「ここの店舗の特性からして、これまでの常連客は引き続き来ていますが、新規のお客さんはもういません。韓国の会社であることが分かっているから、来ないんです」
中国北京市内の韓国系美容室のヘアデザイナーSさんは12日、このように語った。この店は社長だけが韓国人で、他の従業員は全員中国人だが、最近、THAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配備が加速化してから、“THAAD報復”の波にのまれている。
中国社会の激しい世論は、憲法裁判所の朴槿恵(パク・クネ)前大統領弾劾の決定後も、収まる気配がない。13日、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の微博などで「ロッテ」を検索すると、陳列棚からロッテ商品を片付けてしまう動画やロッテと韓国商品不買運動を促す書き込みが並ぶ。先週、中国内のロッテスーパー99店舗のうち、55カ所が営業停止処分を受けたなか、ロッテの事業所に対する追加処分は今のところ拡大していないという。しかし、営業停止期間が1カ月に達しており、現状でも被害が長引く可能性が高い。北京のある消息筋は「ロッテのほか、別の韓国企業についても消防・安全点検などが進められている」と伝えた。中国在住の韓国人たちも、依然として“恐怖”に苦しんでいる。山岳同好会の会員であるJさんは「いつもは週末の登山後、中国食堂に行ったが、先週末にはいちゃもんを付けられるかもしれないと思って、韓国食堂に行った」と話した。
一部では、憲法裁の朴前大統領罷免の判決後、中国当局が報復を緩めるとの見通しも示された。今月11日、北京の韓国大使館と韓国人の密集地域の望京のロッテマート前で予定されていたデモが、警備の強化で開かれなかったというのが主な根拠だ。しかし、大使館側は13日、「デモの動向が具体的にあったわけでもないし、警備の強化も15日まで開かれる両会(全国人民代表大会・全国人民政治交渉会議)が原因である可能性があると言われている」と伝えた。
一方、「環球時報」は13日付で、韓中日をめぐるクルーズ観光に乗り出した約3千人の中国人たちが今月12日、済州道で下船しなかったことについて「愛国的行動であり、方法も文明的」だと絶賛した。同紙は「中国人観光客が韓国を行くか行かないかは、個人の自由であり、政府が方向を決めたわけではない」と主張した。そして「THAAD反対行為は平穏かつ秩序を守って行われるべきだ」としたうえで、「韓国の品格と韓国人の人格を侮辱する方向に進んではならず、THAAD対応を“日常化”して生活の一部にし、韓国が静かに代償を払う様にしなければならない」と指摘した。物静かながらも根強く、何より政府から言及がなくても、自発的に“報復処置”を続けるよう、指針を示したものと見られる。