米政府高官が、中国内に生産施設を持つ韓国の半導体企業も今後、半導体装備の輸入が難しくなるかもしれないと述べた。この発言は米国への投資計画を明らかにしたサムスン電子とSKハイニックスの補助金申請手続きが始まる28日(現地時間)を控えて出たという点で、注目を集めている。韓国企業に米国への投資を促すと同時に、中国での生産に制限を置く可能性を示唆することで、さらなる圧力をかけている格好だ。韓国企業にとっては、半導体市場の悪化で業績不振に陥る中、地政学的不確実性まで高まるわけだ。
米国商務省のアラン・エステベス次官(産業安全保障担当)は23日(現地時間)、ワシントンで開かれた韓米経済安全保障フォーラムで、サムスン電子とSKハイニックスに対する中国向け半導体輸出統制1年猶予が終了した後の措置に関する質問に「企業が生産できる半導体水準に上限(cap on level)を設ける可能性が高い」と答えた。中国内にある韓国企業の半導体工場に対し、これ以上の先進工程の進展を図れないよう制限する可能性を示唆したわけだ。
米商務省は昨年10月、DRAMは18ナノメートル(10億分の1メートル)以下、NAND型フラッシュは128段以上の生産装備を中国内のメーカーに販売するためには許可を受けるように義務付けた。ただし、サムスン電子とSKハイニックスに対しては1年の猶予を設けた。サムスン電子とSKハイニックスはそれぞれ中国の西安、無錫、大連でDRAMとNAND型フラッシュを生産している。米国のラムリサーチやAMDなどから装備を輸入できなければ、先進工程に切り替えるのが不可能になり、競争力を失う可能性もある。
エステベス次官はまた「中国が我々を脅かす力を身につけることを阻止する過程で、我々の同盟の企業に被害を与えたくない」とし、猶予を延長する可能性も残した。匿名を希望した半導体業界関係者は「制裁による米国の利益が明確ならば(猶予の終了も)あり得るが、依然としてメモリー半導体を輸入に依存しなければならない状況で、韓国企業にまで制裁を拡大した場合、米国が得られるものはない」と語った。中国内の韓国企業の工場に対する制裁を実行に移すよりは、米国への投資を促すための発言とみているのだ。
また、米政府は「CHIPS法」に基づき、28日から自国内に半導体生産施設を構築する企業から補助金の申請を受け付ける予定だ。また、これらの企業に今後10年間、中国への投資拡大を制限する細部基準(ガードレール)も示す見通しだ。
韓国企業はガードレールの内容に神経を尖らせてきた。これまで非メモリー半導体(28ナノメートル以下)に対する制限はあったが、韓国企業の主力製品であるメモリー半導体に関するものはなかった。先進工程まで制限の範囲に含まれた場合、国内企業は米国と中国の二者択一を迫られる可能性もある。
国内企業は韓国政府がうまく対応することを期待している。ある企業関係者は「経済的な問題ではなく政治や安全保障とも関連している。企業としては政府に頼るしかない状況だ」と話した。