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急騰する原油価格、韓国経済の各所で赤信号

登録:2022-05-09 05:55 修正:2022-05-09 08:32
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わかりやすい金融の話 | 国際原油価格の急騰
ロシアのウクライナ侵攻の影響で国際軽油価格が急騰し、韓国のガソリンスタンドの軽油価格も高値が続いている=2022年3月27日ソウル市内のガソリンスタンドの様子/聯合ニュース

 2021年秋、1リットルあたり1500ウォン(約150円)水準だったガソリン価格は、2022年に入り2000ウォン(約200円)を超えるなど、天井知らずに値上がりした。軽油価格も急騰し、貨物運輸業者はますます厳しい状況に陥っている。韓国は石油を全面的に輸入に依存しており、国際原油価格の上昇が生産と消費者物価にそのまま反映されざるをえない構造になっている。韓国銀行によると、最近の国際原油価格の急騰は、需給不均衡と地政学的リスク、投機性資金の流入などの要因が複合的に作用したものだと分析されている。

 実際、コロナ禍以降に萎縮した景気が、ワクチン供給の拡大などで早期に回復し、原油と石油製品の需要が増加した。全世界レベルでのエネルギー種別(2020年)の消費をみると、石油は31.2%を占める。石炭(27.2%)、天然ガス(24.7%)、水力(6.9%)、原子力(4.3%)などが後に続き、自然エネルギーに分類される太陽光と風力などは5.7%にすぎない。

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地政学的リスクも上昇要因

 供給の側面にも石油価格の上昇要因がある。2020年に国際原油価格が30%以上下落したことで減少(-6.1%)した全世界的な原油生産の回復が遅れたためだ。さらに、世界の原油生産の約12%を占めるロシアがウクライナに侵攻し、地政学的リスクが強まったことも、もう一つの上昇要因になった。

 原油は埋蔵地が一部の地域に限定されており、中東、米国、欧州北部の国家で主に生産されている。現物と先物などの取引市場が形成されている。中東地域で生産され取引されるドバイ原油(32%)が最も代表的な油種だ。その他には、米国西部のテキサス地域とカナダなどで生産され取引されるWTI原油(26%)、欧州北海地域で取引されるブレント原油(19%)などがある。生産割合を国別にみると、米国(18%)、サウジアラビア(12%)、ロシア(12%)、カナダ(6%)、イラク(5%)などの順になる。

 そうして生産された原油は、中国(14%)、インド(5%)、日本(4%)、韓国(3%)などのアジアの国家で約36%が消費される。米国(20%)など北米地域で24%、ロシア(3.3%)、ドイツ(2.3%)など欧州で19%、サウジアラビア(4%)など中東地域で約9%が消費される。石油消費は、自動車・航空・船舶など輸送用で60%、石油化学17%、産業用エネルギー7%、家庭用エネルギー6%などで利用される。

 原油先物市場は、原油の変動リスクを相殺するために、1983年にニューヨーク商業取引所(NYMEX、WTI原油)、1988年にロンドン国際石油取引所(ICE、ブレンド原油)、2018年に上海国際エネルギー取引所(INE、ドバイ原油および中国産)などで先物市場が開設され、取引が行われている。ニューヨークとロンドンで大部分の取引が行われる寡占体制だ。原油先物はリスクの相殺手段として開設されたが、豊富な流動性が流入し、取引量は世界全体の原油需要(1億バレル)の数十倍を超える。

 コロナ禍以降に低金利が続き、高収益を狙った投機取引が増えたことも、国際原油価格の変動性が大きくなり価格が上昇した要因として作用したと評される。本末転倒といえる。

 韓国は石油輸入の依存度が高いため、国際原油価格の変動は、常に物価に大きな影響を及ぼす要因として作用した。国際原油価格の上昇により、ガソリン(前年同期比27.4%)、軽油(37.9%)、灯油(47.1%)などの石油類の価格が大幅に上がった。工業製品(消費者物価指数加重値、約35%)でも価格上昇の勢いが目立った。物価が急騰し消費が萎縮するスタグフレーション(景気不況にもかかわらず物価が上がり続ける現象)への懸念も出ている状況だ。

 韓国政府は、消費者の費用負担を減らすために当面の対応策を発表した。2021年11月から20%下げていた油類税を、2022年5月からは過去最大水準となる30%へと下げた。ガソリン1リットルあたり約820ウォン(約85円。内訳は、交通・エネルギー・環境税529ウォン(約54円)、走行税138ウォン(約14円)、教育税79ウォン(約8円)、付加価値税10%など)の油類税が課せられるが、油類税を30%引き下げると、個人が負担する費用は1リットルあたり約250ウォン(約26円)低くなる。営業用貨物車やバス、沿岸貨物船などの公共交通や流通業界の負担を緩和するために、軽油にも補助金を支援することにした。庶民の生計支援のために、タクシーや小商工人などが主に利用する車両用ブタン(LPG)も、税金を3カ月間減免する。韓国銀行は、2021年下半期から政策金利を0.25ポイントずつ3回(0.5% → 1.25%)引き上げた。金利を追加で引き上げる可能性も高い。

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中長期的に原油への依存度を下げるべき

 米国など国際エネルギー機構(IEA)加盟国は最近、石油備蓄の放出を推進している。IEA加盟国は2022年3月、6000万バレルの石油備蓄の放出に合意したことに続き、4月には1億2000万バレルの石油備蓄を追加放出することを決議した。韓国も米国(6000万バレル)と日本(1500万バレル)に続き3番目に大きな規模となる1165万バレルを放出することにした。米国の3月の消費者物価指数は8.5%上昇し、1981年12月以来最高値を記録したことで、米FRBが政策金利を早期に引き上げると予想されている。

 政府当局と韓国銀行は、原油高が韓国経済に及ぼす否定的な影響が最小化されるよう、緻密に対応しなければならない。長期的には、自然エネルギーの拡大などを通じて、原油依存度を下げていかなければならないだろう。

キム・ヨン|金融専門家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1041914.html韓国語原文入力:2022-05-08 10:25
訳M.S

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