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コロナで広がる貧富の格差…K字型回復に世界は「富裕税の導入」議論中

登録:2021-01-13 08:54 修正:2021-01-13 09:20
コロナ禍の長期化で赤字財政が深刻 
資産増加した富裕層から「税金を徴収しよう」 
アルゼンチンやボリビア導入…欧米も議論中
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 世界各国が国債発行など赤字財政で新型コロナ危機を切り抜ける中、税収確保のための議論が活発になっている。特にコロナ禍が長引き、「貧富の格差の拡大」現象であるK字型の回復傾向が現れ、富裕層にさらに税金を徴収しようという「富裕税」の導入に向けた議論が各地で行われている。

 「富裕税」の導入にいち早く乗り出したのは南米諸国だ。アルゼンチンの上院は昨年12月、保有資産2億ペソ(約2億4千万円)以上の高所得層を対象に、1回限りの富裕税を徴収する法案を可決した。税率は国内資産3.5%、国外資産5.25%で、国外税率が国内より1.5倍高い。コロナ禍でインフレが深刻化し、資産家らが海外に資産を持ち出す現象が現れたためだ。課税対象は全体納税者の0.8%に当たる1万2000人だ。アルゼンチン政府はこれにより約3千億ペソ(約3600億円)の財政を調達でき、これをコロナ関連医療機器の購入(20%)、中小企業への支援(20%)、社会開発(15%)などに使う計画だ。

 ボリビアも昨年末、3000万ボリビアーノ(約4億5千万円)以上の資産家を対象にした富裕税の導入を確定した。ボリビア当局は、納税対象を152人と見ている。同税は1回限りのアルゼンチンとは違い、毎年徴収される予定だ。

 英国やドイツ、フランスなど、欧州でも富裕税の導入が取り上げられている。新型コロナ変異ウイルスで三度目の封鎖に入るなど、第2次世界大戦後最大の財政的打撃を受けた英国では、2600億ポンド(約37兆円)規模の1回限りの富裕税を導入すべきとの提言が、英国の経済学者らが作った「富裕税委員会」によって行われた。1年の税収の3分の1を超える規模だ。同委員会は50万ポンド(約7千万円)以上の財産を保有している者に5年間毎年1%の税金を課すことを提案した。約800万人が対象になるとみられる。保有税を賦課した経験があるフランスとドイツも同税の再賦課を求める声があがっている。

 米国でも富裕税をめぐる議論が活発に行われている。特に民主党が多数の議席を占め、米国の億万長者の60%が集まるカリフォルニアとワシントンの州議会が富裕税の導入に向けた議論を始めた。ジョー・バイデン次期大統領が富裕税の導入に否定的であるものの、資産の格差が拡大しており、議論が続くものと見られる。

 かつてスウェーデンやドイツ、南米などで施行したが廃止された富裕税が再び取りざたされているのは、状況の深刻性と特殊性のためだ。各国はコロナ禍で萎縮した経済を立て直すため、前例のない資金供給に乗り出した。米国や欧州、南米、アジアなど多くの国が過去最高の財政赤字状態を見せているが、天文学的な流動性の拡大で、富裕層がさらに豊かになる現象が現れている。いわゆる「K字」型の回復だ。あらたな税収確保が難しい状況で、危機の時に金を稼いだ人々に税金を負担させるべきだという声が高まっている。

 実際、米政策研究所(IPS)は、米国の10億ドル以上の資産家651人の財産が、この9カ月間で1兆ドル以上増加したと分析した。また別の調査では、中国の10億ドル以上の資産家415人の総資産は計1兆6800億ドル(約1937兆)で、4カ月前より41%増加したことが調査の結果明らかになった。ロンドン政治経済大学(LSE)のアンディ・サマーズ教授は「過去には富裕層対象の租税制度改革に関する論議に進展が見られなかったが、今は富裕税の導入に向けた論議が深刻な議題として取り上げられている」と述べた。

チェ・ヒョンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/978440.html韓国語原文入力:2021-01-1218:42
訳H.J

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