国策研究機関としては初めて、すべての国民に無条件で「基本所得」を支給しようという提案が出された。
首相傘下の国策研究機関である韓国職業能力開発院主催で、12日ソウル中区(チュング)のポストタワーで開かれた「基本所得の労働市場効果に関する討論会」では、韓国職業能力開発院のチョン・ウォンホ主任研究委員と韓信大学のカン・ナムフン教授(経済学)が共同研究結果を発表し、「すべての国民に30万ウォン(約3万円)の基本所得を支給すると、全世帯の82%が純受恵世帯になる」とし、「労働市場にも肯定的な効果を及ぼすだろう」と主張した。
チョン研究委員とカン教授は「韓国型基本所得モデル」として、市民配当20万ウォン(約1万9800円)、不動産配当5万ウォン(約4900円)、環境配当5万ウォンを合わせ、1人当たり月30万ウォンを支給しようと提案した。180兆ウォンと推定される財源の調達方法も明らかにした。家計に帰属するすべての所得に対して10%の税率の「市民税」を賦課して110兆ウォン(約10兆9千億円)、火力・原子力発電に炭素税・原子力安全税など環境税を賦課して30兆ウォン(約2兆9千億円)、すべての不動産保有者に0.6%の税率を賦課して30兆ウォンを捻出した後、基礎年金や基礎生活保障の予算を基本所得に転換して13兆ウォン(約1兆2千億円)を確保すれば可能と見込んだ。例えば、年間所得が9000万ウォン(約891万円)で3億ウォン(約2900万円)の住宅を保有する4人世帯は、年間1440万ウォン(約142万円)の基本所得を受け取るが、市民税900万ウォン(約89万円)、不動産税88万2千ウォン(約8万7千円)、環境税(家計負担分を80%と仮定)192万ウォン(約19万円)を納付すると推定すれば、総税額は1180万2千ウォン(約117万円)で年間259万8千ウォン(約25万円)の恩恵を受けることができる。この試算によれば全世帯の82%で、納める金額より受け取る金額が多くなるという。
チョン研究委員は、基本所得の導入が必要な理由として、すべての人は人類の共有資産である土地・資源・知識(人工知能)などに対する配当を受ける権利があり▽基本所得が所得の両極化を起こす不安定な労働を保護することができ▽全国民に同じ税率で課税し同一に分配すれば、大多数が純受恵階層となり、福祉拡大による租税への抵抗を弱められるという点を挙げた。
「現金を与えれば仕事をしなくなる」という批判が多いが、チョン研究委員は基本所得が労働市場に肯定的な効果を及ぼすと見た。彼は「基礎生活保障制度の下では、一定の所得以上になると生計給付が中断されるため、その所得を超える労働は一切しないという福祉の罠が発生するが、基本所得には何の条件もないので、基礎生活保障の代わりに基本所得を受けとるならば働く誘因が追加発生する」とし、「高所得者は受け取る基本所得よりもそのための税金が多いので、労働の誘因が弱まり得るが、彼らの労働の減少は良質な雇用を分かち合う効果もあるので社会的に望ましい」と明らかにした。
チョン研究委員は「基本所得は既存の福祉パラダイムの転換として細心の準備と設計が必要だ」とし、「政治領域での偏見を解消し、年齢別・地域別に緻密な設計と評価準備作業を通じた基本所得の実験も必要だ」と明らかにした。