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[ニュース分析]外交も、安保も「トランプ式取引」

登録:2017-01-17 23:41 修正:2017-01-18 06:49
[トランピズムー世界を揺さぶる](1)グローバル外交 
 
新政権発足2日前 
「瞬間的な必要に応じて再交渉」 
米国の利益中心、冷酷な現実主義外交 
欧州同盟体制を揺るがし、中国と対立
11日、米ニューヨーク・マンハッタンのトランプタワーで開かれた記者会見で、ドナルド・トランプ米大統領当選者が取材陣を指名している=ニューヨーク/新華聯合ニュース

 「トランプについて分かるという人は信じるな。たとえその人がトランプでも」

 汎欧州シンクタンクである欧州外交評議会のジェレミー・シャピロ研究所長は、トランプ当選後にある寄稿文でこのように書いた。トランプの外交政策がそれほど「超不確実性」を帯びているという話だ。米国のドナルド・トランプ新政権が20日(現地時間)に発足するが、予測不可能性はあまり狭まっていない。「米国優先主義」と「米国を再び偉大に」に込められている米国利益中心の外交政策は、冷戦終結後の米国単独体制では経験したことのない「混沌」や地政学的な地殻変動を予告する。

■対外政策の基調は現実主義か

 それでもトランプの対外政策には基本的な一貫性はある。米政治史の権威であるアリゾナ州立大学のドナルド・クリックロウ歴史学科教授は15日、ハンギョレのメールインタビューでこれを「ヘンリー・キッシンジャー(元国務長官)の現実主義」と規定した。彼はトランプが選挙期間に「新孤立主義」のように見えるレトリックを多く使ったが、外交関連長官らは徹底的に現実主義者たちで構成したと分析した。クリックロウ教授は「同盟と協力しながらも敵とも共通基盤を探し、軍事的介入を警戒するが軍事的な力を通じて平和を維持し、必要であれば米国のパワーを行使するということ」だと説明した。

 ボストン大学のトーマス・バーガー国際関係学教授も14日、ハンギョレのメールインタビューで「トランプは外交政策の決定に取引的なアプローチを取っている」とし、「これは他国から最大限に多くの利益を絞り取ろうとするという意味」だと分析した。これによってトランプは伝統的友好国や同盟、敵という関係の代わりに「瞬間的な必要に応じて挑戦したり再交渉しなければならない関係として(国際秩序を)見ている」と分析した。

■ロシアとの関係改善

 トランプは最近、「冷戦後最悪」といわれる米ロ関係に対する改善の意志を確固たるものにしている。ロシアとの戦略的協力を通じて「イスラム国家」(IS)撃退とシリア問題の解決という業績を作りたいようだ。米ロ関係の改善は中国・ロシア関係を弱め、中国の牽制効果も付随的に享受することができる。

 しかし、これはロシアが希望する反対給付を与えることを前提とする。ブルッキングス研究所のセルゲイ・アレクサシェンコ先任研究員は最近「ロシア軍がウクライナから撤退する見返りに、米国は制裁を解除し、ウクライナのNATO加入は許可しない形になるだろう」と見通した。ウクライナに対するロシアの影響力を事実上認めるこのような取引は、米国が主導してきた欧州の対ロシア同盟体制を揺るがす恐れがある。

 イスラム教シーア派のシリアのバッシャール・アサド政権を認める形の米ロ協力は、スンニ派であるサウジアラビアのような伝統的な中東同盟に背を向けることになりかねない。これに加えて、トランプのイスラム嫌悪主義発言は、反米感情に油を注ぐことになり得る。

 ただし、ロシアに対する「トランプチーム」の立場がそのまま維持されるという保障はない。クリックロウ教授は「内閣にすでにジェームズ・マティス国防長官候補者など3人以上のロシア強硬派たちがいる」とし、「また、外交政策チームの大半が錐のような目を持った現実主義者だ」と話した。ロシアが米国の利益に協力しなければ、いつでも「パワー」を行使し得るという意味だ。

■対中国強硬路線と朝鮮半島

 中国の安価な製品の輸入と貿易赤字に対する不満に端を発したトランプの対中国観は、経済・貿易を超えて南シナ海・台湾・北朝鮮核問題など安保分野にまで強硬基調に突き進んでいる。トランプが中国の核心利益である「一つの中国」政策まで刺激し、トランプ政権の発足前から米中の衝突が激化しているかたちだ。

 米中間の戦線拡大がもたらす波紋の深さと幅は二つの問題にかかっている。第一は、中国に安保問題を提起することが貿易や北朝鮮問題でより多くの譲歩を引き出すための短期的な交渉レベルの戦略なのか、あるいは中国の浮上を防ぐための長期的な覇権争い的な性格なのかということだ。専門家らの分析は後者にだんだん近づいている。この場合、衝突の幅は予測できないほど大きくなる。

 第二は中国の対応だ。習近平体制の中国がトランプの仕掛ける戦いに屈服せず、少なくとも東アジア地域で米国との覇権競争に置き換える場合、衝突の波の高さはさらに大きくなる。トランプの意図が戦術的なレベルでも、結果は戦略的な不信と衝突へとつながるものだ。バーガー教授は「トランプは他の国々も自分を驚かせる方法で対応する可能性もあるということを知らないようだ」と指摘した。

 米中の緊張局面でトランプ政権が北朝鮮核問題を中国に対する圧迫用のテコに活用すれば、朝鮮半島の緊張指数は大きく上がる。中国圧迫のため台湾や南シナ海問題にまで韓国を関与させる可能性もある。米中間の緊張が高まるほど、韓国の外交的空間は狭まると専門家たちは懸念している。在韓米軍駐留費引き上げといった直接的な影響は「ジャブ」程度にすぎないのかもしれない。トランプの掛け値なしの「米国利益優先主義」、「強大国中心主義思考」、「一方主義」は、朝鮮半島を冷酷な試験台に押し上げている。

ワシントン/イ・ヨンイン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/779155.html 韓国語原文入力:2017-01-17 21:39
訳M.C(2406字)

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