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就職難の青年層に月3万円の「基本所得」支援を 韓国で議論が本格化

登録:2016-06-07 08:30 修正:2016-06-07 17:31

社会から排除の危機にある青年層へ
生計費の一部を支援すべき
年間13兆ウォンほどの予算が必要に
梨花女子大教授の提案が注目される

ソウル市麻浦区の大学の図書館閲覧室で学生が勉強している=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 「基本所得」を巡る議論が、不安定な労働世代とされる青年層に対する所得支援策を中心に活発に行われている。ソウル市と城南市が推進する、いわゆる「青年手当て」「青年配当」の政策も、低いレベルでの基本所得と見なせる。学界では最近、19歳から24歳のすべて青年に月額30万ウォン(約2万7500円)の青年基本所得を支給する政策提案も出された。

 イ・スンユン梨花女子大教授(社会福祉学)は今月3日、ソウル女子大で開かれた「批判と代案に向けた社会福祉学会の春季学術大会」で、「韓国の不安定な労働市場と社会手当」という発題を通じ、「現在の青年たちは、過去の青年世代と比較できないほど不安定な労働市場におかれ、就職難、低賃金、社会的排除の危機にさらされている」と報告した。さらにイ教授は「従来の政府の雇用対策だけでは青年の世代の所得不安定問題は解決されない。低賃金の仕事から抜け出せなかったり、労働市場から完全に離れることになる可能性が高いため」と指摘し、雇用と連動しない所得保障政策が急務と強調した。

19~24歳の青年の基本所得に関する政策方案//ハンギョレ新聞社

 統計庁の家計動向資料をもとに19~24歳の青年1人世帯の月の生活費を推定すると138万ウォン(約12万6000円、2014年基準)になる。しかし、同じ年度を基準にして、最低賃金で週40時間の全日制で働いた時の給与水準は109万ウォン(約10万円)に落ち込んでしまう。このためイ教授は、大きく三つの青年層の所得支援策を提案した。青年の最低賃金制度を設け生活費をまかなえるよう時給を引き上げる案(6640ウォン=609年)、就職した青年が受け取る賃金から不足分を賃金補助方式で渡す案、1カ月の生活費と最低賃金の差額の30万ウォンほどを「青年基本所得」として毎月支給する案だ。

 このうち青年基本所得方案は青年期にのみ提供され、適正所得の一部だけを支給する点で「部分基本所得」と見なすことができる。現在、65歳以上のすべての高齢者(上位30%は除外)に支給される基礎年金も似た性格の制度といえる。イ教授は19~24歳の青年に月額30万ウォンを支給する場合、年間12兆9千億ウォン(約1兆1845億円)ほどの基本所得予算が必要になるものと推定した。

 基本所得の概念は元来、国家がすべての構成員に基本生活を運営していけるよう現金を支給するものであり、仕事をしているかどうか、財産の多寡に関わりなく与えるのが特徴だ。韓国では青年失業者、非正規雇用労働者、零細自営業者などの不安定な労働者階級が年を追うごとに増えており、2000年代後半から議論が広がってきた。最近は、そのうち最も脆弱な青年層に対する所得支援が優先的に必要だとする主張が目立ち始めた。ソウル市と城南市の青年支援政策推進が、基本所得の議論をより活発にさせるきっかけになった。

 青年失業率は昨年9.2%になり、公式統計を取り始めた1999年以来、最も高かった。求職断念者などを含めた就職障害階層は121万人(今年3月基準)に達する。また、就業した場合でも所得が不安定な場合が多い。2015年8月基準で15~29歳の青年層の低賃金雇用(中間賃金の3分の2未満)の割合は28.1%であり、15~24歳の年齢層に絞ると、その割合は46.1%になる。

ファン・ボヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-06-06 22:55

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/747099.html 訳Y.B

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