尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の秘書室に、一時は易占術師の行政官が勤務していた事実が確認された。尹大統領がコンジン法師や天供(チョンゴン)氏などの易占術家に助言を求めていただけでなく、最初から易占術師を大統領室内部の職員として採用し、国政の運営を補佐させていたということだ。
14日のハンギョレ21の取材と情報提供を総合すると、命理学者のK氏が、2024年下半期に大統領室の市民社会首席第3秘書官室の行政官として採用された。朴槿恵(パク・クネ)元大統領時代のいわゆる「ドアノブ権力」として名を挙げられたチョン・ホソン秘書官が率いる第3秘書官室は、ウェブサイトからの嘆願の管理や宗教界との意思疎通などを担当する。ここでK氏は公式には「少数宗教」を担当していたことがわかった。K氏は現在、大統領室を辞めているものと把握されている。
■H易学研究所所長、議員室補佐官として政界と縁
K氏は命理学を学んだ易占術の専門家だ。K氏は四柱命理学を基盤とする四柱適性相談士であり、命理心理相談士として命理学に関する本を出版し、「命理学でわかる子どもの進路と適性」などの講演も行ってきた。大邱(テグ)や慶尚北道地域では易占術でかなり名を知られているK氏は、H易学研究所という組織の所長も務めたという。H易学研究所はK氏の経歴に書かれているだけで、法人登記も確認できず、ポータルサイトで検索しても検索結果に出てこない。
大統領室に易占術師がなぜ必要だったのだろうか。これについて、K氏が大統領室の職員の四柱、そして大統領夫妻との相性を調べていたという証言が出てきた。元尹錫悦候補陣営のシン・ヨンハン政策総括支援室長はハンギョレ21に「K氏は公式には少数宗教担当だが、それに付加して大統領室に勤める職員や新たに採用する職員の四柱で占い、尹大統領とキム・ゴンヒ女史との相性が合うかを確認していたという情報提供を受けた」と述べた。
K氏が易占術師として尹大統領の重要な政治日程を決めるうえで助言していたという主張も出ている。忠清北道で活動するある易占術師はハンギョレ21に「大統領室がお祓いの儀式に関連する様々なことを進めていたと理解している」としたうえで、「巫俗に関連したこと行うには、命理学などを学び『擇日暦』を読めなければならない。擇日暦はその人の四柱による運命に応じて、いつ重要なイベントをすべきか、どの日を避けるべきなのかを知るためのものだ。K氏が国政の重要な式典の日を決める役割を果たしたのだろう」と主張した。
K氏は大邱や慶尚北道地域の政界で活動し、中央政界と縁を結んだとみられる。K氏は第18代議会(2008年~2012年)と第19代議会(2012年~2016年)において、大邱に選挙区がある国会議員の補佐役を務め、大邱東区庁の政務秘書や大邱のある区議会の政策支援官などの仕事を務めたと、メディアのインタビューで明らかにしたことがある。この他にも、2018~2019年に大邱地域のS世論調査会社の社内取締役を引き受けていた事実が確認された。K氏はハンギョレ21の電話インタビューで「大統領室で行政官として勤務したのは事実か」という質問に「今は違う。(大統領室から)離れた」と答えた。K氏は「大統領室でどのような役割だったのか」などの追加の質問には答えなかった。
■尹錫悦夫妻の周辺に絶えない「巫俗」論議
尹大統領夫妻の周辺では「巫俗」の論議が絶えなかった。コンジン法師、天供氏、ムジョン僧侶など数多くの巫俗関係者が話題になった。尹大統領と巫俗の縁は30年を超える。キム・ゴンヒ女史は「ソウルの音」のイ・ミョンス記者と行った「7時間通話」で、ムジョン僧侶を尹大統領が20代のときから知っていたことを明らかにした。尹大統領がムジョン僧侶を全面的に信じ、「司法試験をあと3年間はがんばりなさい」という話に従い、「あなたは検察官になる運命」という話を聞いて検察官になったと述べた。尹大統領にキム女史を紹介したのがムジョン僧侶で、その縁で2人は結婚することになったとも述べた。
「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏は直接尹大統領の陣営に参加したりもした。チョン氏は2022年1月の当初から、当時は「国民の力」の大統領候補だった尹錫悦候補の選挙対策本部の組織である「ネットワーク本部」に顧問として事実上常駐し、人材招聘や主要な意思決定などに関与したことが判明している。チョン氏は、2018年の地方選挙時に公認を与える対価として予備候補から違法な政治資金を受け取った容疑で、2025年1月13日に検察に起訴された。
■尹錫悦大統領「正法に迷信などと言ったら『名誉毀損』」発言も
尹大統領は任期中を通して「メンター」である天供氏の言うことを聞いて国政を運営していたという疑いを持たれている。英国のエリザベス女王の弔問不参加は、天供氏が尹大統領に直に助言したためだという疑惑が提起されており、大統領室の龍山(ヨンサン)移転や迎日湾(ヨンイルマン)の埋蔵石油の可能性の発表などは、尹大統領がこのような措置を発表するより前に、天供氏のユーチューブに事前に話が出ていたという疑惑もある。尹大統領が天供氏をどう思っているのかについては、2021年の大統領選のTV討論会で如実に表れた。2021年10月、国民の力の大統領選の予備候補討論会で尹候補は、ユ・スンミン候補に天供氏についての質問を受けた際、「正法(天供)はそのような人ではない。正法ユーチューブをみてみよ。正法には従う人が多い。正法に迷信などと言ったら名誉毀損になる可能性がある」と言い、腹を立てる様子をみせた。尹大統領夫妻が天供氏を個別に訪問した事実もこの日明らかになった。
これ以外にも、尹大統領が大統領候補だった2021年10月、「王」の字を手の平に書いた状態で国民の力の5回目の大統領選予備候補討論会に出席し、物議を醸した。また、キム女史は2006~2008年の国民大学テクノデザイン専門大学院に在学中に、四柱に関する論文を3編も執筆した。
キム女史と尹大統領が政治的な困難に直面するたびにどうすべきかの助言を命理学者のR氏に求めたというR氏の当事者としての陳述も、2024年11月付のハンギョレ21の報道で確認された。当時の報道でキム女史は「ブランドバッグ授受事件」と「ドイツモーターズ株価操作事件」などの自身の司法リスクが相次いで発生した2023年12月、R氏に連絡して「私は刑務所に行くんですか」と聞き、助言を求めたりした。
最大野党「共に民主党」のミン・ビョンドク議員は「尹大統領が巫俗を根拠に要人の採用を行ったという想像が、今回の情報提供と証拠によって事実であると示された」としたうえで、「このような政権を文明社会の国家の正統な政権と称することはできない」と述べた。