緻密な事実確認を経て慎重な報道をするのが日本のマスコミの長所だが、唯一例外がある。“敵国”である北朝鮮関連報道だ。13日、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の長男の金正男(キム・ジョンナム)氏が亡くなった後、日本のマスコミの誤報と“未確認情報”報道が相次いでいる。
金正男氏の突然の殺害のニュースが伝えられた翌日の15日午前、日本の共同通信は日本の政府関係者の話を引用して、今回の殺害に加担したと見られる女性2人が「すでに死亡した可能性がある」と報道した。金正男氏を殺害した主体が北朝鮮である可能性が高いという推定が出ている中で、飛び出してきたこの記事で日本はもちろん韓国も騒然とした。「北朝鮮工作員の仕業」という疑惑をさらに濃厚にするだけでなく、あたかもスパイ映画のように任務を遂行した工作員までを除去する北朝鮮体制の非情さを表わす報道だったためだ。だが、その日午後、容疑者のベトナム女性ドアン・ティ・フォン(29)がマレーシア警察に逮捕されて誤報であることが確認された。共同通信は16日にも2人目の容疑者が捕まった直後の午前11時50分頃、「逮捕された女性が韓国旅券を持っている」と報道し、韓国のマスコミが共同通信を引用して速報を流したが、わずか1時間も経たずに「インドネシア国籍」と訂正報道を出した。
事実確認が困難な“未確認情報”報道を1面に掲載する場合も多い。産経新聞は17日付1面に「複数の消息筋」を引用して「今回の事件が発生したことは、金日成(キム・イルソン)主席の血統を引く人物を擁立し亡命政府を樹立しようとする勢力と金正男氏が接触したためである可能性がある」と報道した。前日、朝日新聞も1面に「中国政府関係者」の話を引用して「2012年に金正男が北京で北朝鮮工作員と見られる人に襲撃されたことがある」と報道した。しかし、これらの情報は伝言の伝言だったり、専門家の発言を通じて「そのような可能性もある」という噂の水準だ。北朝鮮の記事でなければ、1面には使えない内容だ。日本のマスコミのこうした報道は、韓国の保守マスコミが片隅に配置した推測性記事を土台にしている場合がたびたびあるが、日本のマスコミが内容を追加して前進配置すると、これを再び韓国マスコミが引用報道して拡大再生産の悪循環過程を経たりもする。北朝鮮に対する日本大衆の嫌悪感と、北朝鮮報道に対する日本マスコミの過度な競争がこのような報道形態の背景にある。
読売新聞は17日、今回の事件を「北朝鮮偵察総局が起こしたと見られる」と断定して、「“女性”と“毒劇物”を使うのは北朝鮮工作員の手法」とまで報道した。