米商務省は、「CHIPS及び化学法」(半導体法)に則り米国内に半導体生産施設を建設する企業が補助金を申請する際、全般的な投資資金調達策など一般的な経営情報のみならず、半導体の「収率」(無欠陥製品比率)など敏感な営業機密まで提出するよう要求した。サムスン電子など投資企業の経営情報を詳しく把握し、「超過利潤」が出た場合補助金を返還させる根拠にしようとしているとみられる。
米商務省は27日(現地時間)、米国内に半導体生産施設を建設する企業が補助金を申請する際に提出しなければならない情報に対する「詳細指針」を発表した。それによれば、補助金申請企業はまず投資場所、規模、資金調達策など投資と関連した情報を提供しなければならない。
商務省はさらに「財務モデル」という名称で生産施設の詳細な運営見通しを提出することを要求した。これには四半期ごとの施設稼動率、ウェハー生産量、収率、製品の種類別予想価格・売上高を書かなければならない。また、生産費測定のために経営者・技術者など四半期ごとの職群別人件費、会計・マーケティング・物流・法務・研究にかかる費用なども具体的に要求した。窒素・酸素・水素・硫酸など生産に用いる物質、電気・水・天然ガスの使用コストなど、運営費に関連する内容も全て報告しなければならない。
商務省はこれに先立って、補助金支給対象のキャッシュフローとバランスシートを調べると述べていたが、一般的な財務諸表水準の情報を超えて、生産施設の運営全般に関する企業の内部情報まで詳細に公開するよう要求したのだ。商務省はこうした資料が「補助金の規模と形式、条件の評価と設定だけでなく、投資の成功可能性、財務構造、経済的利益評価に使われるだろう」と説明した。彼らはまた、見通しは一貫して合理的な基準により推算しなければならないとし、この情報を追跡・連動・調整できるようエクセルプログラムにして提出するよう要求した。企業内外の事情によって変わる損益展望をシナリオごとに提示せよという注文もした。
商務省は先月28日、390億ドルにのぼる半導体投資補助金と関連した投資意向書の受付を開始し、1億5千万ドル以上の補助金を受領した企業の場合、利益が予想値を超過すれば補助金の75%以内で返還しなければならないという方針を公開した。補助金返還のために企業が提出した利益見通しと実際の支出・実績などを比較・検証するものとみられる。それでも半導体企業が最高機密に挙げる収率まで公開を要求する理由は明らかではない。
商務省はこれと共に、労働力開発に関して「適切な投資、雇用、訓練、雇用維持、新技術教育、人材多様性」のための戦略を提出するよう求め、97ページに及ぶ別途指針を出した。この指針によれば、「貧困層の就職と職業訓練プログラムをはじめ、労働力を訓練するためにより高い水準の教育をするよう地域教育・訓練機関と約定を結ばなければならない」という条件も掲げた。
結局、サムスン電子やSKハイニックスなどが補助金を受けるためには、収率などの営業機密を米国に詳しく提供し、生産人材教育にまで幅広く責任を負わなければならなくなる。商務省は、21日に公開した「ガードレール」(投資制限装置)では補助金を受ける企業が中国国内での生産拡大幅を10年間で5%を超えてはならないとした。結局、補助金を受けようとする韓国企業は予想外のとんでもない足かせを受け入れざるを得なくなった。米国に先端半導体生産施設を建設し補助金を受けようとする企業は31日から、その他の半導体生産施設と後工程施設を建設しようとする企業は6月26日から申請書を出すことができる。
米国の要求に対し、韓国の半導体メーカーは公式な立場は控えながらも「やり過ぎ」という反応だ。ある半導体企業の関係者は「半導体生産のための素材・装備はもちろん、収率も社内でも一部だけが共有する敏感な情報だ」として「これを外部に公開することは困難だ」と話した。