世界経済が原材料などの商品のみならず、資本と労働の過剰にも苦しんでいる。ウォールストリートジャーナルは、供給過剰に苦しむ世界経済が今後10年間、低成長、低インフレで低迷するデフレーションを体験すると見通した。
クレディスイス銀行によれば、現在世界経済の富は2000年の117兆ドルに比べ約263兆ドルに増え、貯蓄と資本の過剰供給様相を示している。 このような状況は利率を引き下げ通貨政策の効率性を蚕食している。労働力も過剰で、賃金も停滞している。 旧ソ連など社会主義圏の没落と中国の浮上で約10億人の労働力が新たに世界の労働市場に進入した状態だ。
米国の最大石油備蓄基地があるオクラホマ州クッシングの石油備蓄量は、先週4億8900万バレルまで上がり史上最高値を記録している。 綿花は全世界的に1億1千万ベール(綿花の取引単位・約80キロ)が備蓄されている。 これは米国が綿花の在庫量を発表し始めた1973年以来の最高値だ。 最近12カ月間、世界の原材料の価格指標である“S&P GSCI”は34%急落して、金融危機直後の2009年水準に戻った。
完成品在庫量も大幅に膨らんだ。 今年2月、米国内加工耐久材の全在庫は4130億ドルに急増した。 これも米国がこの統計を発表し始めた1992年以来の最高値だ。 全世界で自動車販売量が最も急速に増えた中国でも、2年6カ月ぶりに未販売自動車台数が最高に上がった。
需要不足で苦悶に陥った各国政府が、借金で景気を浮揚しようとしているため、負債も途方もなく積み上がっている。 米国の政府・企業・消費者負債は、2008年の17兆ドルから現在は25兆ドルに増えた。 負債が米国内総生産(GDP)に対する比率が165%から181%に増えた。ヨーロッパも同じく負債が国内総生産の180%から204%に、中国は134%から241%に増えた。
負債に苦しむ政府に代わって中央銀行の役割が大きくなった。米国連準と英国中央銀行は最近、国内総生産のほとんど25%に該当する規模で量的緩和政策を実施するなど、金融を緩和した。
最近のドル高は国際貿易環境にとってまた別の挑戦だ。自国経済が困難に陥り資金繰りが苦しいブラジル、ロシアなどが砂糖、コーヒー、原油などの原材料を以前以上に大規模に輸出している。ドル高のために自国原材料をより安価で輸出する余力が生まれただけだ。 最大石油輸出国であるサウジアラビアが、国際原油市場での自国持分を防衛するため減産に同意しないことも、最近原材料市場で見られる“身を切る競争”の一環だ。
『過剰供給の時代』(The Age of Oversupply)の著者ダニエル・アルパート(Daniel Alpert)は「経済学は(資源の)希少性に基づく。 過剰供給はありえないというのが古典的経済学の概念だ」と話し、現在の過剰供給経済は人類が一度も経験したことのない事態だと指摘した。