日本の上空を通過した北朝鮮のミサイルが、日本の軍事力増強の動きに油を注いでいる。
小野寺五典防衛相は30日、衆議院で臨時に開かれた安全保障会議に出席し、北朝鮮のミサイルを撃墜しなかった理由を説明した。「レーダーを通じて発射の事実を確認したが、日本に落ちる憂慮はないと判断した」と話した。撃墜できたが撃墜する必要がなかったという話だ。
小野寺防衛相の説明にもかかわらず、日本ではミサイルが日本に落ちる場合に、実際に撃墜する能力があるのか疑問だとし、防衛能力を増強すべきという世論が噴出している。特に、現行憲法の解釈上、攻撃を受ける場合にのみ防御するという「専守防衛」が原則だが、北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃する「敵基地攻撃能力保有論」の主張が保守派を中心に強まっている。読売新聞は30日、敵基地攻撃能力の保有を検討すべきという社説を載せた。菅義偉官房長官はこの日、敵基地攻撃能力保有の検討を尋ねる質問に「現在としては必要な装備を保有することもなく計画もない」と線を引きながらも「今後種々のことを検討しなければならない」として余地を残した。
日本政府は最近、北朝鮮の威嚇を口実に防衛費を増額し軍事力を強化しつつある。防衛省は来年の防衛費として史上最大の5兆2551億円の予算を最近要請した。予算増加の理由として、中国の海洋進出警戒とともに北朝鮮の威嚇対応を挙げた。主な項目としては、北朝鮮のミサイル撃墜のための陸上型イージスである「イージスアショア」の導入費用とイージス艦に搭載する新型迎撃ミサイルSM3ブロック2Aの研究開発費が入っている。
民間の研究所を通した軍事技術研究も速度を上げている。防衛省が民間研究所と企業に対し軍事部門基礎研究資金を支援する「安全保障技術研究推進制度」の今年の応募件数は104件で、昨年(44件)の2倍以上だと朝日新聞が報道した。特に企業の応募は昨年の10件から今年は55件に5倍以上増えた。防衛省の支援金は、制度施行初年度の2015年には3億円に過ぎなかったが、今年は110億円に増加した。日本では軍国主義に対する反省から、民間研究を軍事技術に活用することをダブー視する雰囲気があったが、安倍政権になってからは民間基礎科学技術を積極的に軍事技術として活用しようとしている。
少数だが北朝鮮のミサイル脅威論が過熱しているという指摘もある。東京新聞は、安倍首相が「日本に弾道ミサイルが発射された」と話したが、北朝鮮のミサイルは日本を攻撃する目的ではなかったと指摘した。安倍首相が「今までにはなかった深刻な脅威」と話したが、北朝鮮が日本上空を通過するミサイルを発射したのは今回が5回目なので、根拠が不明確な発言だとも指摘した。