国政企画諮問委員会が1カ月以上にわたる議論をまとめた「国政運営5カ年計画」を発表してから、増税をめぐる議論が白熱している。国政委が文在寅(ムン・ジェイン)大統領の公約履行に向けて必要な財源178兆ウォン(約17兆7千億円)を追加税収を拡充することなく、超過税収と歳出調整で大部分を調達すると明らかにしたことによるものだ。これに対し、一部の長官と与党代表らが増税を要求しており、文大統領は「超高所得者と超大手企業に限定し、増税を行う」として、鎮火に乗り出した。一部では文大統領が高い支持率を基盤に正面突破を図るものと分析している。
冷静に検討してすべき問題だ。増税論を展開した人たちは国政委が提示した超過税収60兆ウォン(約5兆9700億円)に疑問を抱いている。過度な推計ではないかという疑問だ。結論から言えば、このような疑念はお門違いだ。国政委の言う超過税収60兆ウォンは、朴槿恵(パク・クネ)政権が昨年末に予想した今後6年間の税収よりもさらに入る税収を指す。今年を含め、2年連続毎年10兆ウォン(約9950億円)を超える超過税収が発生するほど、朴槿恵政権は税収推計を保守的に行ってきた。国政委は昨年と今年の実際の税収を基盤に今後5年間の税収推計を行い、その結果、朴槿恵政権時代の見通しよりも60兆ウォンの税金がさらに入ってくるだろうと判断したのだ。最近、2年間の超過税収が異例的現象というより、朴政権の保守的な歳入見込みがもたらした結果という点で、国政委による今回の税収見込みは現在の景気が維持されれば、達成される可能性が高い。
問題は毎年10%程度ずつ歳出を調整するという国政委の構想だ。歳出調整(60兆2千億ウォン)はこれまで配分していた予算を配分しない事を意味するだけに、利害関係者の激しい反発が予想されるため、目標の達成は容易ではない。朴槿恵政権も同じ規模の歳出削減を打ち出したが、達成できなかった。したがって、新政府の財源調達計画における穴は「超過税収」よりは「歳出調整」にある。穴が大きくなるほど、国家債務が増えるか、公約の履行に支障を来すことになる。
歳出調整で発生する可能性が高い財源の穴は結局、追加税収の拡充で埋めるのが定石だ。朴政権は「増税無き福祉」というスローガンを掲げながらも、税収の拡充に積極的だった。特に、執権初年度(2013年)に断行した所得税制の再編は、年収7千万ウォン(約697万円)以上の階層の税負担を大幅に高めた。大企業に対する非課税・減免縮小が続いたことも彼らに対する実効税率の上昇につながった。その結果、韓国の租税負担率は、朴槿恵政権が就任した年(2013年)17%台から昨年末現在19%半ばまで上昇した。朴政権は、このような形で国の財政をまかないながらも、財政健全性への強迫観念に陥り、歳出の拡大には消極的だった。結果的に韓国は主要先進国の中、ノルウェーに続いて2番目に財政余力が豊富な国になった。文在寅政権が「増税の負担なく」児童手当の導入、基礎年金の拡大、保育過程の全額国庫負担のような祉拡充に乗り出せるのも、そのためだ。
文在寅政権は、次期政府に申し訳なく思わなければならないかもしれない。公約の財源(178兆ウォン)は全て文大統領在任期間だけを対象に推計された。公務員の拡充、児童手当の導入など主要公約は、現政府の任期だけに該当するものでなく、その後もずっと金がかかる事業であるが、これに対する考慮は抜けている。結局、次の政府は、現政府が増やした公共雇用・セーフティネットを減らしたり、攻撃的な税収拡充に乗り出さなければならない。恩は文在寅政権が売り、政治的波及が大きな増税の負担は次期政権が抱えなければならない。
文大統領が超高所得者と超大企業への増税に乗り出すと言っているのではないか反問するかもしれない。しかし、これは「焼け石に水」に過ぎない。ここで入る税収は1年の国税収入(約250兆ウォン)の2%にならない。他の国に比べて大きく低い中間層の税負担を高めない限り、安定的な福祉拡大は難しい。新政府も知っているが、触れたくない不都合な真実だ。
原文入力:2017-07-23 20:46