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北朝鮮国籍4人、半月前からマレーシアに相次いで入国、殺害当日同時出国

登録:2017-02-19 23:42 修正:2017-02-20 08:33
徐々に濃くなる北朝鮮背後説
19日午後、クアラルンプール警察庁庁舎講堂で開かれた金正男殺害事件捜査結果発表で、マレーシア警察が発表した容疑者のうち北朝鮮国籍の男4人の写真=クアラルンプール/シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏(46)殺害事件と関連して、マレーシア警察が初めて捜査結果を発表し確認した事実は、逃走した容疑者4人が全員北朝鮮国籍者だということだ。さらに、すでに身柄が確保された5人の容疑者と参考人は捜査に協力しているという。

 これは金正男氏の殺害を主導した人物は逃走しており、警察が身柄を確保した容疑者は事件の全貌と動機を知らずに加担した可能性を物語る。北朝鮮国籍者らが犯行を実行する人物を物色し、これらに金正男氏を殺害させておきながら、事件主導者はマレーシアを発ち警察の捜査網から逃れ出たと見られる。事件の主導者は“尻尾”を切って逃げ、単純加担者だけが残された可能性が高い。

19日午後3時(現地時間)、マレーシア、クアラルンプールの警察庁でイブラヒム・マレーシア警察庁次長がキム・ジョンナム殺害以後、初めて公式記者会見をしている。この日記者会見場には300人近い内外信記者が集まった=クアラルンプール/シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

■北朝鮮の組織的犯行?

 19日のマレーシア警察の発表を総合すれば、今回の事件の核心は逃走した“4人の男性容疑者”だ。リ・ジェナム(57)、オ・ジョンギル(55)、ホン・ソンハク(34)、リ・ジヒョン(32)とパスポート上の名前が確認された4人は、犯行の半月前の1月30日にホン・ソンハクがまず入国し、リ・ジェナムは2月1日、リ・ジヒョンは4日、オ・ジョンギルは7日などのように、数日の間隔を置いて順にマレーシアに入国した。4人は13日の犯行直後に全員が出国した。警察はまた別の身元不詳の容疑者2人の顔写真も公開したが、彼らも容貌から見て“北朝鮮国籍”である可能性が高い。

 マレーシアに残されて17日に逮捕されたリ・ジョンチョル(47)は、昨年8月に入国しマレーシアで情報技術(IT)業者として仕事をするなど、家族と共に暮らしていた。19日、現地メディア<ザ・スター>は消息筋の話を引用して、リ・ジョンチョルが平壌(ピョンヤン)出身で北朝鮮の大学で科学・薬学分野を専攻し、2000年に卒業したことが把握されたと伝えた。リ・ジョンチョルが暮らしていたクアラルンプールのジャラン・クチャイラマ地域のアパート「ダイナスティーガーデン・コンドミニアム」は、家賃1500~2000リンギット(4~5万円)で、マレーシアの中上流層居住地域だ。逮捕当時、リ・ジョンチョルはマレーシアの外国人労働者に発行される“i-Kad”身分証を持っていたと伝えられた。

 警察はリ・ジョンチョルが捜査に協力していると明らかにした。警察は彼らの他に北朝鮮国籍の参考人リ・ジウ氏(30)の身柄も確保し調査中だ。

北朝鮮工作員、推定男性4人 
1月30日からマレーシアに入国 
化学専門家リ・ジョンチョルに接触 
殺害のやり方・場所などをテスト 
 
金正男を1年あまり前から観察 
出国日を犯行当日として実行指示 
 
2人の女性の接触も予め企画 
殺人に気づかないよう偽装 
犯行の後、連絡を絶ってしっぽ切り 
毒殺の企画から実行まで緻密

■ 1年前から準備?

 現地の報道などを総合すれば、彼らは1年ほど前から金正男の行跡を監視していたと見られる。現地メディア<ニュー・ストレーツ・タイムズ>は警察関係者の話を引用して「金正男殺害事件のプランナーは約1年前から金正男の動きと旅行パターンを追跡していたと推定される」と伝えた。IT関連事業をしていた金正男は、チャン・ソンテクの甥のチャン・ヨンチョルがマレーシア大使であった2010~13年にはマレーシアにしばしば行き来していたが、2013年にチャン・ヨンチョルが北朝鮮に召還され処刑された直後に途絶えた。金正男は2015年から再びマレーシアを訪問し始めた。

 容疑者は殺害手法と場所などをあらかじめ選んでいたと見られる。犯行直後に逃走した容疑者4人の主導で金正男を毒殺することを決め、化学と薬学の専門家のリ・ジョンチョルを共犯に選んだ可能性が大きい。現地メディアはリ・ジョンチョルが3カ月前から女性容疑者のドアン・ティ・フォン(29・ベトナム)とシティ・アイシャ(25・インドネシア)に接近したと報道した。彼らはマレーシアに一緒に旅行して親密になった後に、不特定の通行人を相手に「ドッキリカメラ動画」を撮ろうと提案し、犯行前日の12日には予行練習もした。

■犯行後の尻尾切り?

 犯行日時の13日午前8時59分、クアラルンプール国際空港第2ビル出国検査場の防犯カメラ画面を見ると、男性容疑者はこの日午前7時30分頃から、犯行現場から約50メートル離れた空港内の食堂「ピビクヘリテージ」に座って犯行場面を見た後に席を外した。彼らは犯行直後にトイレで服を着替え、犯行に加担した2人の女性を残して急いで現場を立去ったと伝えられる。犯行直後にフォンとアイシャもそれぞれ散った。

 警察関係者は「犯行はわずか5秒で終わり、その後フォンが慌てた様子で空港を立ち去る姿が防犯カメラに撮影されていた」と伝えた。フォンが犯行直後に到着したスカイスターホテルのマネージャーは「ホテル到着当時、非常に苛立っているように見え、ずっと自身の左手をこすっていた」と回想した。フォンは犯行当日の夕方、マスクを着けてホテルに向かう姿が撮影されていた。犯行直後に自身が殺人を犯したという事実を知り、その後は身分を隠すためにマスクを着けていた可能性が高い。犯行場所に人で混雑する空港を選択したのも、女性容疑者が殺人であることを気づかないようにためだったという推定が可能だ。

 ただし、リ・ジョンチョルが逮捕されれば今回の事件の背後に北朝鮮が登場するにも関わらず、“核心容疑者4人”だけが彼を残して逃げたことはミステリーだ。

クアラルンプール/パク・スジ記者、ファン・グムビ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/783248.html 韓国語原文入力:2017-02-19 20:35
訳J.S(2428字)

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