請求権協定で韓国被害者への賠償は終結とみなす
請求権を一方的に放棄した中国には借財意識
1日、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)が中国の強制労働被害者に1人当たり10万人民元(約170万円)の和解金を支給したというニュースが、韓国でも波紋を起こしている。
三菱は同日、三菱重工業で強制労働をした3人の労働者に、1人当たり10万元を支給することを骨子とする和解協議書調印式を北京で開いた。 調印式に参加した三菱マテリアルの木村光・常務執行役員は歴史的責任を認め「深い謝罪の意」も明らかにした。三菱は今後、他の労働者と遺族も見つけ出し、同条件で和解を推進する計画だ。その他にも三菱は記念碑建設(1億円)と被害労働者の発掘(2億円)の事業も推進する。これを見守る韓国人被害者は、日本が中国と比べ韓国を差別していると受け止めるほかない。
■中国は交戦国、韓国は帝国の一部?
なぜこのような差が生じたのか。
第一に、当時の韓国と中国の労働者の法的地位がある。当時、朝鮮人は大日本帝国の一部として日本の国家総動員体制下にあった。そのため1938年に国家総動員体制となった後、初めは「募集」、次に「官斡旋」、最後は「徴用」という形で朝鮮の若者を日本に強制動員した。これは韓国の立場から見れば「自らの意思に反する強制動員」だが、日本の立場からすれば合法的な労働力の活用だった。
これに対し当時の中国人は、日本と戦争をする交戦国だった。交戦国の国民または戦争捕虜を日本に連れていき強制労働をさせたので、その差は大きいと日本では考えられている。
第二は、1965年の韓日請求権協定と1972年の中日共同宣言の差だ。韓国と日本が1965年に韓日協定を通じて国交を正常化し、日本は韓国に「独立祝賀金」の名目で無償3億ドル、有償2億ドルの資金を支援した。名目は独立祝賀金だが請求権の性格を持つものだった。これを通じて両国は、請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と宣言する。
しかし中国の場合は事情が異なる。中国は1972年の中日共同宣言を通じて両国間の国交正常化を行い、中国が戦争による被害や請求権を「一方的」に放棄した。日本はこの宣言で「中日間の請求権問題は解決された」という公式的な立場を維持しつつ、中国に対しては日本のために莫大な戦争被害を被りながら「無償で免除してくれた」という借財意識を抱いている。
日本のこうした認識は、1980年代以後に日本が中国に対し実施した莫大な政府開発援助(ODA)につながる。今回の三菱の決定もこうした認識の延長線にあると解釈できる。
最後に、韓国と中国の国力の差だ。三菱の場合、自らが過去に犯した中国人に対する“罪悪”を解決せずには、中国市場で企業活動を続けるのが難しくなる。そのため、昨年8月に三菱と被害者が一次「和解」に達したという知らされた時、菅義偉・官房長官は「中国の民間関係者と日本企業間の民事訴訟に対して政府がコメントすることは控えたい」として、事実上容認する姿勢を示した。
もちろん、韓国と中国の間に差があるからと言って、韓国の被害者が「賠償や和解は不可能」であることを受け入れねばならないと主張することはできない。被害者は積極的な法的闘争を続けてきた。勤労挺身隊として三菱の名古屋工場に強制動員されたヤン・クムドクさん(86)らは、1999年3月に名古屋地裁で強制労働に対する損害賠償を請求する訴訟を起こした。日本の裁判所は被害者が主張する事実関係は認めつつ「請求権問題は1965年の韓日協定で完全かつ最終的に解決された」として、2008年11月に最終敗訴判決を下した。この過程で企業側は被害者たちと調停で和解も可能という意思も明らかにしたが、日本の外務省の介入で挫折したと伝えられている。
挫折した被害者に変化の兆しが生まれたのは、2012年5月に韓国の大法院(最高裁)が「日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民支配と直結した不法行為による損害賠償請求権は、請求権協定の適用対象に含まれない」と判決を下してからだ。
■大法院、最終判決を引き延ばし
被害者は2012年10月、韓国の裁判所に再び訴訟を起こし、2014年4月の1審と先月24日の2審で相次ぎ勝訴した。大法院は最終判決をまだ出していない。過去の問題が韓日両国間の外交問題に発展し、両国関係に再び大きな負担となることを避ける狙いがあると見られる。
ヤンさんは昨年8月に東京を訪問し、「いかなる基準から見ても、私は強制労働をさせられた。朝7時半から一日10時間以上も殴られながら働いた。日本人たちとは業務も、食事も、トイレまで差別された。自分の命を賭けても、私がさせられたことは強制労働だと言わざるをえない」と話した。しかし、こうした差があるため韓国人被害者に中国と同じ方式が適用される可能性は低いと見られる。読売新聞は2日、「今回の和解を契機に韓国国内で賠償を要求する声が高まる憂慮がある」と指摘した。企業の立場としては、企業経営の「リスク」になる過去の問題は、いかなる方法でも解決させたいが、最終的には日本政府が認めないものと見られる。