政府と共に民主党が増税案を協議することにした。国政企画諮問委員会が政権5年間の「100大国政課題」の遂行に178兆ウォン(17兆7120億円)がかかるとしながらも、増税せず財源を調達するという計画を発表したことに対し、現実性がないという批判が集中したことによるものだ。まずは大企業と高所得者を対象にした課税強化案を中心に議論するという。来年度税制改編案に反映できるよう準備し、今後税制改革の大きな方向も一緒に提示すべきだ。
文在寅(ムン・ジェイン)政権が新たに進める福祉政策は多くの資金投入を必要とする。基礎年金や障害者年金の引き上げには23兆ウォン(約2兆2890億円)が、5歳以下の子ども・児童手当ての支給には10兆3千億ウォン(約1兆2490億円)が必要だ。また、若者追加雇用に対する奨励金と「青年の明日を満たす控除」には6兆5千億ウォン(約6470億円)、来年の最低賃金の引き上げによる零細自営業者・中小企業支援にも3兆ウォン(約2990億円)がかかる。財政赤字が重なり、国家負債が大幅に増えるのではないかという懸念の声が高まるのも無理はない。責任ある政権勢力なら、「増税なき福祉」にこだわった挙句、福祉公約を破棄した朴槿恵(パク・クネ)政権の二の舞になってはならない。
増税が政権勢力に政治的に大きな負担になることは言うまでもない。国家の役割拡大とこれに向けた財源の拡充が必要であることには同意しながらも、自分に返ってくる税負担には反対したくなるのが人間の心理だ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代には、総合不動産税の新設や財産税の引き上げに対する反発が大きく、朴槿恵政権時代には、所得税控除方式の変更により、中流以上の税負担が大きくなったことで反発の声が高まった。このような点を考慮して、租税の正義に対する社会的合意を基に、漸進的に増税を進めていかなければならない。
企画財政部はすでに来年度税制改編案をほとんど作成し終わった状態だ。税制再編を原点から再検討して大幅に変更するのは難しい。共に民主党の秋美愛(チュ・ミエ)代表は、法人税の場合、課税標準2千億ウォン(約199億円)超過区間の税率を22%から25%に引き上げ、所得税は課税基準5億ウォン(約4980万円)超過区間の税率を40%から42%に引上げることを提案した。増税対象を大手企業と超高所得者に制限するいわゆる「金持ち増税」だ。増税の形を帯びているものの、内容的にはこれまで減税の恩恵を集中的に享受してきた部分を正常化しようということだ。このような「公平な課税」の実現は、早ければ早いほどいい。また、これだけでは財源を用意することは難しいものとみられる。
非課税・減免制度を積極的に整備し、所得隠しに対する課税を強化するという約束を支障なく履行しなければならない。所得税は非課税対象者があまりにも多い。これを修正する案も検討する必要がある。不動産賃貸所得や株式投資差益など資産所得に対する課税も強化されねばならない。ほとんどが免除対象となる相続関連税制も改正すべきだ。中期財政運用計画に現実性のある租税負担率の引き上げ計画を盛り込むと共に、税制改革推進計画も用意せねばならない。福祉の拡大を財源で後押しする「公平な課税」の精巧なロードマップを提示することを望む。