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最低賃金上がっても月給は変わらなかった理由

登録:2018-01-26 13:28 修正:2018-01-27 07:02
労働研究院、2009~2015年を分析 

時給基準低賃金労働者は減ったが
月給で見れば低賃金労働者の割合減らず
労働時間短縮・超短時間で代替など
最低賃金の“変則”対応に対策必要
時給基準低賃金労働者たち=グラフィック_キム・スンミ//ハンギョレ新聞社

 「去年勤務時間を一日9時間から8時間に減らしたが、今年は7時間にさらに減らすと言いました。仕事は減らないのに…」。

 蔚山(ウルサン)大学で清掃労働者として働いているLさん(58)は、最低賃金引上げを控えた年末にはいつも、労働時間の減った新しい労働契約書を受取ると話した。とうとう今年は一日1時間の休憩時間にさらに午前・午後30分ずつ休憩時間を追加し、労働時間を7時間にするという通知を受けた。労組の反対で休憩時間を増やす計画は取り止めになったが、学校と委託業者は代わりに休日労働をなくす方案を推進している。そうなればひと月17万ウォン程の休日手当が消えて、最低賃金引上げ分のひと月22万ウォンのうち5万ウォンくらいだけが残る。「他の人から見たらいくらにもならない何十万ウォンかも知れないが、最低賃金が上がっただけ賃金が上がらなければ、私の賃金で生計を立てている私の家族も食べられなくなりますからね」。Lさんは深いため息をついた。

 最近数年間、最低賃金引上げにより時給基準では低賃金労働者の割合は減っているが、事業主が費用削減のために労働時間を減らす中で、月給基準で見れば低賃金労働者の比重はほとんど変わっていないという分析結果が出た。労働時間短縮による最低賃金の姑息な引上げ事例が続くが、「労働時間短縮」をも重要な政策目標にしている政府としては明確な対策を打ち出せないでいる。

低賃金労働者の実態//ハンギョレ新聞社

 24日韓国労働研究院のソン・ジェミン副研究委員と韓国技術教育大学雇用労働研修院のアン・ジョンファ教授が作成した「低賃金雇用の動態的変化と政策課題」という報告書によれば、2009年時給を基準に27.3%に達していた低賃金(中位賃金の3分の2未満)労働者の割合は2015年21.7%まで減少した。賃金下位10%の働き口の時給が2009年平均5840ウォンから2015年7220ウォンに上がるなど、時間当りの賃金が大幅に上昇した影響が大きかった。この報告書は雇用労働部の雇用形態別勤労実態調査を土台に分析された。

 ソン研究委員は「世界金融危機以後25~54歳の労働者が中間賃金の働き口である製造業生産職と社会福祉サービス業へと大挙移動し、この影響で低賃金労働力の供給が停滞した」として「低賃金労働市場で人力が不足したところへ最低賃金制度が結合して時間当り賃金上昇という結果に繋がったものと分析される」と説明した。

 しかし、月給基準で見れば低賃金労働状況に大きな改善は見られなかった。 月給基準低賃金労働者の割合は2009年26.4%から2015年25.8%と、0.6%ポイントの減少にとどまった。 実際に、2015年基準で半数近い(45.4%)労働者が賃金下位10%に属するほど低賃金労働が蔓延としている清掃労働者の場合、2008~2014年に時給が20.6%上がる間、月給は以前と同じ水準にとどまるという極端な結果が現れた。 清掃労働者の時間当たり平均賃金(統計庁地域別雇用調査基準)は2008年5083ウォンから2014年6132ウォンと20.6%上がった。 しかし彼らの平均月給は2008年に87万ウォン、2014年にも87万ウォンで同じだった。

 これについて報告書は「週36時間未満労働という短時間清掃労働者の割合が2008年27%から2014年40.8%に大幅に増加するなど、労働時間が減った影響」と分析した。 雇用形態別勤労実態調査を基準に見れば、清掃労働者の月平均労働時間は2009年189時間から2015年169時間に減っている。 実際に研究陣が2016年清掃労働事業場576カ所の事業主にアンケート調査を実施した結果、2013年から4年間に「最低賃金引上げが理由で労働時間を減らしたことがある」と回答したケースは113カ所(19.6%)に達した。今年の最低賃金16.4%引上げ後、事業場が超短時間労働者で代替(高麗大・延世大など)、労働時間短縮(イーマートなど)等で応酬したのと非常によく似た様相だ。

 特に労働時間を減らした事業場のうち72.6%(82カ所)は「会社に出ている労働時間はそのままにして休憩時間を増やした」と回答した。 ソン・ジェミン副研究委員は「最低賃金引上げに伴うある程度の労働時間減少そのものはやむを得ない流れだとしても、休憩時間だけを増やした労働時間短縮には大きな意味を付与し難い」として「休憩時間を増やす方式ではない代案的な方法を見つけることができるように人事コンサルティングを支援するなど、政策的努力が必要だ」と指摘した。

10日午前、ソウル地方雇用労働庁の前で開かれた「賃上げ無力化作戦に対する対策要求記者会見」に出席した民主労総・公共運輸労組組合員たちが、最低賃金の引上げを口実にした人員削減計画など雇用主らの「姑息な」対応について政府の対策を求めている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 政府は現在まで労働時間短縮による最低賃金の“姑息な引上げ”に対し、はっきりした解決法を打ち出せないでいる。 企画財政部関係者は「法の規定どおり労使合意の下に所定労働時間が減ったケースまでいちいち規制するのは容易でない状況」として「最低賃金引上げにより賃金は維持されて労働時間が減れば、仕事と暮らしの均衡回復などの効果もあって、悩むところだ」と話す。 時給引上げとそれに伴う労働時間短縮を否定的にのみ見るわけにもいかないという意味だ。

 これに対し公共運輸労組ソウル京畿支部のソン・スンファン組織部長は「特に労働組合がないとか、1年単位の契約を結ぶ委託会社の清掃・警備労働者の場合、所定労働時間を減らした労働契約書を雇用維持と引き換えに無理やり同意させられる事例が現場で出ている」として「労働時間短縮は必要だが、最低賃金で生計を立てている労働者の週40時間労働まで減らして賃金引上げを阻む形態で現れてはならない」と指摘した。

パン・ジュノ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/829252.html韓国語原文入力:2018-01-24 18:57
訳A.K

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