本文に移動
全体  > 経済

「30年間1位の資産大国」日本、経常赤字国に陥るか

登録:2022-08-16 10:41 修正:2022-08-16 11:15
[チョ・ゲワンの経済判読] 
「輸出大国」「対外資産富国」の日本 
42年ぶりに経常収支の赤字を懸念 
昨年末から月間経常赤字が頻繁に発生 
 
貿易収支、10カ月連続で赤字 
350兆円の海外資産利子・配当による黒字も 
もはや貿易収支の赤字相殺は難しくなる 
 
「アベノミクス」10年のもう一つの裏? 
「円安・経常収支の悪化、相互に増幅」
8月9日、日本の東北地方に降った大雨で、青森県鰺ヶ沢町の交差点で車が水に半分ほど浸かっている/聯合ニュース
チョ・ゲワンの経済判読//ハンギョレ新聞社

 世界3~4位の名目国内総生産(GDP)を算出する伝統的な「輸出大国」であり、過去30年間世界1位の対外純資産(資産-負債)経済である日本が今年、42年ぶりに年間経常収支赤字を出すという懸念が出ている。円安と輸入原材料価格の高騰の中、貿易収支の赤字幅が日増しに拡大しているためだ。過去数十年間、経常収支の黒字を牽引してきた対外純資産部門の「第1次所得収支」(海外受取利子・配当)の黒字でも、貿易赤字を相殺するのが難しくなっているという分析だ。「日本が慢性的な経常赤字国に陥る恐れがある」という憂鬱な展望まで台頭している。経常収支は、国家経済のファンダメンタルズ(基礎体力)を示す代表的な指標だ。

 日本財務省が8日発表した国際収支動向によると、今年上半期の日本の経常収支は3兆5057億円の黒字を記録した。前年同期に比べ63.1%もの急減を示し、上半期では2014年以来最も黒字の規模が小さい。日本では昨年末から円安と共に経常赤字への懸念が最大の経済イシューとして浮上してきている。月間で見ると日本の経常収支は昨年末から頻繁に小幅な赤字を出している。昨年12月(-3千億円)に続き、今年1月(-1兆2千億円)に赤字を出し、6月に再び1324億円の赤字を記録した。韓国銀行は「国際原材料価格の上昇などで日本の貿易赤字幅が拡大し、時に月間経常赤字を出している」と説明した。経常収支は、貿易収支に加え外国との投資取引を示す「第1次所得収支」(利子・配当所得など本源所得収支)およびサービス収支(海外運送運賃および旅行など)で構成される。

 年間で日本の経常収支(黒字の最高値は2010年の2208億8千万ドル)は1981年以降41年間、一度も赤字を出したことがない。2021年(会計年度2021年4月~2022年3月)の経常収支は12兆6442億円の黒字だったが、2020年に比べ黒字幅が22.3%(3兆6231億円)減った。2017年(2031億6千万ドル)以降、黒字規模は毎年減少傾向にある。ただ、韓国と比べればまだ経常収支の黒字額が多い。昨年の年間経常収支の黒字額は、ドル基準で日本は1424億9千万ドルで、韓国(883億ドル)よりはるかに大きい。

 経常収支の縮小を招く要因としては、輸出入の貿易収支(通関基準)での大規模な赤字が挙げられる。昨年、日本の年間貿易収支(-1兆6507億円)は7年ぶりに赤字を記録した。昨年8月に赤字に転換して以来、今年6月(-1兆1140億円)まで10カ月連続赤字となり、今年上半期も7兆9241兆円の赤字(輸出45兆9378兆円、輸入は53兆8619兆円)となった。半期基準で史上最大の貿易赤字だ。円相場が24年ぶりの最低水準に下落したうえ、主な輸入品である原油、天然ガス、食糧の価格が急騰し、貿易赤字を増大させた。日本の製造業は、1990年代初めの日本経済のバブル崩壊後、輸出競争力が徐々に衰退し、これに伴い2010年代から貿易赤字を出す年が多くなった。

 これまで貿易赤字にもかかわらず経常黒字基調を維持してきた秘訣は、過去30年間維持してきた「世界1位の資産富国」日本を象徴する、2020年現在で357兆円にのぼる対外部門の純資産だ。最近、国際通貨基金(IMF)が発表した各国の対外部門報告書によれば、日本の純対外投資資産はドル基準で2021年3兆7480億ドル(日本の国内総生産の75.9%)で、韓国(6600億ドル・国内総生産の36.4%)よりはるかに多い。この純資産で稼ぐ海外の利子・配当金などの「第1次所得収支」(本源所得収支)で経常黒字を牽引している。

 日本はバブル崩壊前まで30年以上続いた貿易黒字を基盤に、米国など世界各地で不動産や証券を買い入れるなど、巨大な直接・間接投資に乗り出したが、2010年代からこの莫大な海外投資資産から着実に生まれる利子と配当所得で貿易赤字を相殺する特有の国際収支構造を形成してきた。昨年、日本の貿易収支が7年ぶりに赤字を出したにもかかわらず、経常黒字を出したのも、第1次所得収支の黒字(21兆5883億円)が2020年に比べ14.7%増えたおかげだ。日本の第1次所得収支は年間約20兆円に達する。

 しかし、今年に入って急激な円安と国際原材料価格の急騰現象が重なり、貿易赤字の規模が第1次所得収支でも相殺できない水準になり、経常収支まで揺れているのだ。日本経済の専門家らは、今年の日本の経常収支が1980年以来42年ぶりに赤字を出す可能性があると見込んでいる。日本経済新聞は独自分析の結果、今年の円相場が平均120円、国際原油価格が1バレル=110ドルの場合、日本の経常収支はマイナス9兆8000億円になると予想した。

 経常赤字危機は、政策的に円安を図ってきたいわゆる「アベノミクス」の10年の裏側だという分析も出ている。2013年3月に日本銀行総裁に就任した黒田東彦氏は、アベノミクスを指揮してきたが、円の価値を下げて日本製品の輸出競争力を高め、量的通貨緩和で消費・投資を活性化すると同時に、国内物価上昇率を2%に引き上げ、20年余りのあいだ日本経済を苦しめてきたデフレを終息させるということが目標だった。円はグローバル経済危機のたびに米ドルと共に代表的な安全資産とみなされ、通貨価値が高くなる傾向を見せてきたが、今年に入ってからは様相が一変し、暴落傾向が続いている。4月中旬に20年ぶりに1ドル=128円を超え、いわゆる「黒田ライン」と呼ばれる支持線(124円)を超えた。今年7月のひと月で1ドル=136.7円とさら円安が進み、2021年の年間平均為替レート(109.9円)より30円近く下落した。韓国を含む東アジア地域に通貨危機が襲った1998年当時(年平均1ドル=130.7円)よりも下落した。

 韓国銀行東京事務所は最近の円安の流れについて「(アベノミクスで)円安が日本製品の輸出拡大を牽引するという認識が長期間続いてきたが、日本の製造企業の海外での現地化戦略が増え、日本経済でサービス業の比重が拡大し、またグローバルインフレ圧力も増加するなど経済環境が変わり、最近になって円安が主に輸入物価を上昇させる要因として作用するという否定的な側面が浮上している」と評価した。円安が貿易収支と経常収支の悪化を招き、経常収支赤字への懸念が再び円安を増幅させる悪循環に陥っているという話だ。UBS証券の青木大樹チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)は「日本は今後、慢性的な経常赤字国になるだろう」と語った。

チョ・ゲワン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1054792.html韓国語原文入力:2022-08-15 17:40
訳C.M

関連記事