「たった1週間だけだが、(少女像)展示が再開され、本当に嬉しい。市民が集会を開き署名運動を行って得た成果だ」。
8日、愛知県名古屋市の愛知文化芸術センター(芸術センター)8階で出会った70歳の日本人女性は「平和の少女像」を見て出て来た後、落ち着いてこう話した。女性は少女像の展示が再開された8日、なんと23人に1人以下という高い競争率を勝ち抜いて少女像の観覧機会を得た。「(今年8月に)少女像の展示があるというので見ようとしたが、展示が3日で終わってしまい残念だった」と語った。
愛知県はこの日から少女像を含む「表現の不自由展・その後」と題する企画展(以下「企画展」)を再開した。愛知県は今年8月1日、日本最大の国際芸術祭、あいちトリエンナーレ(トリエンナーレ)の一部として企画展を開始したが、右翼の攻撃により開幕から3日後の8月3日に企画展そのものを中止した。
同日午後1時30分ごろ、企画展を見るために集まった人々の長い列が芸術センター10階全体を取り巻いた。愛知県は午後2時10分と4時20分にそれぞれ30人のみ入場させることにしているが、その抽選を待つ人々だ。1回目の抽選には709人、2回目には649人が参加した。当選した人には係員が抽選用紙として使用した腕輪にスタンプを押してくれるのだが、当選者の中には周りの人にスタンプを見せて喜んでいる人もいた。
愛知県は「限定的に」展示を再開しながらも厳しい条件をつけた。観覧客は入場前に金属探知機でボディーチェックを受け、貴重品を除く荷物は預ける。観覧はガイド引率のもとに行い、討論時間も設けた。このため、個人が自由に見学できるのは1時間の観覧時間のうち15分にとどまった。展示場内部のマスコミ取材も禁止された。
抽選の列に並んだ23歳の大学院生の女性は、少女像の展示が「日本で非常に大きな議論になった。このような騒動そのものが『2次性暴力』ではないかと思う」と語った。名古屋市民のヤスイシズエさん(59)は「表現の自由を応援するために来た。少女像に芸術的意味があるかどうかは分からないが、展示を阻止する理由はない」と述べた。
少女像展示の中止を求める圧力を加えたのは右翼だけではない。安倍晋三政権は、補助金の申請書に詳細な内容の記載がなかったとして、先月トリエンナーレ全体に対する政府の補助金7800万円の支給を拒否する決定をした。少女像の展示を「日本人の心を踏みにじるもの」とした名古屋市の河村たかし市長はこの日、愛知文化芸術センター前と愛知県庁前に座りこみ、展示再開反対デモを行った。公共領域においても少女像展示の中止を求める圧力は絶えていないが、日本市民の粘り強い努力が、限定的とはいえ展示再開というかたちで実を結んだのだ。少女像展示の再開を求める署名運動にも1万人あまりが参加した。
抽選が当たって展示を見たタカヒロマサアミさんは「慰安婦被害は否定できない。これを堂々と話しにくい雰囲気が問題」とし、「少女像について書いたTシャツを着て歩いても平気な雰囲気が作られるべき」と強調した。「表現の不自由展・その後」実行委員の岡本有佳氏は、「困難の末にここまで来れてうれしい。一人でも多くの人に展示を見てもらいたい」と語った。