北朝鮮が事実上、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験の猶予(モラトリアム)を破棄する態勢に入ったと判断し、韓国と米国は朝米関係が険悪だった過去に戻る危機に直面した。米国のジョー・バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻に対処するために全力を傾けている中、北朝鮮の核問題が再び起こり、欧州と東アジアの危機を同時に克服しなければならない非常に困難な状況に陥った。
バイデン大統領は、欧州などとともにロシアに広範囲な金融制裁を加えたのに続き、最近ロシア産石油の禁輸措置という強硬なカードを切った。この過程で、同盟国を反ロシア連合戦線に束ね、直接軍事介入を除く事実上すべての手段を動員した。しかし、ロシアはそれをものともせず、3週間も戦争を続けている。ロシアの行動は冷戦終結後の欧州の安定と米国主導秩序を大きく揺さぶっている。
こうした中、核不拡散秩序を揺るがす北朝鮮の核・ミサイル問題が本格的に再発すれば、バイデン政権は多方面で困難な立場に立たされる。まず、関心と資源、エネルギーが分散し、二つの状況に効果的な対処が難しくなる。当初、中国牽制に集中すると公言したバイデン政権は、ロシアの意外な強硬姿勢に当惑していた。
二つの危機が朝中ロ密着ムードの中で起きていることも事態の深刻さを深めている。米国防総省のジョン・カービー報道官は、今回の判断を公開したのは「国際共同体が北朝鮮によるこうした兵器のさらなる開発と拡散に反対するという一致した声を出すと信じているため」と述べた。しかし、国連安全保障理事会常任理事国である中国とロシアが、米国と大きく対立している状況なので、過去のように安保理による対応は容易ではない。中ロは1~2月、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する安保理の対応にも反対した。中国の王毅外交部長は7日、「朝鮮半島問題の根源は、北朝鮮が直面している外部からの安全保障上の脅威が長期間解消されていないため」だと述べた。中国は核とミサイルのモラトリアムなど、北朝鮮の措置に米国が前向きに反応しなかったことが状況を悪化させたと主張する。
北朝鮮の新型ICBM発射実験の動きは、本土が「潜在的標的」になる米国に再び核ミサイルの恐怖を呼び起こす可能性がある。北朝鮮が「偵察衛星開発」を名目に関連実験を行ったという「火星17型」は、2017年11月に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が実験発射に成功した後「国家核武力完成」を宣言した火星15型より大きく、射程も長いものと推定されている。さらに、北朝鮮が廃棄を宣言した豊渓里(プンゲリ)の核実験場で最近、新たな建設の動きが見られたとの発表もあった。
ホワイトハウス関係者は、北朝鮮の新型ICBMの開発実験に関する韓米の発表があった10日(現地時間)、米国は依然として対話の扉を開いており、非核化交渉が進展すれば、バイデン大統領が金正恩国務委員長に会う用意があると述べた。実務協議の「テーブルで真摯な合意がなされれば」会うことができると立場を示したのだ。朝米首脳会談にまで言及したのは、対話の意志を強く表明したものとも言えるが、前任のドナルド・トランプ大統領が「実験」した首脳間の談判というトップダウン方式は避けるという態度は依然として残っている。