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大企業レベルの一時的な賃金補てん…若者の心中を知らない「中小企業誘引策」

登録:2018-03-16 09:14 修正:2018-03-16 18:01
4年間で最大22万人の雇用創出  
若者失業率8%台以下を目標に  
中期初任給2500万ウォンに「プラス1000万ウォン」  
大企業に就業しなくても賃金は同等に 
 
財政支援の規模拡大に意味はあるが、  
過去の失敗した政策の踏襲との批判  
公共機関の若者割当制の拡大も外れ  
「中小企業を避ける理由は長期的な所得の安定性」
若者雇用対策の受恵者別メリット 資料:関係部処合同//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)政府発足以後初めて出た「若年層雇用対策」の核心は、財政を使って若者と中小企業に対する直接支援規模を増やすことに焦点が合わせられた。専門家らは財政余力をもとに若者の直接支援を増やした部分は意味があると評価しながらも、短期的な“企業補助金”方式など既存の対策の限界を依然として克服できていないと指摘した。

 政府は15日に発表した「若年層雇用対策」を通じて、2021年までに18万~22万人の若者の雇用を追加で作ることを目標にしている。2021年までエコブーム世代39万人が労働市場に進入し、4年間に追加で発生する若者失業者14万人に働き口を提供して、昨年の失業率(9.8%)の水準を維持することが1次目標だ。ここに4万~8万人の働き口を追加で設け、若者失業率を8%台以下に下げるということだ。ただ、各対策を通じて確保される具体的な雇用規模について、コ・ヒョングォン企画財政部1次官は「補正予算の規模が確定された後、詳細な効果を予測して説明できるだろう」とだけ明らかにした。

 この日まとめられた対策の骨子は、20万口も空きがある中小企業と、大手企業・公共機関などより良い就職先を見つけようと就職を先送りする若者を財政を通じてつなげるするということに圧縮される。中小企業の大卒の平均初任給である年俸2500万ウォン(約251万円)をもらう若者に、財政で年間1035万ウォン以上(約104万円)を支援すると、大手企業の大卒者初任給(3800万ウォン=約382万円)に近い水準に近接するため、中小企業への就職に引き込むことができるだろうという思惑だ。このように若者に対するより積極的な所得支援は、従来の若者雇用対策から一歩前進した側面がある。中央政府レベルの若者手当ての若者求職活動支援金も、2019年の施行を目標に具体化して対策に含めた。特に若者手当は、朴槿恵(パク・クネ)政府時代の2016年には政府が“ポピュリズム”と責め立てた政策であるだけに、今回の対策で注目に値するものとして挙げられる。

若者雇用対策の受恵者別メリット (資料:関係部処合同)//ハンギョレ新聞社

 専門家たちは、豊かな財政環境という手段を活用して若者に対する支援を増やしたことに対し、肯定的評価を下しながらも、過去に失敗した支援方式の枠組みから大きくは抜け出せていない部分を憂慮した。ソン・テユン延世大学教授(経済学)は「政府が前面に出した政策は、若者の賃金を政府が代わりに支援して企業の負担を減らしたり、劣悪な企業に採用奨励金を通じてお金を上乗せするもので、過去の企業補助金方式と大きく変わらない」と話した。企業補助金方式の支援の限界は過去10年間、21回も続いた若者の雇用対策で絶えず指摘されてきた部分だ。一例として、2009年から本格的に開始された若者インターン制は、企業を補助し若者に期限付きの雇用を提供したが、2016年の監査院の若者雇用対策成果分析によると、「支援金がなくても同一の人材を採用しただろう」という企業が48.8%に達した。補助金の効果が新規雇用創出よりは限界企業を含めた零細企業の経営維持のために使われたという指摘も出ている。

 最初の職場選択において生涯所得と社会的地位全体を考慮し、大企業と公共機関を好む若者らに一時的な賃金補てん対策がどれほど影響を与えられるかも議論を呼んでいる。今回の財政支援制度は2021年まで一時的に維持される。ハン・ヨセプ韓国開発研究院(KDI)副研究委員は「若者たちが中小企業に行きたがらない理由は、長期的な所得や安定性を企業選びの主な要素としているため」だとし、「当面の賃金補てん対策だけでは、生涯所得を計算し公共機関や大手企業を選ぶ若者を中小企業に引き込むことは容易ではないだろう」と話した。若者の賃金補てん支援策のうち最も規模が大きい「青年の明日を満たす控除」の場合、既存の2年を在職すれば政府が900万ウォン(約90万円)を支援していた方式から、3年勤続を前提に政府支援額(1800万ウォン=約181万円)を増やす選択肢を追加するなど、最初の職場に対する勤続をより強調した。中小企業の最初の職場を踏み台にしてよりよい職に転職して所得向上を図ろうとする若者なら、選びづらい対策だということだ。

 中小企業に若者を引き入れるための対策に比べ、若者が好む仕事を増やす対策は、不確実性が大きい公共機関名誉退職の活性化などを通じて今年の採用を5千人増やすことと、若者雇用を増やした大企業の税金を減免する制度を延長する程度にとどまった。大統領の公約事項に含まれるかをめぐり関心を集めていた公共機関若者義務雇用割り当ての比率を3%から5%に拡大する政策は対策に含まれなかった。

 今回の対策が「エコブーム世代の労働市場への進出時期」に対応した一時的な対策を中心に組まれたのは、政府の安易な認識をあらわしているという指摘も続く。政府は「2021年以降は人口問題が解決され雇用環境がよくなるだろう」と見ている。しかし、リュ・ジャンス釜慶大学教授(経済学部)は「中小企業と大手企業の将来性と所得の格差が大きい状況では、人口問題が解決されても大企業に行くための待機人材が存在し続けるだろう」と話した。政府も構造的対応策を今回の対策に含ませたが、未来の食べ物の創出、社会補償体系の革新、労働市場の構造改善など、政府の既存政策の方向を宣言するレベルにとどまっただけで、具体的な内容は含まれていなかった。

 この日、若者ユニオンは「特段というにはややきまり悪い若年層雇用対策」というタイトルの論評を出し、「破格的な部分はなくもないが、企業インセンティブ方式や就職率という量的成果中心の従来の政策の枠組みから脱することができなかった」とし、「セーフティネットの強化や仕事の質的改善を推進していかなければならない」と主張した。「若者が開く未来」も「若者失業問題は赤チンを塗ればよくなるという状況ではない」とし、政府対策が不十分だと批判した。

パン・ジュンホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/836296.html韓国語原文入力:2018-03-16 07:15
訳M.C

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