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懸命に稼いでも30%は借金返済に…韓国の30~40代、使える金なし

登録:2022-04-18 02:44 修正:2022-04-18 08:53
[ハンギョレS]チョン・ナムグの経済トーク 
増えた家計負債、内需不振の泥沼 
 
30~40代の世帯主の所得の3割が借金返済に 
住宅購入などのために巨額の負債抱え 
金利の急上昇で返済負担増 
消費余力の下落が内需不振招く
金利上昇で打撃を受けている家計が少なくない中、韓国の各市中銀行は最近、再び家計向け融資で競争を繰り広げている/聯合ニュース

 韓国の市中銀行はこのところ、家計向け融資の拡大競争を繰り広げている。加算金利を下げたり特別優遇金利を適用したりするなどのやり方で貸付金利を引き下げたり、融資限度を緩和したりしている。銀行の立場からすると、貸した金が貸し倒れたり延滞が増えたりしない限り貸せば貸すほど利益が増えるが、今年は3月まで3カ月連続で家計融資が減少したことから、融資営業に積極的になっているのだ。

 韓国銀行と金融委員会の資料によると、金融圏全体の家計融資は今年1月に7000億ウォン(約720億円)、2月に3000億ウォン(約309億円)減少し、3月には3兆6000億ウォン(約3700億円)も減少した。金融監督当局は今年、家計向け融資の伸び率の限度を4~5%とすることにしているが、このように融資が減少しているため、銀行が融資営業を展開しても全く干渉していない。

30~40代の元利金負担、すでに30%超え

 家計向け融資が減少しているのは、住宅担保融資の減少が原因ではない。住宅担保融資は1月に前月より2兆9000億ウォン(約2980億円)、2月に2兆6000億ウォン(約2670億円)、3月には3兆ウォン(約3090億円)増えている。信用貸付を中心としたその他の融資が大幅に減り、家計融資の減少を牽引しているのだ。3月にはその他の融資が前月より6兆6000億ウォン(約6790億円)も減少している。返済が多かったということだ。

 金融委員会は、融資減少の原因として融資金利の上昇、借主単位の総負債元利金返済比率(DSR)規制の拡大実施、住宅取引量の低下などを原因にあげる。何よりも金利の上昇が貯蓄誘引を強め、融資誘引を弱めている。物価上昇と昨年11月の金融通貨委員会の決定を皮切りとした3回にわたる韓国銀行の政策金利引き上げは、市中金利を大幅に引き上げた。3月の指標はまだ出ていないが、2月の金融機関の加重平均金利動向を示した韓国銀行の資料によると、銀行圏の家計融資加重平均金利(新規取扱額)は3.93%にまで上昇している。2020年12月には年2.79%だったものが1.14ポイントも跳ね上がっているのだ。

 家計向け融資の急増は金融システムを揺るがしかねない。代表的な例が2003~04年のクレジットカード事態だ。カード会社は低い条件でカードを乱発し、カード利用者はカード代金を返済するために他のカードを使うという方法を用いてまでカードの使用を増やした。その結果、2003年のカード利用代金の延滞率は30%に迫った。カード代金を期限までに返済できずに債務不履行に陥った人は一時400万人を超えた。

 クレジットカード事態の収拾後、家計向け融資は住宅担保融資の増加とともに再び増え始めた。昨年末現在の家計信用(家計向け融資+販売信用)残高は1862兆ウォン(約192兆円)だが、2013年末の1019兆ウォン(約105兆円)からわずか8年で843兆ウォン増えていることになる。年平均増加率は10.4%に達する。この間も家計負債の増加の危険性を警告する声は非常に強かった。しかし、家計融資の延滞率がそれほど高くないせいで、劇薬処方にまではつながっていない。

 金利の上昇とともに家計向け融資の増加が弱まるなら、心配はすべて解消されるのだろうか。答えはそれほど簡単ではない。このかん急激に増加した負債のせいで、金利上昇期に大きな打撃を受ける家計が少なくないためだ。金融資産を多く保有している家計は金融資産の利子収入も増えるので、それほど心配はない。金融資産を処分して借金を返済してしまってもよい。しかし純負債の多い家計は、利子増加がまるごと負担になる。

 2010年から統計庁、金融監督院、韓国銀行が共同で行っている家計金融福祉調査は、韓国の家計負債がどのように変化してきたかを追跡できるようにしてくれる。家計の仮処分所得に元利金返済額が占める割合をみると、2012年には19.5%だったものが、2020年には25.3%に増えている。実のところ、元利金返済額の割合は2015年に26.6%にまで急増したものの、2016年には22.7%へと3.9ポイントも下落している。その年、金融監督当局が安心転換融資を導入し、猶予期間中または満期一括返済予定だった負債を分割返済に切り替えるなど、家計負債を構造調整したのだ。だがその後、仮処分所得に元利金返済額が占める割合は再び上昇した。

 世帯主の年齢ごとに見ると、30代と40代の世帯で元利金返済の負担が非常に大きい。30代世帯主では、2018年に32.6%で30%を初めて突破し、2020年には34.8%にまで跳ね上がった。40代世帯主は2020年に31.6%で30%を超えた。2021年も家計負債が大幅に増えた上、 金利まで上昇したことで、その割合はさらに高まっているはずだ。

 金融監督当局は今年から、借主個人のDSRが銀行の場合は40%(第2金融圏は50%)を超えないように規制している。しかし世帯平均が30%を超えていれば、すでに40%に迫っている世帯は少なくないだろう。負債の多い家計を危険に陥れる最大の変数は、担保となっている住宅の価格の大幅な下落だ。負債を返済するために、または金融会社が貸付金を回収するために、我先にと家を売る事態が起きれば、破局は避けられない。だが、雪の積もった木の枝がいつ折れるかは、正確には予測できないものだ。そのようなことが起こる前に、負債の増加にブレーキをかけねばならない。

借金は多いのに日増しに重くなる利子負担

 だが破局は避けられたとしても、家計負債の元利金返済のせいで家計の消費力が低下し、経済が内需不振の泥沼に陥ることは避けられるだろうか。シム・ヘインとユ・ドゥジンが2017年に韓国証券学会誌(第46巻1号)に寄稿した「家計負債と国内消費:実証分析および金融政策的示唆点」と題する論文によると、家計負債は流動性の制約を緩和したり、金融資産を増やしたりして消費を増加させることもありうるものの、家計負債が大きく増加すれば家計の元利金返済負担が重くなり、消費を減少させる。

 実は、韓国経済は内需不振が固定化して久しい。民間消費の伸び率は2005年から2017年まで一度も経済成長率を上回ったことがない。最低賃金の大幅な引き上げなどに支えられ、2018年には名目賃金が大幅に増え、民間消費の伸び率は3.2%に達した。経済成長率(2.9%)を13年ぶりに上回った。しかし、その1年で終わりだった。新型コロナウイルス大流行の影響もあり、その後の消費の伸び率は成長率を再び下回っている。今後は流れを変えることがいっそう難しいとみられる。大幅に上昇した住宅価格、その家を購入するために金を前倒しして使ってしまった家計が、利子負担のせいで改めて財布のひもを締めざるを得ない時が来つつある。

チョン・ナムグ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1039171.html韓国語原文入力:2022-04-16 08:29
訳D.K

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