ドナルド・トランプ米大統領が19日(現地時間)、就任後初の国連総会の演説で、北朝鮮を「不良国家」「犯罪者集団」「完全破壊」「堕落した政権」などの用語で露骨に非難した。米大統領が「平和の殿堂」の国連舞台で、特定国家についてこのように激しい非難を浴びせたのは例を見ないことであり、朝鮮半島情勢にもかなり否定的影響を及ぼしかねない。
トランプ大統領は同日、ニューヨーク国連本部で41分間にわたる演説で、5分を北朝鮮問題に割いた。彼は「国連のすべての原則に違反する数カ国の不良政権が地球上の悩みの種になった。正しい多数が邪悪な少数に対抗しなければ悪が勝利する」とし、北朝鮮に狙いを定めた。
さらに、「地球上のいかなる国も犯罪者集団(北朝鮮)の核兵器とミサイル武装を手を拱いて見ていることには関心がないだろう」としたうえで、「米国と同盟を防御すべき状況になれば、他の選択の余地なく北朝鮮を完全に破壊するだろう」と声を高めた。
彼はまた、「すべての国が協力し、北朝鮮政権が敵対的行為を中止するまで、金正恩(キム・ジョンウン)を孤立させなければならない時」だと主張した。彼は、中国とロシアを特定しなかったが、「北朝鮮と貿易は違法行為」だとし、経済関係の断絶を促した。
彼は「『ロケットマン』(北朝鮮の金正恩労働党委員長)が自分と彼の政権にとって、自殺行為となる任務を遂行している」と皮肉った後、北朝鮮を「堕落した政権」とし、米国大学生オットー・ワームビア氏の北朝鮮抑留や死亡事件、金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件などまで取り上げながら圧迫した。彼は「北朝鮮は非核化が(国際社会が)受け入れられる唯一の未来であることを自覚しなければならない時」だと述べたが、発言に重みはなかった。
トランプ大統領が北朝鮮に対して好戦的発言を浴びせたのは今回が初めてではない。彼は「炎と怒り」、「北朝鮮への解決策を装填」など、ツイッターへの書き込みや記者たちとの質疑応答で即興的な発言を少なからず行ってきた。
しかし、今回の演説はトランプ政権内部での調整を経たうえ、世界各国の指導者らが見守る最高の外交舞台で行われたもので、さらに大きな波紋を呼ぶものと見られる。ジョージ・ブッシュ元大統領がイラクを侵攻する前に行なった「悪の枢軸」発言を彷彿とさせる。宗教的な善と悪という二分法的思考に基づいている点で、レトリックとしてもかなり激しいものだ。
ワシントンポストはこれについて、トランプ大統領の「完全破壊」は、北朝鮮2500万住民の命までも金正恩委員長と共に絶滅することになるというメッセージを送ったものだと分析した。しかし、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団のフランク・ジャヌージ理事長は、ハンギョレに「すべての国は自衛権を保有している。このため、北朝鮮が米国や同盟国を攻撃するならば、断固として対応するというトランプ大統領の脅しは目新しいものではない」と評価した。
トランプ大統領の過激な対北朝鮮演説の背景には、北朝鮮の核問題に進展が見られないことへの焦りがあるものと見られる。トランプ政権は「対北朝鮮制裁が作動し始めた」と主張しているが、北朝鮮は緊張を高める行為を繰り返している。さらに、民主党はもちろん、共和党内部でも対北朝鮮政策に対する批判的な声が高まっているという。今回の演説にはこのような国内の政治的批判をなだめる目的もあるとされる。
専門家らは、このような誇張されたレトリックが問題を解決するよりもさらに複雑にする可能性があると懸念を示した。ジャヌージ理事長は「トランプ政権は(戦いに向け)筋肉をほぐすことに止まってはならない」とし、「対北朝鮮政策ロードマップがない状態で、トランプ大統領の発言は北朝鮮の行動を変えることも、中国やロシア、同盟国との信頼を強化することもできないだろう」と指摘した。
国際戦略研究所マーク・パトリック米国所長も「(トランプ大統領の発言は)、金正恩を震えあがらせて核を諦めさせることはできないだろう」とし、「むしろ、米国を抑止できる核武装した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を持つという金正恩の決意を固めさせるだろう」と憂慮した。