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[記者手帳]検察のターゲットになったサムスン指令塔とイ・ジェヨンの課題

登録:2016-11-09 23:26 修正:2016-11-10 07:05
今月8日午前、ソウル瑞草区のサムスン電子瑞草社屋で検察の押収捜索が行われ、記者たちが集まっている。正門には「CLOSED 点検中」という立て札が立てられている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

「これまで企業経営には全力を注いできましたが、社会とともに発展し国民の期待と意に応えることをおろそかにしてきました」

 イ・ゴンヒ会長は2006年2月、国民に向けて謝罪文を発表し、過去の誤った慣行を反省した。サムスンは安全企画部エックスファイル事件で明らかになった不法政治資金と贈与事件に対する批判が激しいため、8千億ウォン(約717億6千万円)の社会基金献納などを発表した。だが、イ会長は2年後の2008年4月、再び国民の前で涙を流さなければならなかった。「私は今日、サムスン会長職を退くことにしました」。イ会長はサムスン特検の結果、自身を含む最高経営陣の多数が借名口座運用など不法疑惑で起訴されると、対国民謝罪とともに退陣を宣言した。

 今月9日、検察が大統領の陰の実力者、チェ・スンシル氏とサムスンの間の癒着疑惑と関連して、サムスン社屋を押収捜索した。グループ内外では8年前の悪夢を思い出した人が多い。経済界ではサムスンが国民に向けて3回目の謝罪をするのではないかという憂慮まで出ている。サムスンが2度も国民に頭を下げたにもかかわらず、再び危機に瀕した理由は何だろうか?

 経済界は、押収捜索がグループの指令塔である未来戦略室をターゲットに行われたことに注目する。サムスンが2006年に発表した6項目中、実質的構造変化に関連した内容は構造調整本部(現、未来戦略室)の機能縮小だ。2008年に発表した8項目の中でもイ・ゴンヒ会長の退陣など人的責任を除けば最も目につくのはやはり戦略企画室(現、未来戦略室)の解体だ。構造調整本部と戦略企画室はその名前が違うだけで、ともに会長補佐、系列会社の指揮・監督をするグループの指令塔であり、グループのトップおよび系列会社の専門経営陣と共にサムスンの成功神話を作った「三角編隊」の一軸だ。だが、一方では政治資金提供など各種の不法行為の主役でもある。

 未来戦略室が2010年末に看板だけ掛け変えて復活した時も論議があった。グループの指令塔は必要だという現実論と、誤った慣行が継続されるのではないかという憂慮が共存した。2014年5月、イ会長が突然倒れてイ・ジェヨン副会長が実質的に総帥の役割を受け持って以後、サムスンが外部批判に直面した事件はほとんど未来戦略室が主導した。昨年のサムスン物産-エバーランド不公正合併論議の時、イ副会長のグループ支配力強化のために無理な合併を推進し、ヘッジファンドのエリオットの反対で危機を迎えて、国民年金の支持を得る代価としてチェ氏母娘に特典を提供したのではという疑いも提起された。

クァク・ジョンス先任記者//ハンギョレ新聞社

 専門家らは、国民に向けて2度も謝罪したにもかかわらず、相変らず不法行為をめぐる論議に苦しむのは国民との約束をまともに履行しなかったためであり、その核心には未来戦略室があると指摘する。経済改革連帯のキム・サンジョ所長は「未来戦略室は強大な権限を行使しながらも(誤った)結果に責任を負わないため、無謀な問題を起こし、さらに不法もはばからない。また、企業内部者だけで構成されていて、外部環境や市場の変化、国民感情に鈍感だ」と診断した。

 イ副会長は10月末、サムスン電子の登記理事に選任され、責任経営の意志を明らかにした。サムスン内外では、彼がギャラクシーノート7の生産打ち切りによる危機を克服する“経営リーダーシップ”を発揮することを期待する。だが、チェ・スンシルゲートはサムスンの次期トップには国民の期待に応える“社会責任リーダーシップ”が依然として未完成の課題として残っていることを示している

クァク・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/769529.html 韓国語原文入力:2016-11-09 17:17
訳J.S(1599字)

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