韓国財界第2位の現代自動車グループが、発足20年ぶりに「チョン・ウィソン新会長」への世代交代を成し遂げ、グループの将来に関心が集まっている。チョン・ウィソン会長には、“未来の車”競争の勝敗が決まる重要な時期にグループを導くという容易ならざる課題が投げられた。新会長のリーダーシップと現代自動車グループの将来の展望をめぐり、業界の視線は交錯する。
■「人類の未来の環境にやさしいエネルギーソリューション」
現代自動車グループは14日、チョン・ウィソン首席副会長が現代自動車、起亜自動車、現代モービスで会長に選任されたと明らかにした。チョン・モング会長はこの日、各社で開かれた臨時代表取締役会での決議を経て現代自動車と現代モービスの名誉会長に選任された。現代自動車グループの会長が交替するのは、2000年8月の発足以来初めてだ。
業界では、電気自動車など最近本格化した未来車競争をチョン・ウィソン会長がどのように突破するかを注視している。チョン会長は2018年に首席副会長に就任して以来、現代自動車グループが自動車製造企業からモビリティ・ソリューション企業として生まれ変わらなければならないと繰り返し強調してきた。内燃機関車の製造・販売を中心とする既存の産業パラダイムが急変しているなかで、これからはモビリティの製造とサービス全般を併せていかなければならないということだ。
チョン会長はこの日、映像で送った就任メッセージで「世界最高水準の水素燃料電池技術を、自動車をはじめ多様な分野に活用し、人類の未来の環境にやさしいエネルギー・ソリューションとして位置付けること」とし「ロボティックス、都心航空モビリティー(UAM)、スマートシティのような想像の未来の姿をより早く現実化させる」と話した。チョン会長は昨年10月、役職員との対話でも「未来には自動車が50%になり、30%は個人用フライングカー(PAV:Personal Aerial Vehicle)、20%はロボティックスになると考え、その中でサービスを主とする会社に変貌するだろう」と明らかにしていた。
何よりも現代自動車グループが他の完成車メーカーとの協力なしに電気自動車と水素電気自動車にすべてのドライブをかけているため、成功するかどうかは最大の関心事だ。現代自動車グループは、2025年までに23種以上の電気自動車を発売し、年間100万台を販売し、世界シェア10%を達成するという目標を明らかにしている。水素エネルギーと関連した目標値はさらにアグレッシブだ。現代自動車グループは、2030年までに水素電気自動車を年間50万台、水素燃料電池システムを年間70万台作ることにした。現在の水素電気自動車の年間生産量は数千台の水準だ。
■ 今後2~3年のリーダーシップが本格的に試される
業界では、今後2~3年間のチョン会長のリーダーシップが本格的に試されると見ている。未来の車に対する投資が最も多く必要な時期だが、コロナ禍後に自動車産業がW字形の反騰を見せるだろうと予想され、競争が激化すると見込まれるためだ。現代自動車グループは今年、電気自動車市場でテスラ、ルノー・日産、フォルクスワーゲンに続き販売量4位に上がったため肯定的な視線もある。他国に拠点を置く完成車メーカーに比べ、生産・販売の両面で新型コロナの打撃をあまり受けなかった現代自動車グループが現時点では有利な高地に立ったという評価もある。
一方、現在直面している悪材料も少なくない。専門家たちは、現代自動車グループの行きすぎた事業多角化、ソフトウェア力量の足りなさ、中国市場での不振などを克服すべき限界に挙げている。特に、変化した産業パラダイムで要求される研究開発投資・人材規模が莫大になっただけに、力量を集中させなければならないとの声もある。最近のコナ・エレクトリック火災事件で確認されたように、技術の融合・複合と電装化などによって大きくなる不確実性をどのようにコントロールするかも問題だ。今まで守ってきた「トヨタ・ベンチマーキング」戦略が、未来の車の市場で有効かも未知数だ。
韓国自動車研究院のイ・ハング先任研究員は「足りない革新力であまりに多様な事業に注ぎ込むと、どの事業でも臨界値に至れなくなるリスクがある」として「もう少し緻密な分析をベースに力量を集中させる必要がある」と診断した。