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[コラム]韓国の新大統領と新冷戦の到来

登録:2022-03-10 02:21 修正:2022-03-10 08:50
[編集局から]キル・ユンヒョン|国際部長
沖縄県宜野湾市にある在日米軍普天間飛行場の様子。冷戦時代、韓国と台湾の政治指導者たちは、両国の安保に影響を及ぼす沖縄の情勢に敏感に反応した=宜野湾/キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 第2次世界大戦を勝利に導いた英国のウィンストン・チャーチル首相は、1946年3月5日に米国南部ミズーリ州のウェストミンスター大学で、冷戦の到来を予見する非常に興味深い演説を行った。「鉄のカーテン」という独特の表現で歴史に記録される演説で、チャーチルはソ連が「バルト海のシュチェチンからアドリア海のトリエステまで鉄のカーテンを張っている」と皮肉った。2千万人の自国民が命を落とした凄絶な戦争が終わった後、ソ連は自国の安保不安を理由として、東欧の人々の自由意思を無視して自身に友好的な共産政権を強要した。米国はこれに対抗して大々的な封鎖政策を実施することになる。その後40年あまり続く長い冷戦の始まりだった。

 今月1日の米国のジョー・バイデン大統領の初の一般教書演説を聞いて自然にチャーチルが頭に浮かんだのは、この演説もやはり後日、新冷戦の到来を宣言した「歴史的演説」として記憶されるだろうという直感があったからだ。バイデン大統領は「自由はいつも暴政に打ち勝つだろう。5日前(先月24日)、ウラジーミル・プーチンは、その脅迫的なやり方によって頭を下げるだろうと期待しつつ、自由世界の基礎を揺さぶり始めた。しかし彼の判断は大きな誤りだった」と宣言した。

 バイデン大統領は就任後たびたび、人類は現在「民主主義と独裁との争いという変曲点の上にいる」と述べてきたが、プーチンが犯した「卑劣な暴挙」によって、その予言が的中した格好になった。旧冷戦が「資本主義と共産主義」という経済システムをめぐる対立であったとすれば、新冷戦は民主主義と権威主義(または独裁)という政治体制同士の対立だと言える。私たちが信じる基本的価値である民主主義▽法の支配▽国際規範の順守▽紛争の平和的解決などの原則を無視し、暴力で自らが望むものを手に入れようとする者がいれば、全世界が一致団結して断固立ち向かわなければならない。バイデン大統領は冷戦時代の封鎖政策のように、現代の資本主義経済システムからロシアを追い出す壮大な措置を毎日のように打ち出しているが、この流れは今後も簡単には変わらないだろう。

 ウクライナ戦争で始まった新冷戦は、中国というもう一つの権威主義の大国と隣り合って生きる東アジアにも少なからぬ変化をもたらさざるを得ない(中国はプーチンを非難しておらず、制裁にも同調していない)。東アジアの二つの火薬庫とは、他でもない「朝鮮半島」と「台湾海峡」だ。特に昨年からは、台湾に対する中国の軍事的圧力は次第に露骨になっており、地域全体で緊張が日増しに高まっている。台湾問題に関して日本は「台湾の危機はすなわち日本の危機」との認識のもと、万が一恐ろしい事態が発生した場合に対応できるよう、日米同盟をさらに強化する作業を進めている。それに比べて韓国は、台湾事態をある程度「対岸の火事」と見ており、対立が発生した際に巻き込まれないよう距離を保っている。

 現代の韓国人には馴染みのない概念だが、冷戦的枠組みで世界を眺めると、朝鮮半島~日本~台湾の安保はコインの裏表のような不可分の関係といえる。冷戦時代を生きた李承晩(イ・スンマン)、朴正熙(パク・チョンヒ)と台湾の蒋介石は、両国の安全保障に直接的な影響を及ぼす沖縄の情勢に敏感に反応した。巨大な米軍基地の存在する沖縄が日本に返還される過程で、この問題は「極東の安保上、関係する自由国家全体の安全に直結する」として、鋭い反応を示したのだ。それもそのはずで、沖縄の嘉手納は朝鮮戦争において北朝鮮を攻撃する爆撃機が出撃した後方基地だったし、台湾事態が発生した際には第一線で介入することになる米軍の前進基地となるからだ。その結果、1969年11月に公開されたニクソン・佐藤共同声明には「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素」という文言が入った。

 新冷戦の余波が東アジアにも及ぶことで、韓米日と台湾、オーストラリアを包括する軍事協力の必要性を主張する声が次第に頭をもたげてくるだろう。この招かれざる「馴染みのない過去」の到来にいかに対応すべきだろうか。新大統領が5年にわたって担わなければならない最大の外交・安全保障上の課題があるとすれば、まさにこの問題ではないかと思う。

//ハンギョレ新聞社

キル・ユンヒョン|国際部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1034208.html韓国語原文入力:2022-03-09 19:43
訳D.K

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