2日、ソウル外国為替市場でウォン・ドルレートは前日の終値に比べ9.20ウォン上昇(ウォン価値下落)の1ドル=1265.1ウォンで取り引きを終えた。1ドル1300ウォンへと向かいつつある水準をめぐり、市場では新型コロナウイルス禍以降の韓国経済のファンダメンタルズ(経済の基礎体力)を考慮した安定的なウォン水準の基準線を再評価する必要があるとの見方も登場しつつある。
2008年の金融危機以降、ドルが1300ウォン台になったことは一度もない。最近のドルに対するウォン相場は、コロナの影響で金融・外国為替市場が乱高下した2020年3月19日(終値は1285.7ウォン)以降、最も低い水準だ。ウォンの水準を再検討する必要があるとの見方は、主要通貨に比べればウォンの下げ幅はむしろ小さいという評価がひとつの背景となっている。ウォン・ドルレートの最近の最高値である4月28日(1272.5ウォン)を基準とすると、主要6通貨に対するドルの価値を表すドルインデックスは、昨年末に比べ8.1%上昇している。同じ期間の相対通貨であるウォンの下げ幅は6.6%だ。一方、ドルに対する日本円の価値は11.6%低下している。ユーロも下げ幅は7.6%に達する。
政府の関係者は「最近のドルに対するウォンの低下は、韓国のファンダメンタルズの問題というよりは、米国の利上げや中国のコロナ封鎖などの国外の変数による世界的なドル高現象の延長線上にあるとする見方が強い」とし「(最近のウォンの流れについて)韓国経済に何か問題があるという見方でアプローチする見解は感知されていない」と述べた。急激なウォン安ドル高は経済危機を示す代表的な指標と考えられているが、相対的にウォンの下げ幅が小さいため、韓国のファンダメンタルズに異常はないというわけだ。
しかし、期間を広げて見れば、すでに昨年ドルに対するウォンは平均100ウォンほど下がっていたため、ウォンの下げ幅はかなりの水準に達しているとの反論もある。為替当局の高官は、「一国の適正な、あるいはバランスの取れた通貨価格の水準というものは、分析して導出することが難しい。すなわち、1ドル1300ウォン台をウォンの正常な新しい均衡点だと断定的に言うことは誰にもできない」とし、「ただ、すでに昨年、ウォンはその前に比べて100ウォンほど下落した状態が長く続いてきただけに、レートが1ドル1300ウォン台前半を上限とする一定の範囲内で今後動く可能性を慎重に占っている」と述べた。
ウォン・ドルの安定的な基準線を見直すべきだとする側は、外国株を主に購入する個人投資家の動向を要因としてあげている。国内の個人投資家による海外株式投資の雰囲気も、為替相場の安定的な水準を変動させる要因のひとつとして登場しているというのだ。個人のドル需要はコロナ禍のはじまった2020年を基点として、年間20億ドルから、1カ月のみで20億ドル前後へと10倍ほどに急増している。しかし、外国株を主に購入する個人投資家勢力がウォン・ドルレートの基準線そのものを変える力として作用するのは難しいという分析も示されている。
米国発の金利引き上げなど外国のマクロ経済の衝撃要因のほかに、最近の国内の輸出企業各社のドル売りも、ウォン・ドルレートの安定的な基準線の変動を引き起こしうる要因のひとつとしてあげられる。輸出業者は輸出で稼ぎ、保有していたドルを毎月末に外国為替市場で売る傾向があるが、最近の急激なウォン安ドル高の流れの中、企業が自主的に設定する中期水準の安定的なウォン・ドルレートを以前より高く設定する傾向がみられるというのだ。今のようにウォンが下がる局面では「保有」戦略が選択されるため、月末の外国為替市場では企業の売るドルの量が以前より減り、ウォン安がさらに進む可能性があるわけだ。
為替当局の高官は、「米国がコロナ対応通貨政策で全体的にミスを犯してインフレ危機が起き、過度なスピードで利上げを開始したことで、ウォンが影響を受けている」とし、「(韓国の正常な)ウォン・ドルレートの水準そのものが根本的に変わりつつあるとはまだ考えていない」と語った。