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[記者手帳]借金減免=モラルハザード?過去を見てみよう

登録:2017-12-04 22:04 修正:2017-12-05 06:26
韓国銀行=資料画像//ハンギョレ新聞社

 先月29日、政府が元金1千万ウォン以下の借り入れを10年間償還できない159万人に対して、元利金の全額を免除する政策を発表すると、「モラルハザード」が憂慮されるというマスコミ報道が続いた。借金をきちんと返している人に剥奪感を与えかねないという話もついていた。

 こうした主張を聞くと、二つの記憶が蘇ってくる。2013年、国際通貨基金(IMF)の調査団が韓国を訪問した時のことだ。当時、調査団は韓国の家計負債状況に対して韓国の金融当局関係者や専門家たちと集中インタビューしながら、家計融資延滞率データに疑問を表わしたという。当時この事実を耳打ちした当局者は「家計負債は世界的水準から見て多いほうなのに、延滞率はせいぜい1%台に留まっているので、彼らの目にはきわめて不思議に思われたということだ。韓国の人々は、食事を我慢しても借金は返すほどに、他の国の人々より借金を熱心に返す」と話した。

 2番目の記憶は、朴槿恵(パク・クネ)印の借金減免政策である国民幸福基金導入の1年後、韓国資産管理公社(KEMCO)が主管した討論会にパネルとして参加した時のことだ。パネルには国民幸福基金の実務者も参加した。彼は、国民幸福基金が買い入れた長期延滞債権の債務者に会い、減免後に残った元金の償還計画を作る仕事をしていた。彼に「国民幸福基金を導入する時、多くのマスコミや政治家がモラルハザードの懸念を提起したが、実務者として債務者に会ってみて果たしてどうだったか」と尋ねた。彼の返事はこうだった。「現場に一度も来ない人々がそういう主張をするんです。私が見ても到底返済できない借金なのに、それでも残った元金(国民幸福基金は利子は全額免除し、元金は最大70%まで減らす制度であった)は返すといって、とても感謝していましたよ。少なくとも私が会った債務者の中に、お金を隠しておいて返さないという人はいませんでした」

 このような脈絡で、チェ・ジョング金融委員長が今回の対策を発表した際の発言は、破格とは言えない。「自力で債務を償還できない人々を、モラルハザードが憂慮されるからと放置するのは、こうした苦痛を経験したことのない比較的余裕のある人々のもう一つのモラルハザードではないだろうか」

キム・ギョンナク記者//ハンギョレ新聞社

 それでもモラルハザードを云々しようとするならば、2007年以前の金融圏でどんなことが起きていたかを思い出してみれば良い。銀行の人々は皆知っているだろう。当時、各銀行は「リーディングバンク」の席を占めようと、激しい資産競争を行った。今はある金融協会の協会長で剣闘士という異名を持っている当時のある都市銀行長が、2006年1月に営業本部長に短刀を配ったエピソードは有名だ。「戦場に出て行く覚悟で融資を決めてこい」というメッセージだった。それこそ「無差別融資」の全盛時代であった。

キム・ギョンナク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/821812.html韓国語原文入力:2017-12-04 13:35
訳J.S

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