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[寄稿]世襲される能力と資産、いかに分配するか

登録:2021-01-07 03:24 修正:2021-01-07 09:16
カン・ジンチョル|国際大学社会福祉学科教授・法学博士

 キム・マングォン教授は12月21日付の「誰が『能力主義』を美化したのか」と題するコラムで、能力主義は能力による不平等と差別を正当化し、社会の大多数を能力がなく十分な努力をしない者に仕立てあげて無気力化し、道徳的羞恥心すら与える、と書いた。エリートである親たちは使える資源を最大限に動員し、子どもたちに能力を「作ってやって」譲り渡す、と述べている。

 このような能力の世襲方法は、第一に教育であり試験だ。韓国では少なくとも朝鮮時代から文民統治の伝統の下、科挙による出世の意志と努力が両班(ヤンバン、貴族階級)中心の社会を支配した。当然のことながら、科挙での合格は、両班という身分とその家の財産があってこそ可能だった。

 これは今日でも続いており、試験を通じて良い学閥を獲得することは本人の能力であり、十分に補償を受けるに値するというイデオロギーが働いている。学閥と試験による差別化と序列化こそ、韓国が運営される方式だ。このような試験による学閥獲得は、専門職-正規職の良い職業の獲得につながる。

 『20vs80の社会(原題:Dream Hoarders)』を書いた米国のリチャード・リーヴスは、人々は学力水準に沿って「彼ら同士結婚する可能性が高い」と述べている。家庭はリスクと資産を共有する機能を果たすが、高学歴者は同じ水準の高学歴者と結婚して家庭を築き、その家庭の子どもたちは良い遺伝子を持って生まれる可能性が高い。このような「同類同士の組み合わせ」は、高学歴層では上流層の利点をいっそう強化するが、そうでない低学歴層には素質の開発を制限させ、階層間の不平等を増幅させるだろう。生まれつきの家庭環境や頭脳の格差が、子どもたちの職業や所得の格差につながらざるを得ない。

 ますます熾烈となり両極化する韓国社会においても、それぞれの家庭の状況を見ると、「夫の所得と妻の所得の相関関係」は大きくなるものであり、その格差は幾何級数的に増えることになる。高学歴夫婦が安定した経済活動で稼いだ所得は資産として蓄積され、不動産として、老後に備えて国民年金や特殊職域年金(公務員、軍人、私立学校年金)として、そして預金や保険や個人年金のような金融商品としても投資されるだろう。リーヴスは、米国でこのように安定した生活をしながら老後に備え、かつ子どもにしっかりと投資する人々の割合を20%と考えたが、韓国もその程度ではないだろうか。残りは、夫婦が共働きでも不安定な職場と低賃金のせいで劣悪な居住環境を甘受せねばならず、子どもたちの教育と老後の備えは疎かにならざるを得ず、子どもたちははしごを使って登ることができない(受験に備えるための塾などに行けない)。

 「機会の平等」の話は数多くされている。しかし、能力だけでなく頭脳も才能も資産も世襲される時代にあって、機会の公正と平等だけでは不平等を解消することは難しい。スタートラインが違うのに、チャンスはすべて与えたのだから、チャンスを生かせずに落伍するのは、お前の無能力と怠惰のせいなのでお前の責任であり、それに伴う不利益は甘んじて受け入れよ、と言うのは、生まれつきの能力が足りない当事者たちにとっては苛酷すぎる。

 結局のところ、「機会の平等」からさらに一歩進んで「結果の平等」を追求すべきである。これは社会福祉制度の強化を通じてのみ可能だ。能力も頭脳も資産も貧弱な人々を助けるものこそ社会福祉だ。現在、全世界の貧しく劣悪な境遇にいる人々は、新型コロナウイルスの影響によりさらに窮地に追い込まれている。韓国もこれからは世襲された能力と素質をもとに多くの資産を持ち、多くの所得を上げる人々から税金をより多く取り立て、貧しい人々に配る所得再分配政策を通じて、困難な境遇にある国民に基本的で人間らしい生活を保障する方向へと向かわねばならないだろう。

//ハンギョレ新聞社

カン・ジンチョル|国際大学社会福祉学科教授・法学博士 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/977614.html韓国語原文入力:2021-01-06 19:03
訳D.K

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