。さらに、中国が米国との気候変動をめぐる協力も中止した事実を取り上げ、「世界最大の炭素排出国がいま気候危機と戦うことを拒否している。中国は両国の意見の相違を理由に、全世界が懸念する問題をめぐる協力を人質にしてはならない」と批判した。