米国のドナルド・トランプ大統領は2日、様々な国と地域を対象に「相互関税」を課すことを発表した。これはトランプ大統領が「解放の日」と呼んだ関税措置で、国ごとの10~49%の税率は世界の金融市場に深刻なショックを与えた。重大な影響に各国が対処するなか、最も速く強硬に反応した国は中国だった。中国の外交部と商務部は繰り返し「最後まで戦う」との旗印を掲げ、「目には目を」式の対応が非常に明白だった。これについて、次のような見解を提示する。
1つ目に、今回の米中関税戦争において、米国は中国に既存の20%の関税に加えて追加で34%の相互関税を課し、中国も同様にただちに米国製品に34%の関税を課すと発表した。さらにトランプ大統領が50%関税を追加すると、中国も50%の追加関税を課すと発表した。9日午後(米国現地時間)、トランプ大統領は中国を除く国について、「相互関税」を90日間猶予すると発表した。中国製品の相互関税率は125%に引き上げ、中国も11日夕方、米国製品について、追加関税を84%から125%に修正した。相互に関税を引き上げる状況は、ほとんど教科書的な「チキンゲーム」だ。言い換えると、「核戦争級」と呼ばれる今回の関税戦争の核心は、やはり米中関係だ。
2つ目に、「トランプ2.0」であるだけに、米中戦略競争も2.0時代に突入した。中国は初めからトランプ大統領の関税戦争を、「経済」ではなく「政治」問題と規定した。今回の「相互関税」をみると、米国が地政学的な経済圧力で中国を包囲しようとしている事実は明らかだ。米国は、中国企業の「生産地洗浄」国であるベトナム、そして中国と密接な関係があるカンボジアにも高い関税を課した。この2つの国は、真っ先に「和解」を要請して米国との交渉を希望したが、このような姿は、中国の立場としては単純な関税問題ではなく政治問題に映った。注目すべき点は、中国はトランプ大統領の当選直後から、多種多様なシナリオを設定して反撃手段をリスト化し、最悪の状況に備えていたことだ。これがまさに、習近平国家主席が継続して強調してきた「最低限の考え方」から「極端な考え方」への転換だ。中国がすみやかに反撃措置を発表し、経済的利益を犠牲にしてでも米国に対する抑止力を維持しようとする理由でもある。
3つ目に、現在のトランプ大統領は、関税戦争の範囲を縮小し、「全方位攻撃」の状況を避け、中国を孤立させようとしている。トランプ大統領は圧力を強化し、習近平主席が先に譲歩することを望んでいるが、中国は繰り返し「最後まで戦う」というシグナルを送っている。これは習近平主席の指示に従ったものとみられ、退く余地はほとんどない。一方、体制が異なる米国をみると、トランプ大統領は有権者の圧力、メディアの批判、党内および野党の異論に直面しなければならない。さらに重要なのは、「相互関税」発表後、元々はトランプ大統領を支持していた資本家でさえ警告を発し、米国の負債と経済の脆弱性はこれを耐えるのは難しいという点だ。このような側面をみると、今回の「チキンゲーム」では米国が先に牌を投げたが、習近平主席の持つ牌の方が、トランプ大統領より確実に優位にある。
最後に、トランプ政権就任後の各種措置は、米国の利益を過度に中心に据えている。国際的には、敵国であっても同盟国であっても「無差別攻撃」を行ってきたため、国際社会の投資信頼や同盟国の対米依存度が大きく弱まることになりうる。これは中国が隙を突くチャンスになった。そのため、最近は多くの西側メディアが、「米国をふたたび偉大に」(MAGA)というスローガンが「中国をふたたび偉大に」(MCGA)に帰結されるとみている。しかし、われわれが最も懸念していることは、もしトランプ大統領がさらに強硬な技術規制や関税によってでも中国を押さえ込むことができない場合、次の手段として何を持ち出すかだ。それは地政学的および戦略的な圧力手段に転換され、このとき台湾はまさにその牌の核心の位置に置かれることになる。
王信賢|台湾国立政治大学国際関係研究センター所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )