『ハンギョレ』は14日から20日まで行われた産業通商資源部出入り記者によるフィンランド使用済核燃料最終処分研究施設訪問に参加した。 フィンランドは世界で初めて使用済核燃料の最終処分場の敷地を選定した国だ。 フィンランドは使用済核燃料をどのように管理するか、処分敷地をどこにするかなどの公論化作業に30年の歳月をかけた。 フィンランドの道程はまだ続いている。 愚かに思えるほどだがフィンランド政府は例外なき公正性と透明性を原則として“安全”問題に接近した。 このようなフィンランドの社会的合意過程に注目して、使用済核燃料臨時保存空間の飽和時点が差し迫った韓国社会に投じるメッセージを調べた。
世界最初の核燃料処分敷地である
エウラヨキ市のオルキルオト島に
研究施設を建設し、地盤適合調査中
“研究期間120年のうち既に10年経過”
核廃棄物政策は政権交替と無関係
独立的な安全監督機関「STUK」が
国民に正確な情報を提供し
地方自治体の拒否権を尊重したため衝突は無い
“政策推進力は住民との疎通”
「この施設が研究用途にのみ使われるということですか?」(記者)
「はい、このようにして問題がなければ建設許可を受けるのです。 建設許可がおりて永久処分が始まっても、研究は継続します。 研究期間は120年で、既に10年が過ぎました。」(オンカロ研究調査責任者)
17日、フィンランド ヘルシンキから南西側に240キロ離れたエウラヨキ市のオルキルオト島。 ここには使用済核燃料の永久処分研究施設である「オンカロ」がある。 オンカロはフィンランド語で“隠蔽場所”という意味で、最終処分場に適合してから地下の岩盤特性を研究する所だ。 深さ455メートルに掘られた長さ9.5キロ(幅5.5メートル、高さ6.3メートル)のトンネルだ。 設計は永久処分施設と同じになっている。 急な傾斜面のトンネルを車で回りながら降りて行くと、最も低い地下455メートルの地点から水平なトンネルが現れる。 このトンネルの両側面から再び洞窟が多数あけられている。 洞窟の入口に降りて歩くと、すぐに10メートル間隔で直径1.7メートル、深さ8メートルの穴が現れる。 使用済核燃料を埋めて永久処分する空間だ。
当初は白樺しか生えていなかったこの地で、2004年に掘削が始まり、10年間で作られたこの巨大な“地下洞窟”を見ると、単純に研究施設としてだけ使われるとは信じ難い。 オンカロの研究調査責任者であるヤンネ・ライホネン氏は「ただの研究施設に過ぎない」と話した。 彼は「ここの地層は20億年以上にわたり地震がなかった所で、地盤が安定的な場所」だと説明した。
使用済核燃料は原子力発電所で燃料として使った後に残るウラニウム燃料棒だ。 強い放射線と高熱を放出する危険物質である高レベル核廃棄物だ。 専門家たちは使用済核燃料の放射能が消える期間を約30万年と見ている。 原子力発電所に反対する市民団体は、30万年間に人類の歴史が断絶する場合、永久処分施設の危険性を後代に伝える方法はないと憂慮している。
使用済核燃料は原子力発電所から取り出して発電所の臨時保存施設内の水槽に数年間漬けておく。 放射性物質の流出を遮断して、使用済燃料棒の高熱を冷ますためだ。 その後の行方は色々な方案があるが、最終的には人間から完全に隔離されたところで永久処分しなければならない。 だが、危険性のため永久処理場のある国はまだない。 フィンランドとスウェーデンの二か国だけが処理場の敷地を選定した状態だ。
韓国は2016年から一部の原子力発電所での臨時保存空間が満杯状態になる。 数十年間にわたり閉じ込めておく中間保存をどのようにするかが当面の課題だ。 低レベル核廃棄物(原子力発電所で使用された保護服や手袋など)の処理場である慶州(キョンジュ)廃棄物処理場の敷地選定に20年もかかったことを考えると、高レベル核廃棄物に対する長期ロードマップは足元に火がついてようやく動きだしたようなものだ。
■フィンランドの公論化“30年の道程”
フィンランドでは現在4基の原子力発電所が稼働中で、1基が更に追加で建設中だ。 原子力発電への依存率は32.6%(2012年末基準)に達する。 フィンランドは世界で最初に使用済核燃料処理場の敷地を選定した国だ。 それがオルキルオトだ。
フィンランドでの使用済核燃料の処分準備は1970年代後半に原子力発電所を初めて試運転した時に始まった。 ヘルコ・プリート雇用経済部エネルギー課政策審議官は「初めて原子力発電所を稼動する時、核廃棄物についても同時に議論した点に注目しなければならない。 1980年代初めに全体的な日程表を組んで、長期的な計画に従って動けるようにした」と話した。
1978年、深層処分に関する妥当性の研究を始めたフィンランド政府は、1983年に使用済核燃料の永久処分を決め、敷地選定のために全国を対象に地質調査を始めた。 最初の段階で327地域を選定した政府は、環境要件と運搬、人口密度などを反映した環境影響評価を経て、1987年に5地域を選び出し敷地特性調査を実施した。 ユハニ POSIVA(使用済核燃料管理機関)諮問委員は「地方自治体の承認がなくとも政府が敷地選定調査をできるよう法的に保障されている。とはいえ政府と地方自治体が大きな衝突を起こしていないのは、政府が敷地を最終選定しても該当地方自治体が拒否権を行使できたため」と話した。
フィンランド政府は、1993年から7年間にわたる敷地詳細調査を経て2000年にオルキルオトを最終選定した。 2001年5月、フィンランド国会は使用済核燃料をここに最終処分する政府案を通過させた。 当時199人の国会議員のうち賛成は159人、反対3人、棄権37人だった。
まだ先は長い。 オンカロはオルキルオトに作る最終処理場の実証研究を遂行するために作った研究施設だ。 地下岩盤の特性研究とともに使用済核燃料の最終処分技術を実際と同じ条件で開発する予定だ。 オンカロの研究結果に基づいて2012年に最終処分施設建設許可を申請し、来年1月には建設許可の承認可否が決定される。 計画通り進めば2020年に運営許可を受けた後、2022年に最終処分手続きを踏むと見ている。
ヤナ・アボルラティ雇用経済部エネルギー課首席顧問は「フィンランドの核廃棄物政策は、長期的政策と戦略を樹立して政権交替と関係なく推進された。 大きな枠組みの原則を決めて、建設と運営許可を下す段階では該当地方自治体の拒否権を明確に尊重した。 30年間にわたる政策推進の最も大きな力は国民との透明な疎通だった」と話した。
■独立的規制機関として信頼を得る
フィンランドでの使用済核燃料の公論化過程で注目すべき点は、監督機関であるストゥク(STUK)の役割だ。 フィンランドの原子力行政システムを見ると、許可と規定に関する責任は雇用経済部が、安全管理は放射線・原子力安全規制機関であるストゥクが担当する。 ストゥクは原子力関連規制・管理機能の他に、立法草案の作成と規制機関に対する職権制裁など強大な権限を持っている。 ストゥクの最も重要な原則は独立性だ。 リスト・パルテマ ストゥク核廃棄物規制担当官は「ストゥクは“安全”を扱う機関であり、政治的介入は受け入れない。徹底して専門家集団によって意志決定がなされる」と話した。
ストゥクのもう一つの役割は、国民に放射線と原子力の安全に関する情報を透明に提供することだ。 ストゥクの独立的地位に対する信頼が大きいので、国民はストゥクの情報を信じて判断の根拠とする。 使用済核燃料処分施設の敷地選定などの過程でストゥクは地域住民らと疎通する窓口の役割を果した。 主要意志決定などの基本情報はオンラインのホームページに公開して、地域住民と一年に一回以上の討論を行ってもいる。
この過程でのストゥクの最も重要な原則は、特定の方向を設定せずに、第三者として中立的な情報提供機能だけを果すということだ。 リスト・イサクソン ストゥク広報官は「私たちは安定性イシューに対する正確な情報を提供する。 ストゥクは特定の意見を持って国民を説得することはしない。 ある情報の正誤を判断するのは地域住民の役割だ。 ただし、多くの国民は原子力発電所のような複雑な懸案を敬遠する傾向があるので、ストゥクの規制行為が一人ひとりにどんな影響を及ぼすのかを明確に説明する責任が私たちにある」と話した。 ストゥクは疎通の最優先対象が原子力産業界ではなく地方自治体だという事実を明確にし、情報提供もやはり地方自治体の要求事項に基づいてなされる。
■エウラヨキの選択で得たものと失ったもの
エウラヨキは人口約6000人の小さな街だ。こちらにはオルキルオト原子力発電所1、2号基が運営中で、3号基が現在建設中だ。 エウラヨキでは1970~80年代に初めて原子力発電所が建てられた時も、核廃棄物は地域外に送り出されるものと考えられていた。 だが、1980年代初めに使用済核燃料の国外輸出入を禁止する法が制定され、使用済核燃料問題に対する地域議論が本格化した。
エウラヨキ市議会はオルキルオト最終処分場を誘致した当時、議会は20対7で賛成意見が上回った。 ペサ・ヤロネン市議会議長は「最も重要な考慮事項は、やはり安全性だった。 環境影響評価など政府が提供した資料に対する信頼があった。 私たちの地域に原子力発電所があるという責任感も影響を及ぼした」と話した。 だが、エウラヨキが最終処理場を誘致した背景には、雇用創出など地域に及ぶ経済的利益も影響を与えたと見られる。
安全性を経済的利益と対等交換をしたのではないかという憂慮に対して、エウラヨキ側は首を横に振った。 しかし、財政事情が良くなったのは事実だ。 元々農業基盤都市であったエウラヨキは、原子力発電所ができた後に脱農業化が急速に進んだ。 エウラヨキはオンカロ建設に投入された労働者たちから最近10年間に3000万ユーロ(約40億円)の税収を収めた。 エウラヨキの年間予算は5000万ユーロ(67億円)だ。ハリ・ヒティウェ エウラヨキ市長は「原子力発電所と使用済核燃料最終処分場の誘致で非常に大きな雇用創出効果を起こした。 観光客も多くなった」と話した。