2001年12月、日本の海上自衛隊の8100トン級大型補給艦「はまな」が、護衛艦「くらま」と「きりさめ」の2隻を率いて日本から7000キロ離れたインド洋に姿を現した。 敗戦以来、半世紀を超えて紛争解決の手段としての武力を使用せず防御だけに専念するという“専守防衛”の原則を守ってきた日本が、大型補給艦を日本の安保と特別な関係のないインド洋まで派遣するに至るまでにはそれなりの迂余曲折があった。
2001年に9・11テロが発生するとジョージ・ブッシュ米国大統領は「テロとの戦争」を宣言し、アフガニスタンに侵攻した。 軍事同盟体である北大西洋条約機構(NATO)は、集団安全保障の原則に則り参戦を決め、憲法上の制約から集団的自衛権を行使できない日本は米国を支援するために同年10月テロ対策特別措置法を作り米国に対する“後方支援”に乗り出した。
はまなの派遣は、日本が国連安全保障理事会(安保理)決議にともなう平和維持活動(PKO)ではない“他国の戦争”に初めて自衛隊を派遣した事件であるため、日本国内で大きな議論を呼んだ。 当時日本が一手に引き受けた任務は、米国など参戦国に対する補給と輸送、いわゆる“協力支援活動”(後方支援)だった。 その一方で日本は、自衛隊が直接戦争に巻き込まれないよう多様な安全装置を用意した。 自衛隊の活動地域を「公海など(それまで)戦闘行為が起きず、活動期間中にも戦闘行為が行われないと認められる所」に限定し、日本が支援する補給品の対象として敵を攻撃するのに直接使われる武器・弾薬(発進準備中の戦闘機に対する給油を含む)を除いてきた。
そのために自衛隊ができることは、戦場であるアフガニスタンから遠く離れたインド洋で米国、英国、パキスタンなど支援を要請する国々に燃料と水を供給することしかなかった。 日本防衛省の資料によれば、自衛隊は2003年12月から2007年10月まで、米国などの艦船とヘリコプターに対して861回の給油、128回の給水を行った。 議論はあったが、この程度が前後70年間になされた自衛隊海外派兵の伝統的な姿だった。
近い将来、集団的自衛権を行使できるようになる
自衛隊はどのように変わるのか
安倍晋三首相が積極的に推進してきた日本の安保法制改定作業は九分通り稜線を越えているものの、これに対して韓日両国の市民社会が把握している内容は相変らず充分でない。 安倍政権が試みている安保法制改編が、朝鮮半島を越えて東アジアと世界情勢に及ぼす少なくない波及効果を考えてみる時、こういう“理解の空白”は非常に憂慮される。
日本政府は昨年7月、集団的自衛権行使を骨格とした閣議決定をした後、先月13日からその後続措置として共同与党である自民党と公明党の「安全保障法制整備のための与党協議」を週1回のペースで進めている。 与党協議を通じて改定議論がなされる対象は、自衛隊法、周辺事態法、武力事態対処法など現在日本の安保態勢を支えている14の法案だ。 連立与党は今月20日まで法案の大きな枠組みを定めた後に5月初めには法改正案を確定して国会に提出する計画だ。 連立与党が衆参両院の過半数を占めているため与党協議の決定がそのまま法律として確定する可能性が非常に高い。 戦後70年間継続してきた日本の専守防衛原則が崩れ、日本が再び“戦争できる国”になる大変革がもうわずか2カ月もすれば終えられるということだ。
現在、与党協議でなされている議論の方向は大きく二通りある。 第一は、集団的自衛権の行使、第二は自衛隊の海外活動の地域的範囲と業務の役割を大幅に拡張する周辺事態法などの法律改正作業だ。
先ず集団的自衛権と関連しては、与党協議で激しい議論が行われてはいない。 昨年7月に閣議決定がなされる前に両党間に11回にわたる激しい論議の結果、概して意見が収束された状態であるためだ。
昨年確定した閣議決定によると、日本が集団的自衛権を行使するためには武力行使のための「新3要件」を満足させなければならないとしている。 すなわち、(1)我が国、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきことだ。日本政府は新しい3要件という安全装置があるので集団的自衛権を“限定的に容認”しただけで、諸外国のように全面的に容認してはいないと主張している。 日本政府は今後集団的自衛権を行使できる事態を「存立事態」(新事態)と命名し、これに合わせて自衛隊法と武力事態対処法などを改定する予定だ。
集団的自衛権を行使することになれば
日本はどんな活動ができるか?
5月には70年ぶりに“戦争可能国”
安倍政権、集団的自衛権の準備に拍車
「武力行使3要件」主張しているが
該当事例は軍事的に非現実的
米国と対等な“血の同盟”構築が本音
「日本周辺」に制限していた後方支援地域
緩和する周辺事態法の改定が核心
“いつでも派兵”できる恒久法の準備も
朝鮮半島有事事態には米軍支援を名分として
自衛隊が朝鮮半島に上陸する危険が具体化
日本政府は昨年5月、日本人を乗せている米国艦船の防護、武力攻撃を受けている米艦船の防護、米国に向けて飛んでいるミサイルの迎撃など、集団的自衛権を行使することになる8種類の具体的事例を紹介したことがある。 しかし、このうち現在議論されているのはイランが日本の原油輸送路であるガルフ(ペルシア湾)を封じ込める状況を念頭に置いた「機雷掃海活動参加」のみだ。
理由は明白だ。 日本政府が当初集団的自衛権の行使の事例として言及した内容が軍事的に現実的でないためだ。 一例として、米国は自国の軍事装備を動員し外国人を待避させることはなく、現在のミサイル防御(MD)システムの能力では日本で米国に向かって打たれる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を迎撃することはできない。 そのため、小泉純一郎内閣当時、日本政府の安保政策を総括した柳澤協二元官房副長官補は、昨年出した『亡国の安保政策』という著書で「安倍政権の最大の特徴は、安保政策を説明する時に見せる抽象性、非論理性」とし、結局彼が願っているのは「米国と共に“血を流す”ことを通じて、対等な“血の同盟”を構築し、米国に言うべきことは言う関係を作ること」と酷評した。
小泉政権期に「平壌(ピョンヤン)宣言」を引き出した田中均 日本総合研究所国際戦略研究所理事長は、現在唯一議論されている機雷掃海活動に対しても「ガルフが封鎖されたという事実だけで新3要件を満足すると見ることは困難だ」という見解を明らかにした。 この事実は現在、集団的自衛権の行使が安倍政権の一次的関心事ではないことを示している。
現時点での集団的自衛権関連与党協議の核心は、朝鮮半島有事事態に備えて作られた周辺事態法の大幅改定と多国籍軍支援のために自衛隊派兵を自由に行えるようにする恒久法(一般法)の制定だ。 日本政府はこの作業を通じて、これまで自衛隊の海外支援活動を防止してきた種々の安全装置を急速解体しようと試みている。
日本政府は1990年の第1次湾岸戦争以後、自衛隊の海外派兵を拡張する方向で法改定を繰り返してきた。 このような流れの中で1992年には日本も国連安保理決議による平和維持活動に参加するとして平和維持活動協力法を制定したのに続き、1993年第1次北朝鮮核危機を体験した後には、米日安保協力指針を改定(1997年)し、朝鮮半島に有事事態が発生した時は自衛隊が米国の後方支援を担当することにした。 このような米日同盟の変化は2年後の1999年に制定された周辺事態法に含まれることになる。
先月20日、第2次与党協議の時に日本政府が提示したのはまさにこの周辺事態法大幅改定案だった。 これを見れば、日本政府の本音をそっくり読み取れる。 現行の周辺事態法には、自衛隊が米軍を後方支援する地域的範囲を日本周辺を意味する“周辺事態”に限定しており、日本が提供する補給品には武器・弾薬と発進準備中の戦闘機に対する給油を除くなど、種々の安全装置が用意されている。
しかし、日本政府は昨年7月の閣議決定で、自衛隊が後方支援できる地域を現在の「公海など(これまで)戦闘行為が起きておらず、活動期間中にも戦闘行為が起きないと認められる所」から「現在戦闘行為が起きていない所」に緩和した。 続いて先月20日には、日本の安保に重要な影響がある場合には「日本周辺」という地域的制限にこだわらず支援対象国を米国からそれ以外の国に広げて、弾薬・武器なども補給できるということを骨格とする改定案を明らかにしている。
これとは別に、アフガン戦争ではテロ対策特別措置法(2001年)、イラク戦争ではイラク特別措置法(2003年)のように米国などの派兵要求があるたびに一時法を作って対応してきたこれまでのやり方を変えて、政府が必要と判断すればいつでも多国籍軍など他国軍を支援できる恒久法を作ることにした。 その他に、国連平和維持活動中にも出動警護、任務遂行のための武力使用など、これまで禁止してきた武力の使用を許容する方針を明らかにしている。 このような計画が全て施行されれば、米日同盟は周辺東アジアを越えて全世界を舞台に、肩を並べて血を流す同盟の直前段階まで格上げされるわけだ。 現在、不足しているのは自衛隊が米国と共に銃を取ることができず、後方支援に留まるという点のみだ。 朝日新聞はそのために9日付社説で「政府・自民党の狙いは自衛隊の活動範囲を広げ、できる限り他国軍並みにすることだ。視線の先には将来の憲法改正や国防軍への衣替えがあるのだろう」と指摘した。
これによって朝鮮半島と東アジアではどのような変化が発生するか
自衛隊の軍事的役割拡大は、朝鮮半島と東アジア情勢を一層不安定にしかねない。 一例として米国は1993年1次北朝鮮核危機の時、日本に武器・弾薬の提供、米艦船の防御、民間空港・港湾の利用など約1500項目の支援を要請したことがある。 日本政府は当時、武力の使用を禁止した憲法9条を理由にこれを拒否し、結局米国は軍事行動をあきらめる。 しかし、日本の安保法制改定により自衛隊が米国の武力行使と“事実上”の一体化を成し遂げれば、朝鮮半島周辺有事事態の時、日本の発言力が強まるのはもちろん、今後この地域に対する米国の軍事的判断に否定的な影響を及ぼす可能性が高まる。 中国を刺激し中国の軍事大国化をさらに煽る可能性も高まる。
韓国にとってさらに現実的な問題は、朝鮮半島有事事態の時、自衛隊が朝鮮半島に上陸する危険がさらに具体化されたという点だ。 以前まではインド洋など、戦闘地域から遠く離れて後方支援だけに専念していた自衛隊が「現在、弾丸が飛んでこなければ」戦争が起きている地域まで接近して米国と多国籍軍に武器と弾薬を支給できることになるためだ。 すなわち、東海の公海上に遠く離れて米国に対する“後方支援”に留まっていた自衛隊が、これからは米軍支援という軍事的必要性を口実に朝鮮半島に直接上陸することもありうることを強く暗示しているわけだ。 また、この過程で自衛隊が攻撃を受ける場合、それを自国に対する武力行使として受けとめ、個別的自衛権を行使することになることもありうる。 これは韓国と国益が必ずしも一致しない日本という侮れない相手が朝鮮半島有事事態の当事者になることを意味する。 韓国にとっては文字どおり災難的状況になるが、戦争が勃発すれば自国軍隊に対する作戦統制権も行使できない韓国政府が、米国が“作戦上の効率性”を理由に自衛隊の上陸に対する同意を要求してくる場合、これを拒否する可能性は現在としては高くないものと思える。