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個人請求権消滅…「戦犯」企業の論理に従う韓国最大の法律事務所

登録:2016-03-18 07:26 修正:2016-03-18 09:17

1965年の韓日協定を強調
「個人請求権は消滅していない」という
大法院判決は違法と主張
「賠償要請は国家の信頼下げる」
日本の主張通り露骨な弁護

キム・アンド・チャン法律事務所//ハンギョレ新聞社

 日帝(日本帝国主義)時代の「戦犯」企業の弁論で被害者からの反発を買っている法律事務所「キム・アンド・チャン」が最近、大法院(最高裁)に提出した関連事件上告理由書で、「韓日請求権協定ですべての請求権は消滅した」とする日本政府の論理と同じ主張をしていることが分かった。キム・アンド・チャンは「政府が日本との協定を破るのは国家的な信頼を裏切る行為」と外交上の入れ知恵まで持ちだし、通常の弁論活動を脱しているとも指摘される。

 17日、ハンギョレが入手した同事務所の三菱重工業事件上告理由書によると、同事務所は「勤労挺身隊被害者の損害賠償を認めた原審の判決は、政府が締結した条約の趣旨及び内容に正面から反する判断であるとし、条約の効力を信頼して大韓民国に経済的投資を行なった被告のような外国企業に、事後に莫大な不利益を与えることになる。これは国家の国際的信用度に影響を及ぼす」と主張した。また同事務所は「1965年の韓日請求権協定の内容と異なり、今になって被害者たちが損害賠償を主張するのは、むしろ国家の信頼を下げることになる」と主張した。その上で「(三菱の賠償責任を認めた)原審の判決が大法院で確定する場合、日本が国際司法裁判所や国際仲裁などの手続きを通じて提訴することになれば、これまで司法が積み上げた判決の公正性および信頼度が大きく損なわれる恐れがある」と主張した。

 同事務所はこうした理由から、三菱重工業が勤労挺身隊被害者の女性らに賠償する必要はないと主張。 具体的には、三菱重工業は旧三菱とは別の法人であり責任を継承せず▽民事執行法は外国判決(2008年の日本最高裁の最終原告敗訴判決)の是非について実質的な再審査を禁止しており▽韓日請求権協定により個人請求権は消滅したことなどをあげている。同事務所は特に、裁判所は「一時的な世論」に基づき判断してはならないとも助言した。

 こうした主張は日本政府の主張そのものであり論議を呼びそうだ。日本の岸田文雄外相は昨年7月の衆議院特別委員会で「国際労働機関条約によれば、戦時中の徴発は強制労働の範囲に含まれないことになっている。また韓国政府は、この問題を個人請求権をめぐる法的問題に活用しないことを約束したことがある」と主張した。

 キム・アンド・チャンの主張は、外交的、経済的利害関係を理由に、戦犯企業の犯罪行為を処罰しないという論理に飛躍しかねないため、法曹界で批判的な声が上がっている。ある大手法律事務所関係者は「韓日請求権協定の解釈で両国間には争いがあるが、この協定が正しいから従うべきだと主張するのは、法曹の観点から簡単に納得できない」と指摘した。

 キム・アンド・チャンは、韓日請求権協定により個人請求権まで消滅されないとした2012年5月の大法院判決を違法と主張した。既存の大法院の判例を変更するには全員合議体を経ねばならないが、この判決は大法院判事4人で構成された小部判決だったため、手続き的に違法だというのだ。これに対しジャン・ワンイク弁護士は「判決は強制徴用被害者が日本企業を相手に起こした損害賠償訴訟の大法院の初の判断だったため、あえて全員合議体で判決を下す必要はなかった」と話した。

ソ・ヨンジ、ヒョン・ソウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-03-18 01:00

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/735631.html 訳Y.B

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