イスラム経スンニ派の過激派武装勢力イスラム国(IS)に人質として囚われていた日本人ジャーナリスト後藤健二氏(47)をめぐる外交交渉は、結局最悪の悲劇となって幕を閉じた。今回の事態は、イスラム国を撃退しようとする米国など国際社会の努力と「集団的自衛権」を行使しようとする日本の安倍政権の安全保障政策などにも、複雑で微妙な影響を与えるものと思われる。
今回の人質事件がイスラム過激派勢力の既存の人質殺害と異なる点は、人道的支援を行った国まで報復対象にした点である。中東の紛争と相対的に距離を置いてきた韓国や日本などがイスラム過激主義勢力の標的にされたのは2004年に集中したが、それは派兵など直接的な軍事行動に出たからだった。 2003年3月に始まった米国のイラク侵攻に韓国の「ザイトゥーン部隊」と日本の自衛隊が派遣され、このため韓国のキム・ソンイル氏(死亡当時33)、日本の香田証生氏(当時24)がイスラム過激主義勢力に囚われ、犠牲になった。
しかし、今回は日本がイスラム国を狙った米国など西側諸国の軍事作戦に直接関与していないのに、日本の人質が殺害された。今回犠牲になった湯川遥菜氏と後藤氏は、それぞれ昨年8月と10月、イスラム国の人質として囚われた。先月17日、日本の安倍晋三首相がエジプトのカイロを訪問し、イスラム国のために発生した難民支援のために2億ドルを支援するという方針を明らかにした直後、イスラム国は後藤氏とと湯川氏を殺害するという最初の脅迫メッセージを打ち出した。その結果イスラム国は、自分たちを狙った様々な活動に参加しようとする国は、誰でも残酷なテロの対象となり得るという宣伝効果を収めた。このような事態の展開は、イスラム国を相手にした軍事作戦はもちろん、人道支援への参加を検討してきた国にも大きな影響を与えるものと見られる。イスラム国が日本人を狙った追加テロを警告したのも、主に中東原油にエネルギー源を依存しており、中東での活動が避けられない日本政府に難題を加えることになった。
一方、今年5月以降、自衛隊法など具体的法案を提出する予定である安倍政権の安保政策にもかなりの波紋を呼ぶと予想される。後藤氏の殺害映像が公開された直後の1日午前、安倍首相は閣僚会議と国家安全保障会議(NSC)を次々と開き「国際社会がテロと戦うために、毅然として日本の責任を果たす」と強調し、その後発表された緊急声明では「中東の食糧・医療などの人道支援をさらに拡充する」という一節まで盛り込んでいた。
安倍首相のこうした立場は、今回の悲劇を自らが進めてきた集団的自衛権行使のための法案整備に積極的に活用しようとする意図があるものと解釈される。実際彼は今回の事態が発生した直後に、数回にわたって「今回のように海外で日本人が危険にさらされても、現在は自衛隊が持っている能力を生かすことができない。今回の定期国会期間中に安全保障関連の法整備を進めていく」とし、海外自国民救出のための自衛隊の活動範囲を拡大するという意思を明らかにした。
しかし、逆に今回の事態は平和憲法9条を守ろうとする日本の進歩勢力が団結するきっかけになる可能性もある。特に自衛隊の海外活動範囲と内容を拡張する法改正は、連立与党である公明党を含め、少なくない社会的勢力の反対にぶつかると予想される。この日、後藤氏の母親が明らかにした「悲しい憎悪が連鎖反応を起こしてはならない」という主張が日本社会に深く広い共鳴を呼ぶかもしれない。
韓国語原文入力:2015.02.01 20:48