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フィンランドで基本所得実験2カ月、どんな変化が起きたか

登録:2017-03-01 22:40 修正:2017-03-02 06:44
失業者から無作為に選び毎月約6万7千円 
手当てを失うことを恐れ求職・起業をためらった人々が 
基本所得を踏み台にして新しく出発する力を得る 
 
政治家・企業家たちも「時代精神」共感  
EU市民64%が支持…財源は「難解な問題」
1月4日、フィンランドのヘルシンキに構えた社会保障保険公団「ケラ(Kela)」事務所の様子=ヘルシンキ/EPA聯合ニュース

 フィンランド第2の都市であるタンペレ近郊の村に住む2人の子どもの父親ミカ・ルスネンは昨年末、政府の印章が押された一通の手紙を受け取った。1カ月に560ユーロ(約6万7千円)を何の条件もなく受けることになったという通知文だった。「最初は誰かのいたずらかと思いました。虚偽の通知ではないかと思って何度も読み直してみました」

 フィンランドが世界で初めて今年1月から中央政府レベルで基本所得実験を実施し、2カ月が過ぎた。全国25~58歳の失業者のうち2000人を無作為に選定し、今後2年間、毎月560ユーロをただで与えるというものだ。英国の「ガーディアン」は最近、フィンランド基本所得実験の恩恵を受ける人に現れた変化や論議、課題を紹介した。

 ルスネンは最近働き口を得たと言い、「(基本所得は)私の収入におまけで乗せられた無料ボーナス」と話した。彼は「以前までは失業者が起業すると、最近6カ月間収入が少しもなくても失業手当を受けられなくなった」と言い、基本所得はそのような懸念を打ち消し、失業者らの新しい出発を激励するということだ。

 また他の基本所得の受給者であるユハ・イェルビネンは、破産後5年間失業状態だった。その間、結婚式のビデオ撮影、インターネットホームページ制作などを無料でやりながら過ごした。なぜなら「基本所得の実施前には、そのような仕事の報酬を受け取ると(失業手当を受けられない)問題が生じるかもしれなかったから」だ。しかし、今は同じ仕事をしながら正当な代価を受けることができるようになった。

 ガーディアンは「今日の基本所得はすでに『時代精神』となっている」と報道した。基本所得が私たちの時代の問題に対する解決策になり得ると信じる政治家や企業家、政策専門家たちが増えているということだ。米国の起業家であるイーロン・マスク、ビル・クリントン政権で労働長官を務めたロバート・ライシュ、フランス大統領選挙の社会党候補であるブノワ・アモン、そして韓国の大統領選候補であるイ・ジェミョン城南(ソンナム)市長などを情熱的な主唱者として挙げた。

 フィンランドの基本所得実験は「普遍的基本所得」を変形させたものだ。収入の有無と関係なく与えはするが、従来の失業手当など社会福祉の給与を廃止し、関連行政費用を最小化した方式だ。ピルコ・マッティラ社会福祉・保健長官はガーディアンに「複雑化した社会福祉システムを簡素化する必要があった」とし、受給者が失業手当が断たれることを心配せず短期就業や起業ができるようになることを期待すると話した。

 欧州では基本所得に対する共感が高まっているが、莫大な財源を確保する案は依然として「難解な問題(ホットポテト)」だ。昨年5月、欧州連合が加盟国の市民1万人を対象に行ったアンケート調査で、回答者3人中2人(64%)が基本所得の導入に「賛成」した。基本所得を受けたら労働をやめるという回答は4%に過ぎなかった。しかし、財源調達のための税制改編を受け入れるかどうかについては否定的な態度が多かった。英国のシンクタンクである「技術・製造業・商業促進のための王立学会」のアンソニー・ペインター所長は、年間4000ポンド(約56万円)の基本所得を英国人に与えるのに必要な予算180億ポンド(約2兆5千億円)は、所得税3%ポイント引き上げに匹敵するものと推算した。

 一方、フィンランドのシンクタンクであるパレコンのアンティ・ヤウヒアイネン所長は、一部の非良心的な雇用主らが基本所得を口実に不安定な労働モデルを拡大する可能性があるという憂慮もしている。

チョ・イルジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/784752.html 韓国語原文入力:2017-03-01 20:00
訳M.C(1699字)

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