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原油価格下落、韓国経済に得か損か?

登録:2015-02-01 23:37 修正:2015-02-02 13:30
石油価格の急落にも国内外経済冷え込み
海底油田のボーリング場面。資料写真//ハンギョレ新聞社

企業経営が保守化したため販売・生産増大に連結せず
原油価格下落の効果は不透明
ロシア危機など弊害は直接的
雇用・所得増大方案が切実に求められる

 国際原油価格が連日急落している。現実には原油価格の下落は韓国のように原油輸入が多い国家にとっては得だ。 原油輸入額が減り、エネルギー関連費用が低下するためだ。 その結果、家計の実質所得増大や企業コストの節減につながり、消費の増大と生産および投資の増大を誘発する。

 だが、どうしたわけか国際原油価格が昨年6月の頂点に較べ何と60%近くも急落したのに、国内外の経済は冷え込んでいる。国際通貨基金も国際原油価格の下落で世界経済が0.3~0.7%程度成長する効果があると指摘したことがある。 だが、実際には今年と来年の世界経済成長展望はそれぞれ0.3%ずつ下方修正した。 韓国も同じだ。 韓国銀行もやはり原油価格の下落にともなう景気浮揚効果にもかかわらず、今年の韓国経済の成長率展望を当初の3.9%から3.4%に下方修正した。 もし原油価額下落による恩恵がなかったならば、世界経済や韓国経済の成長率展望は大幅に下方修正されたかもしれない。

 一般的に経済的影響は、原油価格下落の原因が需要側要因か、供給側要因かによって変わる。 需要要因、たとえば世界成長鈍化にともなう原油需要の減少が原因ならば、世界経済には不吉な兆候だ。 グローバル金融危機が端的な例だ。 金融危機によって世界経済が急降下し、一時バレル当たり150ドルに肉迫していた国際石油価格が30ドル台まで下落した。 反面、供給要因、すなわち産油国の増産などにともなう原油供給増加が原因ならば、ほとんどの世界経済は恩恵を享受する。もちろん産油国は輸出所得の減少で打撃が大きいが、世界経済の多数を占める原油輸入国が利益を享受するためだ。

原油価格下落の経済的影響、3つ経路。 //ハンギョレ新聞社

 国際通貨基金や韓国銀行など多くの専門家たちは、最近の原油価格急落を米国などの異例な原油生産増加とサウジアラビアなど中東産油国の市場占有率確保戦略にともなう供給要因の影響が大きいと評価している。 世界経済にはプラス効果が期待されるわけだ。

 しかし多くのことが常に望み通りには進行されないのが常だ。 明らかに供給要因が主導する原油価格の下落は、多くの世界経済に肯定的であっても、その恩恵は直接的というよりは相当な時差を必要とする。 そしてこのような恩恵が反映される経路の効力にも問題がある。

 実際、原油価格の下落は原価下落、実質所得増大、通貨政策の余地確保など三つの経路を通じて実物経済に影響を及ぼすという。 だが、最近の傾向を見れば、原価下落にもかかわらず、各種不確実性の流布と相まって企業経営が保守化され、販売価格の引き下げや生産増大にはつながっていない。 したがって家計も製品価格下落にともなう実質所得の増大効果を感じられていない。 その上、今はすでに世界的に金利が大幅に下がっている上に、これ以上いくら金融を緩和しても実物経済に吸収されえない一種の“流動性の罠”が憂慮されている状況だ。 したがって原油価格の下落で物価が下がっても通貨政策の余地は制約されている。

 このように原油価格下落の効果はまだ不透明な反面、原油価格下落の弊害はより直接的だ。 代表的な例がロシアだ。 ウクライナ事態にともなう西側の経済制裁に最大輸出源である原油価格の急落にともなう影響で、すでにロシアは危機に直面した。 1998年の経験に見るように、ロシア危機は今でも世界経済の最大不確実性の一つだ。 そしてベネズエラなど原油生産比重が高い他の産油国も同じだ。 このような不安心理が結局伝染効果を産んで、国際金融市場や世界経済全般に負担を負わせているわけだ。さらにデフレーションの悪夢が懸念されている今、原油価格下落が本格的なデフレーションの触媒になるという憂慮も大きい。

 韓国経済も事情は別段違わない。 原油輸入比重が輸入総額の20%に達する状況で、原油価格の下落で経常収支黒字が一層増えるという展望は出ているが、それも不況型黒字の影をより一層濃くさせていると言える。 家計負債の累増と企業経営の保守化、さらに不確実性の深化によって原油価格下落の好循環輪が短絡されているためだ。

 こうした中で韓国政府が「原材料価格下落→実質所得増大、消費活性化→成長拡大」の好循環を目的に、流通構造改善と価格競争活性化に焦点を合わせた「2015年物価政策方向」を出した。 だが、事実上原油価格や一部生活必需品の価格統制に重点を置いた今回の対策の実効性について懐疑的な声も大きい。 さらに一部では年末調整波動など“姑息な増税批判”をまぬがれるための自己救済策に過ぎないという指摘も出ている。 より根本的に雇用や所得を引き上げ、安定的消費を支えられる条件を拡充するための取り組みが一層求められている。

チャン・ポヒョン、ハナ金融経営研究所首席エコノミスト

韓国語原文入力:2015/02/01 20:27

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/676323.html
訳J.S(2195字)

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