本文に移動
全体  > 経済

「IMFから20年」不安に身をすくめた社会…公務員・不動産に傾倒

登録:2017-12-02 07:29 修正:2017-12-02 08:10
通貨危機から20年のトラウマ 
躍動性を失った韓国 
相次ぐ倒産・失業の深い傷の中  
安定性を求めて熾烈な競争に埋没
1997年12月3日、イム・チャンヨル経済副首相(中央)が国際通貨基金(IMF)の救済金融交渉妥結を発表している。左からイ・ギョンシク韓国銀行総裁、イム副首相、ミシェル・カムドシュ国際通貨基金総裁=資料写真//ハンギョレ新聞社

 シム・サンミンさん(仮名・31)は7月、保険会社の正社員と公共機関のインターン社員採用選考に志願し、二つとも合格した。公共機関のインターンは3カ月後に正社員に転換される条件だったが、脱落の可能性もあった。実際にインターンの同期7人のうち1人が脱落した。正社員に転換されても、保険会社の給料に比べれば3分の2にしかならないうえ、縁もゆかりもない地方に行かなければならなかった。それでもシムさんは公共機関を選んだ。「大きな事故を起こさなければ定年(60歳)が保障されるじゃないですか。大企業に勤めると50歳を超えるのは難しいという話を多く聞きます。保険業界は寿命がより短いとも言いますしね」

 1997年のIMF(国際通貨基金)通貨危機が韓国社会全般に与えた最も大きな傷跡は、躍動性の低下だ。もう危険を抱えて新しい市場、新しい分野に参入しない。通貨危機直後に経験した企業の倒産や失業の苦痛が深く刻まれたためだ。1997年12月から1998年4月まで、月平均3千社以上の企業が廃業した。従来より2倍以上増えた数値だった。失業率も1998年7月には歴代最高の7.7%まで高騰したが、解雇された労働者のうち4分の1しか失業手当を受け取れなかった。

 この20年間、労働市場の二重構造はより固着化された。大企業と中小企業、正規職と非正規職の間の賃金格差がますます大きくなり、その結果として雇用が不安だったり、低賃金に苦しむ労働者の比重が少なくない。一方、社会のセーフティネットは他の経済協力開発機構(OECD)加盟国に比べて脆弱だ。「良い働き口」の割合は増えていないのに、セーフティネットが構築される速度は遅かったため、冷酷な現実のなかで落伍しないための熾烈な争いがいたるところで現れている。

 9級公務員試験の準備をしている25歳のナム・スンフンさん(仮名)の本来の夢は、臨床心理士になることだった。うつ病を患っていた友人の自殺を隣で見守ったことがきっかけとなった。「(夢を成し遂げるには)修士学位を取得しなければならず、その後も3年間、見習い期間を経なければならないんです。そうやって10年間勉強しても、初任給は2千万ウォン(約200万円)台前半です」。長い期間勉強のみをするには家庭にゆとりがなかったナムさんは、“時世”にしたがい安定した雇用である公務員に“夢”を乗り換えた。25歳のハム・スヒョンさん(仮名)も、軍隊に行って戻った後、7級公務員試験の準備に取り組んだケースだ。「給料は安定的に出るのに長時間労働、熾烈な競争がありません。また、公務員は大韓民国が亡びない限りクビにならないでしょう。年金制度がよくできていて老後の心配もないですし」

 いつ職場から追い出されるかわからないという不確実性に対する懸念は「公試生」ブームを生んだ。公試生とは採用考試、5級以上公務員、一般職公務員を準備する若者をいう。韓国労働研究院の「世帯所得階層別未就職青年の特性」によると、昨年の未就職(失業+非経済活動人口)の卒業生のうち、公試生は28万1千人で未就業者の21.2%を占めた。特に大卒以上の未就業者10人のうち7人(68.7%)が公試生だった。

 全般的に未来の所得に対する不確実性が増し、消費は低迷して貯蓄率は上がる傾向が続いてきたと、専門家たちは指摘する。このような不安感は不動産投資の熱気からもうかがわれる。大手企業の課長のチェ・ミンスさん(仮名・43)は5月、借金をして4階建ての多世帯住宅を建てた。チェ氏と妻、子ども3人は40坪規模の最上階に住み、1~3階は賃貸して家賃を受け取る。1階は店舗、2~3階は2ルーム住宅にした。「まだ子どもたちが幼いので戸建てに住んでのびのび遊ばせたかったが、老後が不安なんです。役員にならなければ会社に通い続けられるかもわからないし、55歳まで耐えたとしても、その後はどうなるか分かりません」

 グローバル政治経済研究所のパク・ヒョンジュン研究員は「不動産投資で稼ぐ所得は増えているのに比べ、非正規職や零細自営業者として生活しながら稼ぐお金はほぼ横ばいと見なければならない」と説明した。ハナ金融経営研究所のチャン・ボヒョン首席研究委員は「企業融資に集中した金融圏のローンが通貨危機以降に家計ローンという代案を見つけ、政府や家計は不動産価格の上昇で所得の低迷を埋めようとして家計負債の急増という重病ができた」と診断した。

チョン・ウンジュ、ホ・スン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/821582.html韓国語原文入力:2017-12-01 10:26
訳M.C

関連記事