自民党内の最大派閥を率いている安倍晋三元首相が、防衛費増額、「ニュークリア・シェアリング(核共有)」など安全保障関連発言を相次いで行い、存在感を誇示している。7月に予定された参議院選挙を控え、保守層を結集し、影響力を高める狙いがあるものとみられる。
安倍元首相は17日夜、東京都内のホテルで自身が会長を務める自民党内の派閥「安倍派(清和政策研究会)」のパーティーを開き、ロシアのウクライナ侵攻に言及し、「日本がどのように防衛力を強化していくか世界は注目をしている」と述べた。また、23日に予定されている米日首脳会談についても、「バイデン大統領は日本が防衛力を強化していくことに期待を表明する可能性がある」とし、「日本は自分と地域の平和を守っていく意志を示すべきだ」と強調した。
同日のパーティには岸田文雄首相も出席した。 産経新聞の報道によると、岸田首相は「党の宿願である憲法改正にしっかり取り組んでいかなければならない。大きな課題に向け、安倍会長のお力添えをいただきたい」と述べた。岸田首相はさらに「かつて民主党政権下で毀損(きそん)した日米関係を安倍政権が完全に修復し、日米同盟を深化させてくれた」とし、「重責がもたらす孤独に耐えながら努力した安倍元首相の努力に敬意を表する」と褒め称えた。
自民党内で安倍元首相の影響力はいまだ健在だ。安倍元首相は辞任後も、各種講演や放送で安保関連の内容について歯切れのいい発言を続けている。例えば、安倍元首相は、日本の防衛費を現在の国内総生産(GDP)の1%水準から5年以内に2%まで引き上げるべきだと主張している。また、「敵基地攻撃能力」について、「(対象を)基地に限定する必要はない。向こう(北朝鮮や中国など)の中枢を攻撃することも含むべきだ」と強調した。このような内容は自民党が岸田首相に先月27日に提出した「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」に盛り込まれた。
日本で長い間タブー視されてきた核についても、同氏は今年2月、テレビ放送に出演し、「ドイツとオランダは米国の核兵器を共同運用している。日本も様々な選択肢を視野に入れて議論すべきだ」と述べた。「核共有」発言に対して自民党内に同調する議員もいたが、安保専門家と米国さえも反対ムードが強く、党の提言には採択されなかった。東京新聞は「保守層の支持を固めつつ、党内での影響力を確保する狙いがありそうだ」と指摘した。