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韓国、コロナ禍で広がる「K字型二極化」に「利益共有制」などの議論高まる

登録:2021-01-13 06:35 修正:2021-01-13 10:19
コロナ禍で活況呈したプラットフォームなどの企業 
自発的に利益を分かち合い、社会的貢献を誘導 
与党代表「利益共有制で苦しみを痛み分かち合うべき」 
正義党「個人の自発性に頼るのは限界がある」 
期限付きで5%増税する「災害連帯税」を提案
共に民主党のキム・テニョン院内代表が今月12日、国会で開かれた院内対策会議で発言している/聯合ニュース

 コロナ禍で二極化が進むにつれ、韓国政界では格差の解消に向けた様々な方策が示されている。12日、与党の共に民主党は利益共有制を、正義党は特別災害連帯税などを示し、各案の内容と実効性についても関心が集まっている。

 民主党のイ・ナギョン代表は同日、仁川(インチョン)新港を訪れ「コロナ禍の二極化を克服するためには、私たちの制度と財政の役割や福祉システムはもちろん、民間で痛みを分かち合うことが必要だ」とし、「このためには一定程度の成長が必要で、成長のために輸出の寄与が避けられない構造となっている」と述べた。そして、「利益共有制」のモデルとして、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の大統領選挙公約だった「協力利益共有制」を示した。イ代表は「(協力利益共有制の)内容を見ると、インセンティブを提供し、共有を誘発する案があった。そういう案を援用できるだろう」と説明した。

 「コロナ利益共有制」は、新型コロナウイルスの感染拡大の中、活況を呈した企業が自発的に利益を分かち合い、社会的貢献をするよう誘導するものだ。コロナ禍の非対面取引の活性化で大きな収益を上げたネイバーやカカオなど、プラットフォーム業種の企業が対象になる見通しだ。

 方式は税制優遇や行政的支援などのインセンティブで、自発的な参加を誘導する形が有力だ。同党の幹部は「ネイバーやカカオ、クーパン、マーケットカーリーなどのプラットフォーム事業者が(コロナ禍で)ネットワーク効果によってほぼ独占に近い事業を行っている。これら企業をコロナ時代の勝者と言えるだろう」としたうえで、「ところがこれらの状況は表面的には現れず、あまり目立たない」と述べた。

 しかし、民主党の主張する利益共有制については、革新陣営からも批判の声が上がっている。企業の自発性に頼ることは明らかに限界があり、責任を負うべき政府の役割は後回しになっているからだ。

 過去にも大企業とそれに協力する中小企業が自発的に成果を分かち合う形の「超過利益共有制」(2011 年)や「協力利益共有制」(2018 年)などが提案されたが、これらの理由により大きな成果は上げられなかった。超過利益共有制は、李明博(イ・ミョンバク)政権時代の2011年、チョン・ウンチャン同伴成長委員長の主導で、大企業の超過利益を協力中小企業と分けようという提案だった。また、「協力利益共有制」は、文在寅大統領の大統領選挙公約で、大企業と協力中小企業が事前に協定を結び、共同の努力で達成した利益を分け合う制度で、第20代国会で政府与党が導入を試みたが、反市場的という野党と財界の反発で法制化されなかった。

 正義党はイ・ナギョン代表の利益共有制を批判し、「一時的増税」を提案した。チャン・ヘヨン正義党院内報道担当は同日午後、国会疎通館で行われたブリーフィングで「自発的に家賃を安くする大家さんに税額控除の恩恵を与える『善良な大家さん』政策は、自営業者、小商工人たちに何の役にも立たなかった」とし、「いま政府与党がやるべきなのは国民の善意に頼ることではなく、社会連帯を制度化すること」だと述べた。“キャンペーン”ではなく、“立法”が重要だという指摘だ。

 チャン報道担当は、具体的に特別災害連帯税の導入▽小商工人営業損失補償法などを2月の国会で論議することを提案した。特別災害連帯税は、新型コロナの感染拡大による経済構造的変化で前年より所得や営業利益が大きく増えた個人や法人、そして超高所得者と大企業に、今後2年間を目途に税金5%をさらに賦課する案だ。立法を通じて、期限付き増税を実施すべきだという。

 こうした政界論議に関し、大統領府経済首席を務めたホン・ジャンピョ釜慶大学教授(経済学)は「イ代表の利益共有制はコロナ禍の特殊状況を反映した一種の社会貢献基金と言える」とし、「増税が現実的に困難である中、自発的な社会連帯とそれによるインセンティブを提供する案を論議してみる必要がある」と述べた。一方、市民団体「私が作る福祉国家」のオ・ゴンホ共同運営委員長は「新型コロナの危機を克服するためには、積極的な財政の役割が重要だが、自発性に基づいた寄付に補完的な役割を期待するのは現実的ではない」と指摘した。

 これについて、民主党はコロナ利益共有制とともに「財政拡大」も念頭に置いているという。ホン・イクピョ政策委議長は同日、民主党の院内対策会議で、「韓国政府の財政余力はさらに拡大した財政役割を果たす上で問題がない」とし、韓国の政府債務が対国内総生産(GDP)比45.9%で、先進国平均(131.4%)より著しく低い点▽国際通貨基金(IMF)が2020年の韓国の基礎財政収支赤字をGDPの3.7%とし、主要先進34カ国のうち2番目に低いとの見通しを示した点△経済協力開発機構(OECD)が2020年韓国の一般財政収支をGDPの4.2%水準とし、主要国42カ国のうち4番目に低いと予測した点など、具体的な数値を根拠に挙げた。同日、民主党幹部は「ハンギョレ」との電話インタビューで「Kニューディールや新成長動力、セーフティネットを構築するには、それに伴う財政が必要なため、(政府が)さらに役割を果たすほかない」と述べた。

 二極化の深刻さが固定化しており、一時的なコロナ危機への対応だけではなく、二極化を念頭に置いて福祉制度そのものを再調整すべきだという声もあがっている。中央大学のシン・ジヌク教授(社会学)は「今の危機は雇用や所得、ケア、精神的危機まで非常に多方面に広がっている」とし、「国家的危機対応のレベルを超え、前向きに福祉制度の恩恵を受ける対象や規模を拡大し、労働保護も行わなければならない。制度的改革とこれを裏付ける財政的根拠など、実質的代案を示すべきだ」と指摘した。

 一方、保守野党は、イ代表の利益共有制の提案に対し、反市場的だと反発している。「国民の力」のイ・ジョンベ政策委議長も同日の院内対策会議で「社会的弱者を助けることは美徳だが、政権与党が強引に勧めるのは脅しに過ぎない。(利益共有制は)自分たちの失敗を国民を二分することで免れようとする浅はかな策だ」と述べた。しかし、国民の力も「弱者との同行」を宣言しており、新型コロナが触発した二極化の解消のため、与党批判にとどまらず、積極的な政策開発が必要であるとの認識を持っている。これに先立ち、キム・ジョンイン非常対策委員長は、企業の利益を減らし雇用を増やさなければならないという内容などを盛り込んだ報告書「共同善資本主義とディーセント・ワーク」を所属議員全員に「親展」の形で発送した。

ノ・ジウォン、イ・ジョンフン、イ・ジヘ、ノ・ヒョヌン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/978491.html韓国語原文入力::2021-01-1302:43
訳H.J

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