今年高病原性鳥インフルエンザ(H5N6型AI)被害規模が、発生から1カ月で2014年の6カ月間累積被害規模をはるかに上回った。2014年は今年以前に史上最悪の被害を記録した年だ。
さらに、京畿道の安城(アンソン)川の野生鳥類のふんから検出された別種の鳥インフルエンザ(H5N8型)も高病原性であることが確認され、京畿道果川(クァチョン)のソウル大公園動物園では、史上初めてAIに感染した鳥類が出て非常事態が発動された。AIはますます強まっているが、政府の防疫体系は総体的な不十分さを露呈している。
19日、農林畜産食品部の資料によると、現在までに鶏・アヒル1668万6千羽が殺処分され、242万2千羽が殺処分進行中だ。AIが発生してから1カ月の殺処分規模が1910万8千羽であり、2千万羽に迫っている。今年9月基準で全国で飼育している鶏・アヒルが1億6526万羽(鶏1億5649万羽、アヒル877万羽)という点を考慮すると、12%ほどが消えたことになる。殺処分規模だけで計算すると、歴代最悪だった2014年(1400万羽あまり)をとっくに超えている。
韓国国内では初めて二種類の高病原性AIが同時流行する脅威に直面した。この13日、京畿道の安城川で採取された野鳥のふんのサンプルを精密検査した結果、「H5N8型」高病原性AIと最終的に確診された。H5N8型の場合、2014年に流行したウイルスであり潜伏期間が長いという特徴がある。
動物園の防疫体制も破られた。ソウル大公園は16~17日、斃死した動物園のコウノトリ2羽の鳥インフルエンザ中間検査の結果、感染が確認されたと明らかにした。韓国の動物園の鳥類がAIに感染したのは前例がない。ソウル大公園動物園のイ・ギソプ園長は「動物園の隣の清渓(チョンゲ)貯水池にもオシドリが70~80羽がいる。それらと接触があったのではないかと推定する」と話した。
今年流行が始まったAI(H5N6)は感染速度が速く、鳥類に致命的だ。ウイルスは変移し続けながら強くなるが、政府の防疫体系は改善されず、総体的に不十分だったことが今回の被害規模を増大させた。隣の日本政府の対応レベルや被害の様相を見ると、韓国政府のずさんさが明確に表れている。
政府は今年の被害が歴代最大になることが確認された後の16日、危機警報を最高水準に上方修正した。AI発生から1カ月がたってからだ。日本は韓国と発生時期は同じくらいだったが、対処が大きく異なっていた。先月21日に野鳥のふんからAIが検出されるとすぐに危機警報を最高段階へ引き上げ、防疫作業に入った。同月28日に疑いの申告が入った日に確診判定まで出し、翌日には自衛隊が入って殺処分作業をした。安倍首相は直ちに連絡センターを設置して積極的に対応することを指示した。農水省傘下のAI対策本部が設置され、自民党も別途に対策本部を設置した。AIは伝染性が強く、初期対応が最も重要だ。日本は3つの地域の5カ所の農場で鶏・アヒル78万羽あまりが殺処分された。もちろん日本は鶏飼育の密集度が韓国より低く、アヒルをほとんど飼っていないという点も被害が少ない理由に挙げられる。
これに加え、韓国政府の対策は行ったり来たりした。AIに対する危機警報を最高段階の「深刻」に格上げした15日に、AIの拡散を防ぐため流通を禁止した生きている鶏の流通を許可した。地鶏を育てる農家らが鶏肉を出荷することができず、不満を表したことによるものだ。これに一部の地方自治団体が、AIが広がる可能性があると異議を提起し、農林部は17日から再び流通を禁止した。
人材不足で処分が遅延されることも問題だった。24時間以内に殺処分しなければならないのに、一週間以上かかるところもある。
自治体の対処も不十分だった。政府が先月22日から今月2日までAI発生・隣接の市、郡の防疫状況を監察した結果、計11の市郡で防疫に問題があったことが確認された。例えば、AIが初めて発生した全羅南道海南郡(ヘナムグン)は、書類には郡内の防疫対策本部の設置を記載したが、実際には運営されなかったことが分かった。拠点消毒施設も発生地から20キロも離れた畜産施設に指定するというあきれた防疫行政をした。全国25の基礎自治団体は、家畜防疫官がそもそもいないなど、防疫にあたる人力の不足も深刻な実情だ。
ソウル大学のキム・ジェホン教授(獣医学)は「防疫体系が総体的に不十分だった。政府はとっくに危機警報を深刻に引き上げ、特段の対応を講じなければならなかったが、あまりにも安易だった」とし、「自治体防疫もまともに稼動するところが多くなく、農家の防疫認識も弱かったことが今回の事態を増幅させた」と指摘した。AIは2003年以降年例行事のように訪れ、被害が繰り返されたにもかかわらず、政府の対応は10年以上にわたって安易だったということだ。